この季節、なぜかラーメンが恋しゅうなってしまいます。
それも「夜なきソバ」なる、屋台のラーメンでございます。
町内に夜の帳が下りるころ、どこからともなくチャルメラの鳴る音が響いて参ります。
わたくしは外出用のスポーツジャージに着替えまして、上からダウンコートを羽織って屋敷を飛び出ます。
本来、外出時には清楚なスタイルで出かけるわたくしではございますが、屋台に合わせたコーディネートをいたしますの。
TPO、でございます。
公園横の道路に、「ラーメン」とだけ書かれた暖簾をさげた屋台。
ご主人はもうかなりご高齢なのですが、それでも週に二、三度はこの場所で営業をされております。屋台には折りたたみのパイプ椅子が四つのみ。
今夜はまだ他のお客さまはいらっしゃらないみたいです。
屋台から湯気と、美味そうな香りが漂ってきております。
「こんばんは」
わたくしは暖簾を上げてご主人にご挨拶いたします。
「いらっしゃい」
短く刈り込んだ白髪の頭には手ぬぐいを巻かれ、モスグリーンのジャージにペラペラのベストタイプの黒いダウンを着たご主人が、ニコリと出迎えてくれます。
お顔は深いしわが刻まれ、前歯が抜けたお口はどこかひょうきんです。
「やはり陽が落ちますと、冷えますわねえ。
えっと、わたくしはラーメンの大をお願いいたします」
「あいよっ。まあ掛けてくんねえ」
ご主人は屋台の反対側で準備に入られます。
「おねえちゃん、よかったら熱燗でもつけよっか」
「そうねえ。じゃあ、いただいちゃおっかしら」
ご主人はアルミ製のチロリに一升瓶からお酒を注ぎ、麺を湯がく鍋に浸します。熱燗はチロリでいただくと、とても温まります。
わたくしは熱燗をいただきながら、ラーメン大をすすりこみます。
「美味い!」
と思わず大きなお声をあげてしまうわたくし。
ご主人は椅子に腰を下ろしながら、キセルでお煙草を吸われております。
「へへっ、ありがとよ。ただまあ、わしもそろそろ引退かのう」
「え? でもまだまだお元気でいらっしゃるのに」
「いやいや、寄る年波には、さすがのわしも勝てんよ」
「ご主人さまは、この屋台をおやりになる前は、やはりどこかでラーメン修業なさったの?」
「いんやあ」
「じゃあ、脱サラかしら」
「秘密諜報員さあ」
は? わたくしの聞き違え?
「ひ、秘密諜報員……」
「おうさ。こう見えても若い頃にゃあ、世界を股に掛けた名うてのスパイだったわい」
「え~っと……」
「おねえちゃん、あんたはジェームズ・ボンドを知っておるかな」
「は、はい。007ですわね」
「あのボンドのモデルは、実はこのわしじゃったんじゃあ」
げ! まさかご主人さま、すでにボケが!
でもラーメンだけは、美味しくお作りになられるのね。
「たしか、イアン・フレミングが1953年に、発表した長編小説『カジノ・ロワイヤル』がジェームズ・ボンドの第一作ですわよ」
「そうじゃあ。わしゃ、イアンと懇意にしておったからのう。秘密諜報員のわしをモデルにぜひ作品を書かせてくれと、頼まれたんじゃな」
ちょっと待って。そうなると、このご主人さまはもうすでに九十歳を
こえていらっしゃる計算。
「ほれ、これがイアンから貰った第一作目の初版本じゃ」
ご主人はラーメンの具を入れた引き出しの一番上から、古びた本を取り出されました。
確かに表紙には英語でジョナサン・ケープ社発行で「Casino Royale」とタイトルが印刷されております。
「その表紙をめくると、ほれ」
わたくしが持ったその本を、ご主人は指をねぶって表紙を開かれます。
ま! そこには「親愛なるゲンさんへ。イアン・フレミング」と確かにサインが……
ちょっと待って。これって日本語よ。まさか、イアン・フレミングって日本語が達者だったの?
「ボンド・ガールならぬ、ゲンさん・ガールもおったのよのう。ピッチピチのギャルだったんじゃが、みな老人ホームで優雅に暮らすババアになってしもうたもんなあ」
宙を寂しそうに仰ぐご主人。いえ、元秘密諜報員のゲンさん。
わたくしは半信半疑ながら、熱燗をクイッと飲み干しました。
もう一本熱燗をオーダーし、その間にカクヨムさまをチェックいたします。はあっ、いずれはわたくしもババアの仲間入りねえ……
あ! 「魔陣幻戯~アイドル志望は時給戦士」にレビューをいただいております!
春川晴人 さま、
いつもお世話になっております。師走のお忙しい時にご覧くださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
本格的バトルアクションなどとお褒めいただき、嬉しい♡
つばきの中では、最長のお話でございます。お付き合いいただきまして本当に感謝いたしております。それぞれの愛、でございました。
心より御礼申し上げます♬
ま! 「千年魍魎~アイドル志望は時給戦士・外伝」にレビューを頂戴しております!
陽野ひまわり さま、
ひまわりちゃ~ん、年末なのにお付き合いくだすって誠にありがとうございます! しかも前作をうまく絡めてくださり、嬉しい♡
あまりに素敵なレビューに魅かれてご覧くださったかたから、「ダマされた!」などとお叱りを受けそう。とても魅力的な内容にまとめてくださる技術は、さすがでございますわ。感激です。
さらなる続編……いつの日にかご覧いただけたらよいですわね。
心より御礼申し上げます♬
あら、「面妖な金属男」にお★さまが!
ハギワラさま、
我が心の師、わざわざご覧くださり誠にありがとうございます!
お目通しくださるだけでも充分嬉しゅうございますのに、お★さままでいただき、つばきは嬉しい♡
心より御礼申し上げます♬
まあ! 「夜空いっぱいのシューティング・スター」にレビューとお★さまをいただいております!
@rein-awardさま、
どうも初めまして! 年末のお忙しい時期にご覧くださり誠にありがとうございます!
いただいたお★さまは、明日への原動力になります。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
音メ心 さま、
どうも初めまして! 師走の中、わざわざご覧くださり、またレビューまで頂戴し、誠にありがとうございます!
わたくしも、トナカイは見たことがございませんのよ。キャラが立っているなどとお褒めくださり、嬉しい♡
基本的にわたくしの場合、お話よりもキャラが先にありき、でございます。詩が先か曲が先か、音楽の場合もそうですわね。あ、でもお話をないがしろにしているわけでは、ございませんのよ。うふふ ♪
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
らじかんさま、
どうも初めまして! お忙しい中にも関わらずご覧いただきまして、誠にありがとうございます!
お★さままで頂戴いたしまして、感激しております。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
黒木夜 さま、
大変ご無沙汰いたしております。この度はご多忙に中、拙作にお時間を割いてくださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
職人気質の親っさん。となるとどうしても舞台は下町が似合います。うまく表現できておりましたでしょうか。誇りを持った職人、その人柄にふれてくだすって、嬉しい♡
心より御礼申し上げます♬
一瀬 深雪さま、
どうも初めまして! 年末のお忙しい時期にご覧くださり、誠にありがとうございます! お目汚しにはなりませんでしたでしょうか。
いただいたお★さま、大切にいたします。
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
ゆうさと(新米剣士)さま、
どうも初めまして! この度はわざわざご覧くださり、誠にありがとうございます! お★さままで頂戴し、とても励みになっております。心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!