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レビュー御礼&御礼~「屋台」

この季節、なぜかラーメンが恋しゅうなってしまいます。
それも「夜なきソバ」なる、屋台のラーメンでございます。

町内に夜の帳が下りるころ、どこからともなくチャルメラの鳴る音が響いて参ります。

わたくしは外出用のスポーツジャージに着替えまして、上からダウンコートを羽織って屋敷を飛び出ます。
本来、外出時には清楚なスタイルで出かけるわたくしではございますが、屋台に合わせたコーディネートをいたしますの。
TPO、でございます。

公園横の道路に、「ラーメン」とだけ書かれた暖簾をさげた屋台。
ご主人はもうかなりご高齢なのですが、それでも週に二、三度はこの場所で営業をされております。屋台には折りたたみのパイプ椅子が四つのみ。

今夜はまだ他のお客さまはいらっしゃらないみたいです。
屋台から湯気と、美味そうな香りが漂ってきております。

「こんばんは」

わたくしは暖簾を上げてご主人にご挨拶いたします。

「いらっしゃい」

短く刈り込んだ白髪の頭には手ぬぐいを巻かれ、モスグリーンのジャージにペラペラのベストタイプの黒いダウンを着たご主人が、ニコリと出迎えてくれます。
お顔は深いしわが刻まれ、前歯が抜けたお口はどこかひょうきんです。

「やはり陽が落ちますと、冷えますわねえ。
えっと、わたくしはラーメンの大をお願いいたします」

「あいよっ。まあ掛けてくんねえ」

ご主人は屋台の反対側で準備に入られます。

「おねえちゃん、よかったら熱燗でもつけよっか」

「そうねえ。じゃあ、いただいちゃおっかしら」

ご主人はアルミ製のチロリに一升瓶からお酒を注ぎ、麺を湯がく鍋に浸します。熱燗はチロリでいただくと、とても温まります。

わたくしは熱燗をいただきながら、ラーメン大をすすりこみます。

「美味い!」

と思わず大きなお声をあげてしまうわたくし。
ご主人は椅子に腰を下ろしながら、キセルでお煙草を吸われております。

「へへっ、ありがとよ。ただまあ、わしもそろそろ引退かのう」

「え? でもまだまだお元気でいらっしゃるのに」

「いやいや、寄る年波には、さすがのわしも勝てんよ」

「ご主人さまは、この屋台をおやりになる前は、やはりどこかでラーメン修業なさったの?」

「いんやあ」

「じゃあ、脱サラかしら」

「秘密諜報員さあ」

は? わたくしの聞き違え?

「ひ、秘密諜報員……」

「おうさ。こう見えても若い頃にゃあ、世界を股に掛けた名うてのスパイだったわい」

「え~っと……」

「おねえちゃん、あんたはジェームズ・ボンドを知っておるかな」

「は、はい。007ですわね」

「あのボンドのモデルは、実はこのわしじゃったんじゃあ」

げ! まさかご主人さま、すでにボケが!
でもラーメンだけは、美味しくお作りになられるのね。

「たしか、イアン・フレミングが1953年に、発表した長編小説『カジノ・ロワイヤル』がジェームズ・ボンドの第一作ですわよ」

「そうじゃあ。わしゃ、イアンと懇意にしておったからのう。秘密諜報員のわしをモデルにぜひ作品を書かせてくれと、頼まれたんじゃな」

ちょっと待って。そうなると、このご主人さまはもうすでに九十歳を
こえていらっしゃる計算。

「ほれ、これがイアンから貰った第一作目の初版本じゃ」

ご主人はラーメンの具を入れた引き出しの一番上から、古びた本を取り出されました。

確かに表紙には英語でジョナサン・ケープ社発行で「Casino Royale」とタイトルが印刷されております。

「その表紙をめくると、ほれ」

わたくしが持ったその本を、ご主人は指をねぶって表紙を開かれます。

ま! そこには「親愛なるゲンさんへ。イアン・フレミング」と確かにサインが……

ちょっと待って。これって日本語よ。まさか、イアン・フレミングって日本語が達者だったの?

「ボンド・ガールならぬ、ゲンさん・ガールもおったのよのう。ピッチピチのギャルだったんじゃが、みな老人ホームで優雅に暮らすババアになってしもうたもんなあ」

宙を寂しそうに仰ぐご主人。いえ、元秘密諜報員のゲンさん。

わたくしは半信半疑ながら、熱燗をクイッと飲み干しました。

もう一本熱燗をオーダーし、その間にカクヨムさまをチェックいたします。はあっ、いずれはわたくしもババアの仲間入りねえ……


あ! 「魔陣幻戯~アイドル志望は時給戦士」にレビューをいただいております!

春川晴人 さま、
いつもお世話になっております。師走のお忙しい時にご覧くださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
本格的バトルアクションなどとお褒めいただき、嬉しい♡
つばきの中では、最長のお話でございます。お付き合いいただきまして本当に感謝いたしております。それぞれの愛、でございました。
心より御礼申し上げます♬


ま! 「千年魍魎~アイドル志望は時給戦士・外伝」にレビューを頂戴しております!

陽野ひまわり さま、
ひまわりちゃ~ん、年末なのにお付き合いくだすって誠にありがとうございます! しかも前作をうまく絡めてくださり、嬉しい♡
あまりに素敵なレビューに魅かれてご覧くださったかたから、「ダマされた!」などとお叱りを受けそう。とても魅力的な内容にまとめてくださる技術は、さすがでございますわ。感激です。
さらなる続編……いつの日にかご覧いただけたらよいですわね。
心より御礼申し上げます♬


あら、「面妖な金属男」にお★さまが!

ハギワラさま、
我が心の師、わざわざご覧くださり誠にありがとうございます!
お目通しくださるだけでも充分嬉しゅうございますのに、お★さままでいただき、つばきは嬉しい♡
心より御礼申し上げます♬


まあ! 「夜空いっぱいのシューティング・スター」にレビューとお★さまをいただいております!

@rein-awardさま、
どうも初めまして! 年末のお忙しい時期にご覧くださり誠にありがとうございます!
いただいたお★さまは、明日への原動力になります。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

音メ心 さま、
どうも初めまして! 師走の中、わざわざご覧くださり、またレビューまで頂戴し、誠にありがとうございます!
わたくしも、トナカイは見たことがございませんのよ。キャラが立っているなどとお褒めくださり、嬉しい♡
基本的にわたくしの場合、お話よりもキャラが先にありき、でございます。詩が先か曲が先か、音楽の場合もそうですわね。あ、でもお話をないがしろにしているわけでは、ございませんのよ。うふふ ♪
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

らじかんさま、
どうも初めまして! お忙しい中にも関わらずご覧いただきまして、誠にありがとうございます!
お★さままで頂戴いたしまして、感激しております。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

黒木夜 さま、
大変ご無沙汰いたしております。この度はご多忙に中、拙作にお時間を割いてくださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
職人気質の親っさん。となるとどうしても舞台は下町が似合います。うまく表現できておりましたでしょうか。誇りを持った職人、その人柄にふれてくだすって、嬉しい♡
心より御礼申し上げます♬

一瀬 深雪さま、
どうも初めまして! 年末のお忙しい時期にご覧くださり、誠にありがとうございます! お目汚しにはなりませんでしたでしょうか。
いただいたお★さま、大切にいたします。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

ゆうさと(新米剣士)さま、
どうも初めまして! この度はわざわざご覧くださり、誠にありがとうございます! お★さままで頂戴し、とても励みになっております。心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

25件のコメント

  • こんにちは!
    ノートの書き込みありがとうございます。つばきさんの創作方法、興味深く読ませていただきました。やはり創作方法は人それぞれ違うものですよね。でもつばきさんの小説はとにかく読みやすい。それがどんな破天荒なキャラクター、ストーリーであろうとも。
    あとは寝かせるのが大事ですね。お酒と一緒で熟成させる感じなのでしょうかね。
    とにかく面白い話を聞かせていただきありがとうございました!
    ではまた!

    「…あ、すみませんGENEさん。いや、今はゲンさんでしたね、ラーメン大を一つお願いします。それから隣のレディーに熱燗をもう一杯、払いは私につけておいてください」
  • スッと音もなく暖簾をくぐられ、コートの襟を立てサングラスを掛けられた殿方が、わたくしの隣の椅子へ腰を降ろされました。

    あら、わたくしに熱燗を奢ってくださるなんて、なかなかのジェントルマンね。ところが、ご主人は無愛想にそっぽを向かれ「今夜はもう閉店だよ、帰ってくんない」と言われます。

    殿方は仕方ないという面持ちで、軽く頭を振られました。

    「ゲンさん、一度だ。一度だけ我々に手を貸して欲しい」

    殿方はわたくしを意識されながら、小声で囁かれます。

    まさか、ゲンさんって本当に秘密諜報員でしたの!
    これは組織が重大な事案を抱え、どうしてもゲンさんのチカラを借りたい。そういうお話なのね!

    わたくしはワクワクしながら、切れ長二重の目元をチラチラと動かし、「わたくしには何のことやら、さっぱりですわ」感をかもしだしながらも、しっかりと耳をそばだてます。

    「悪いが、帰ってくんない」

    「そうもいかないんだ、ゲンさん。
    我々にはどうしても貴方のチカラが必要なんだ。これは国家存続の危機に関わる案件なんだ」

    エ〜ッ! スッゲ〜じゃ〜ん!
    などと、わたくしのワクワク感が身体中からにじみ出ます。

    どうなるの、どうなるの。ゲンさんは昔とった杵柄で、再びスパイ戦に巻き込まれるのかしら! お爺さまだけど。
    これは面白くなってきたわね……

    元秘密諜報員、ゲンさんは果たしてどうなるのか? 次章を待て!

    というところで、関川さま、いらっしゃいませ♬

    全くご参考にならないわたくしの創作論、大変失礼いたしました。
    やはり皆さま、十人十色なのでございましょうねえ。
  • つばきお嬢様、こんばんは!

    夜中に喉が渇いて起きてしまいました。
    そのまま眠りに付けず、ふとカクヨムを見てみたら、『魔陣幻戯』シリーズがじわじわ人気上昇中で感極まりますね…!
    外伝短編から本編へ導線がつながれるなんて、さすがの手腕でございます!

    しかもラーメンの屋台ですってぇ!?
    これは新たな夜食テロ…(^ω^)
    くっ、こらえろ、鎮まれ我が右手よ…!
    夜食を勝手に作り出す右腕を止めなくてはっ…!
  • ま! 織田先生!

    こんばんは〜♬

    いやですわぁ、おからかいになっては。人気上昇というよりも、無理矢理読んでいただいているようなものでございます。

    このお時間にお召し上がりになるは、危険でございますわよ。
    ああ、でもそうは申しましても、なぜラーメンは蠱惑的なのでございましょう。

    わたくしも食したくなって参りましたわ♡
  • つばきちゃん✨

    こんばんは

    んと、今ね夜空いっぱいのシューティングスターを読ませて頂いてっ


    レビューを書いたのだけれど、もうね…少女のひとつだけの願い…からもう心の中がヤバくて、レビューと数分にらめっこするもまとまらなくて、奇っ怪なレビューになっちゃってごめんなさい(・・;)💧

    少女の願いが…願いが…
    ママ良かった。゚(゚´Д`゚)゚。
    サンタさんがお手紙全部読んでて良かった。゚(゚´Д`゚)゚。
    この物語のサンタさんとトナカイさん…なんだか私も会いたいよ
    。゚(゚´Д`゚)゚。


    なんて言ったらいいのか、ここにお邪魔してもまだまとまらない💧

    レビューもコメントもごめんね💧
  • 沙霧ちゃん♬
    こんばんは!

    「夜空いっぱいの〜」をご覧くださりありがとうございます!
    レビュー、心のままに書いてくだすったのが手に取るようにわかり、つばきはとても感動いたしております。
    嬉しい♡
    ありがとうございます!

    御礼はまたノートを立ち上げて申し上げます🎶
  • チャルメラの音につられてお鍋を片手に……あっ! つばっきーじゃない! 奇遇だね~まさかこんなところで会うなんて……これ? お鍋の中にラーメン入れてもらってお家で食べようと思ったの❤

    閑話休題

    シンデレラの短編に丁寧なレビューをいただきありがとう❤
    ダメかと思いながら何とか完走することができました。一度ギブアップ宣言をしただけに「ダメでもともとよ!」なんて開き直ったのが良かったのかもしれません(相変わらずの博打野郎)

    デキはイマイチかもしれないけれど……諦めなくて良かったわ。
    心からそう思います。


  • 「おっ、あまり見ねえおねえちゃんだな。うん? お鍋で持って帰るってかい。いいぜぇ、もちろん。
    じゃさ、つくっから座って待っててくんない」
    ゲンさんは快くお鍋を受け取り、ラーメンを作りはじめます。

    わたくしは5本目の熱燗を引っ掛けながら、胡乱な目つきでその女性を見上げました。

    あらまっ! RAYちゃんじゃない!
    なぁに、奇遇でございますわねえ。
    ええ、ええ、どうぞお掛けになって。
    アツいの、一杯どう?
    え? 日本酒は苦手なの。うふふ、じゃあ失礼してわたくしだけ。

    新作、拝読いたしました。
    うん、これはまさしくテーマはクリスマスじゃなければいけなかったわね。
    いろいろな葛藤や苦悩を、クリスマスが奇跡をプレゼントしてくれることにより、振り払うことができるってこと。そこから新しい一歩を踏み出すことができる。
    これはクリスマスにもってこいのお話だわね。

    良い物語をありがとうございます♡
  • 高尾つばき様

    初めまして。紺藤香純と申す者です。
    ノートの雰囲気を壊してしまうのを承知で、お伝えした方がいいかもしれないと思い、投稿させて頂きます。

    実は拙作「ほどくひと」の中で、高尾様の小学生時代の読書感想文と似たエピソードを書いてしまいました。「中学生が江戸川乱歩の作品で読書感想文を書いて学校から呼び出しをくらう」というエピソードです。
    高尾様を知る前に書いたものですが、誤解されてもおかしくない内容です。また、読んで下さる方にも配慮が足りなかったと考えています。
    申し訳ありませんでした。
    「ほどくひと」は今後も書き続けたい作品ですが、削除することも考え始めています。

    なお、私も江戸川乱歩の作品が好きで、乱歩と乱歩ファンを否定するつもりは全くありません。
    ですが、謝りたいと思った次第です。
    本当に申し訳ありませんでした。
  • ふぃ~!やっとクリスマス番外編書き終えたぁ♬
    推敲とアップは明日に回して、とりあえず何か腹ごしらえを…
    あ、チャルメラの音が聞こえてきたわっ!
    これはもう食べに行くしかないでしょう(^^)

    私はどてらを引っ掛け、下駄を鳴らして夜道を歩きます。
    途中、お鍋を持ったお嬢さんとすれ違いざまにほわんと鶏ガラスープの香りが…
    うーん、早く食べたい!って、今のお嬢さんRAYちゃんに似ていたような…。
    いやいやまさかね、ハイセンスな都会派で知られる光合成倶楽部の部長さまが、お鍋片手に夜中に歩いているわけがありませんものね!

    あ、見えました、赤のれん!
    「いらっしゃい」
    「ラーメン一杯いただけます?」
    「はいよ」
    ふと隣に突っ伏している若いご令嬢を見やりますと、熱燗のとっくりが7~8本転がっております。
    あらあら、こんなに飲んでしまって、気持ち良くなってしまわれたのねぇ。
    あっ、大将、私お酒は結構です!
    この後愛車のデコトラで海岸沿いの国道をドライブする予定ですので。
    ええ、目的地は特にありません。真夜中に愛車のまとう電飾を煌めかせたい、ただそれだけなんですのよ。

    あら、隣のご令嬢がもぞもぞと動いていらっしゃる。
    それに、今まで気が付かなかったけれど、ご令嬢の奥にはコートとサングラスを身にまとった男性がこちらを気にしていらっしゃる。
    なんだか早く帰らないと気まずい空気…。
    猫舌の私は必死でラーメンをすすり、そそくさと屋台を後にしたのでした。

    ──と、めちゃくちゃ長いお遊びになりすみません!
    今回もレビューお褒めくださってありがとうございます(*´艸`*)
    タマサブの認知度も上がっていることですし、血沸き肉躍るアクション大作『魔陣幻戯』『千年魍魎』どちらも多くの方の目にとまりますよう、エールを送りつつ祈念しております♡
  • あらまあ、紺藤さま、どうも初めまして!
    わざわざお越しくださり、誠に恐れ入ります。

    たまたま乱歩先生の御作で、少しニュアンスが被っただけのことではございませんかしら。
    わたくしのような地味な書き手のプロフなど、ほとんど読まれてもおりませんのよ。うふふ♡

    そんな削除なんてなさらないでくださいまし!

    表現の自由、これでございますわ♬

    わたくしなどに、どうぞお気兼ねなど、なさらないでくださいまし。

    もちろん謝罪などもまったく必要ございませぬ。
    むしろこちらが恐縮しております。

    とても真面目で、小説に真摯にお取り組みになっていらっしゃるお姿、むしろこちらが勉強させていただきました。ありがとうございます♬

    これを、機会にどうぞよろしくお願いします申し上げます🎶
  • 「おっ、こちらのおねえちゃんは、すっかりできあがっちまったなあ」

    ゲンさんはラーメン大をぺろりとたいらげ、さらに熱燗を立て続けに飲み、屋台に突っ伏してイビキをかいてる女性を見る。

    「はいよ! 持ち帰りのラーメン上がったよ」

    ゲンさんは鍋を持ってきた女性に渡す。女性は満面の笑みを浮かべて、鼻歌まじりに屋台を後にする。

    入れ替わるように、今度はどてらを着込み、下駄を鳴らして若い女の子が暖簾をくぐってきた。

    「へへつ、今夜は若いベッピンさんが多勢来てくださるわい」

    ゲンさんはにこやかに応対する。

    コートを着た男性は、黙って席を立ち帰ろうとした。

    「ちょっと待ってくんない」

    ゲンさんは麺を茹でながら男性を呼び止めた。

    「見ての通り、こっちはラーメン屋が似合いの老ぼれよ。
    したっけ、お国がわしをこうてくれるんならよう、仕方ないのう」

    ゲンさんの言葉に男性は振り返る。

    「で、では!」

    「これっきしだぜ、これっきし。
    わしももういつ天に召されてもおかしゅうないお年頃よ」

    「ゲンさん……いや、GENE中佐、助かります!」

    「んで、なんだあ、もちろんゲンさんガールは呼んであんだろな」

    「ええ、もちろん。フジコさまにお声掛けしております」

    「フジコか……あのオナゴはとてつもなくセクシーで機転の利く相棒だったさね。今はどこにいるんだい?」

    「ええ、フジコさまはとある老人ホームで余生を送っておられましたが、今回の任務に大層乗る気でいらっしゃいます」

    ゲンさんは笑った。

    「ならば、最後にひと花咲かせてみるかのう」

    どてらの女の子は二人の会話をまったく無視し、ひたすらラーメンをすすっていた。


    ひまわりちゃん、こんばんは♬

    嬉しいわぁ、またまたお付き合いくだすって。

    秘密諜報員、ゲンさんの活躍が楽しみね。

    クリスマス番外編、とても楽しみにしてぉります♡



  • げっ! ラーメンの入ったお鍋を持って徘徊する姿を……こともあろうにひまわりちゃんに見られるなんて……何たる不覚,,,ガ━━(゚д゚;)━━ン!!

    このままではボクの都会的で洗練されたお嬢さまのイメージが壊れちゃう……それはマズイ……どうすれば……こうなったら仕方ないわ。キラ―クイーン第三の爆弾「アナザーワンバイツァダスト」で……って、そんな能力ないし(笑) 言い訳、言い訳……そうだ! これならいけるわ!

    町内大運動会の借り物競走で「夜泣きソバ屋のラーメンを入れた鍋」なんてお題を引いちゃっだの。もぉ~まいっちんぐ❤

    バレバレ…絶対ダメ…_」 ̄乙(、ン、)_
  • GENE中佐の承諾を得たエージェントSEKI-KA-WAは安堵のため息をつきながら、本部へ戻るべく帰路についた。

    静まり返った街を歩いていくと、前方の常夜灯の下に背を向けた人影を見つける。まさか、敵の組織か?

    懐に忍ばせた小型拳銃を取り出さそうと手を差し込む。
    ところが、その手に握られて現れたのは、なんと熱燗用のチロリであった。

    「な、なぜチロリが!」

    仕方なくそとアルミ製チロリを手にゆっくりと近づく。武器になるのかどうかかなりあやしいが。

    「……イメージがこわれ……マズイ……こうなったら!」
    人影は突然大声で何か叫ぶ。
    エージェントは死ぬほど驚いて、チロリを落としてしまった。

    さらに人影は手にしたお鍋を持って、回転しはじめ「もぉ〜マイッチング」などと意味不明の言葉とともに、突然笑い出すではないか。

    エージェントは、絶対にアブナイ人だと判断し、そっと踵を返すと角の横道へ入り、あとは振り向かないように必死に早歩きで去っていった。

    へべれけに酔った若いジャージ姿の美女は、どこをどうしてくすねたのか、手にはワルサーの小型拳銃を手にし、一生懸命振った。

    「あらぁ、お酒が出てこないじゃん。
    おいっ、親父! もっと酒を出しやがれ、ウイ〜」

    銃口を中佐に向け、躊躇することなくトリガーをひいた。

    ああ、国家の危機を救うはずのゲンさん。果たして無事に銃弾を避けることができたのか?

    などと、どんどん話が進んで参ります。

    RAYちゃん、ありがとう♡
  • なんとかGENE中佐の協力は取り付けた、エージェントフジコの復帰も取り付けた、これで日本は救われる…

    柄にもなく安堵していたせいだろう、私は夜道で一般人と出くわしてしまった。それにしても何か様子がおかしい。なにやらうわごとをつぶやきながら、鍋を片手にくるりと回っている。
    「もぉ~まいっちんぐ」
    街灯の下、スカートを翻しポーズをとっている。その瞬間にちらりと見えた三角の白を私は「記憶の宮殿」に収める。エージェントにとっての必須技能、記憶をこの広大な空間に整理して収めることができるのだ。今回は「昭和」のコーナーに分類する、こうしておけばいつでも記憶を楽しむ…ではなく引き出すことが可能だ。

    私は顔を覚えられぬよう足早にそこを後にする。
    まずは銃を取り戻さなければ。屋台に戻ると、あの女性はまだいた。机に突っ伏して寝ている。だが私はもう油断しない。
    実は最初に会った時から警戒していたのだ。だからこそ熱燗を飲ませて油断させようと思っていたのだが。一枚上手は彼女の方だったようだ。
    それにしても一体なものだろう?
    私の記憶の宮殿のファイルに一致する人物はいない。

    屋台の隣には派手なデコトラが止まっていた。そしてどてらをきた若い女性がまだラーメンを食べている。さて、これからどうしたものだろう?エージェントには行きずりで巻き込まれるヒロインが必要だ。だがあのデコトラで彼女と逃げるというのはあまりにも…絵的にも…

    などと逡巡している時だった。
    屋台のあの女性がいきなり拳銃を抜いた。
    それも私の銃だ。
    「チクショウ、間に合わなかったか!」
    だが同時に私は確信していた。
    「死神殺し」のGENE中佐の技がこの目で見られる瞬間が来るであろうことを。そして私は記憶の宮殿、動画モードの準備に入ったのだった。
  • わしも老いたとはいえ、元プロじゃ。
    拳銃のトリガーがひかれる音も、ラーメンの麺が茹で上がる時の音も、長年の勘でわかるわいな。

    よもや目の前のお嬢ちゃんが、いきなり拳銃をぶっ放すなどはさすがに予想外じゃったがの。
    酔っているのか、それともシラフなのか。
    マズル(銃口)は真っ直ぐわしの眉間に向けられ、なんのためらいもなく弾丸が発射された。
    このお嬢ちゃんは、プロの暗殺者かいな?

    わしは先ほど見せびらかした「Casino Royale」の初版本を、さりげなく顔をガードするように掲げる。
    これがワルサーの小型拳銃だったからじゃが、もしマグナム弾であったら無理じゃったな。

    ターンッ!

    ボシュッ!

    弾丸が発射されそれを厚い紙の束、つまり初版本に食い込む音が、ほぼ同時に響いた。

    せっかくイアンがくれた貴重な本じゃったが、いたしかたあるまい。
    あの世に行ったら、イアンに謝らねばの。

    硝煙のにおいが屋台に立ち込める。懐かしいにおいじゃわい。
    拳銃を撃ったお嬢ちゃんは、再びムニャムニャ言いながら寝落ちしおったわ。

    どてらのお嬢ちゃんは何が起きたのかさえ知らず、汗だくでラーメンをすすってくれておるわな。

    まあ、わしの作る最後のラーメンじゃで、ゆっくり食べなされ。


    ああ!  ここまで描いて、気付きました。
    関川さまがふってくだすった「死神殺し」を入れる余裕のなかったことに……

    わたくしも、まだまだ修行が足りませぬ。ショボン……
  • 私の記憶の宮殿はその一部始終を見ていた。
    発砲の瞬間、GENEさんは弾丸を交わしながら、あの女性の伝票にさりげなくもう一枚の伝票を滑り込ませたのだ。あまりのさり気さなさに彼女は気づいていないに違いない。
    だがあの技こそが「死神殺し」…
    いったいあの伝票には何が書かれているのか?
    彼女が目覚めた時にその真実は明らかになる…
  • あら、わたくしはいったいどこで何をしておりましたのでしょうかしら?

    チュンチュンと鳴くスズメが、わたくしの横たわるベンチから飛び立ちます。

    ここは……公園だわ。
    あ、朝陽がキレイ!
    いやいや、それどころではございませぬ。

    たしか、夜なきソバを食して……ダメ、記憶がない……

    ふと手の中に、一枚の伝票が。
    で、伝票?

    わたくしは急いで確認しました。
    そこに書かれていたのは……

    「わしは、百貨店で急にトイレへ行きたくなり、太ももを閉じ、膝から下の足を懸命に動かしてトイレへ駆け込んだんじゃ。
    はぁ、間に合ったわい。

    おっ、ここはハイカラじゃな。
    ウォシュレ○ト付きではないか。

    わしは温水をやんごとなき部分に放水したんじゃな。

    さて、そろそろ頃合いかと、止まれのボタンを押したと思いなされ。

    が、しかしじゃ、止まらんのよ。
    温水がシャ〜ッと気持ちよう当たっとるんじゃがな、一向に止まる気配がない。

    さて、困った。

    このまま立ち上がれば、勢いのついた温水がわしの背中に降りかかる。
    かといって、このままずっと居座るわけにもいくまい。

    誰ぞ、誰ぞおらんかね!

    わしは叫んだ。

    すでに小一時間ほど経っておる。
    いまだに温水は、気持ちよお当たっとる。

    ふふっ、結局わしは半日ほど、トイレで座って過ごした、こういうわけじゃ。

    なんとか通りかかった店員に、助けてもらったわい。

    いやいや、迂闊に文明の利器に頼るもんではないのう」

    は?

    え〜っと……

    なんですの、これは?

    わたくしはその伝票を、丸めてポイとゴミ箱に捨てて差し上げました。

    お腹がすいたわねえ。
    さ、帰って朝食、朝食っと。

    その伝票に書かれていたのは、暗号であったことを、つばきは知らない。

    ゲンさんが託した「死神殺し」はこうして闇に葬られたのであった。

    チャンチャン♬


  • こんばん…あぁっΣ(゚д゚;)
    ノート遊びがまだまだ続いていたとはっ!
    迂闊でしたぁ(><)
    私もデコトラを屋台に突っ込ませるくらいの派手な立ち回りをやりたかったです~

    いや、それにしても関川さんもつばきちゃんもさすがでございます(*´艸`*)
    RAYちゃんの「まいっちんぐ❤️」もハードボイルドな展開に華を添えてましたね!

    あ、忘れちゃいけない、お礼に伺ったのでした!
    つばきちゃん、早速うんりょーの番外編読んでくださってありがとうございます(๑>∀<๑)♥
    一番に駆けつけてくださって、素敵なレビューまで書いてくださり、本当に嬉しい♡♡♡
    つばきちゃんの応援をいつも励みにさせていただいております♬
    またノート遊びも参加させてくださいね(*ˊᗜˋ*) ノ
  • あら、ひまわりちゃん、こんばんは♬

    そうそう、すっかり関川さまに遊んでいただきましたのよ。
    なんだかドンドン道がそれてしまうわたくし、なぜ秘密諜報員からウォシュレ○トへ話がいったのか、ナゾ、でございます。うふふ♡

    ええ、御作は、いの一番に拝読いたしました。やりぃ!

    「おんりょー」、すみませぬ、「うんりょー」の世界観は大好き♡

    それぞれのキャラクターが、しっかりと役どころをおさえているからなんでしょうねえ。それを監督であるひまわりちゃんが、ピシッと細部にまで目を行き届かせてストーリーを演出なさっておいでだからですわ。
    うん、このシリーズは面白い!  でございます。

    そろそろまた次のノートを立ち上げねば、ですわね♪
  • ささ、朝食、朝食っと♬

    ああ、わたくしとしたことが、お米を研ぐのを失念しておりま……あら?
    ここにおにぎりが♡

    ひとみちゃん、こんばんは〜♩

    ま、嬉しや、大好物のおにぎりの差し入れね。
    しかも、具材には、シャケ、タラコ、オカカ、さらに梅干しとシンプルにして、THEオニギリね♡

    遠慮のう、いっただきま〜す♬
  • つばっきー、おっはよう♪
    み、見られた……!? お鍋だけじゃなくあんなものまで……

    で、でも……

    パンツじゃないから恥ずかしくないもん!!(見せパン?)


    今日も一日笑顔でいられますように☆彡
  • RAYちゃん、おはようございます♬

    まあっ、RAYちゃんったらさすがね!
    常にどこからどんな風に見られてもいいように、「見せパン」をはいていらっしゃるなんて。うふふ♡

    関川さまの脳内に、しっかりインプットされてしまいましたけど♩

    師走真っ只中、どうぞお身体に気をつけてくださいまし。

    今日も元気に参りましょう🎶
  • このたびはありがとうございます。
    返信が遅くなってすいません、これからもよろしくお願いします!
  • ま!
    おはようございます!

    ゆうさとさま、わざわざお運びくださり、ありがとうございます🎶

    こちらこそ、どうぞよろしくお願い申し上げます♡

    つばきの近況ノートは、いつでもどなたさまでもお遊びくだすって結構な場所でございます。

    新しく立ち上げておりますノートにも、どうぞご遠慮なさらずお越しくださいませ♬
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