少し前のことでございます。
わたくし、所用で国際線の飛行機に搭乗しておりましたの。
ええ、ちょうどこの日もプライベート・ジェット機は車検でございましたゆえ、民間機を利用しておりました。もちろんビジネス・クラス、と申し上げたいのですれど、あいにく満席に近うございまして、なんとかエコノミーの座席を確保できた次第でございました。
あ、この時は保安検査場でとッ捕まることなく(妖魔討伐のためではございませんでしたのでボディ・アーマーや火器類は不所持)、スムーズに通過。
これみよがしに係員の前で両手を広げて、クルクル回ってやりましたわ。
窓側の狭いシートに身を委ねておりました。
お隣にはお年を召されたご婦人。真っ白なヘアをおかっぱにされ、無地の渋い濃緑色系の和服姿です。
背丈のお小さいかたで、頭の位置がわたくしの胸元当たり。
ニコニコと自然な笑みをお浮かべになり、ちんまりと座っていらしたのでございます。
セントレアを飛び立ちまして、かれこれ一時間ばかり経った頃でしたでしょうか。
窓の外にはまばゆい太陽の光が、真っ青な空に輝いております。
いきなり、ガクッと機体が一度揺れました。
エアポケット、でございましょう。しばらくいたしますと、前方のビジネスクラスからお綺麗なCAさまが小走りでやってこられました。
「お医者さまは、いらっしゃいませんでしょうか! 急患発生ですっ。お医者さまは、いらっしゃいませんでしょうか!」
まあ、それは大変。わたくしはキョロキョロと首を伸ばして辺りを見まわします。
「ああ、私は内科医ですが」
するとわたくしの後方の席から、三十歳代後半とお見受けする殿方が手を上げられました。紺色のブレザーに白いシャツをお召しになるそのお医者さまへCAさまは走り寄り、何事かささやかれました。
お医者さまは立ち上がられると、CAさまと共に前方へ向かわれます。
大事なければ良いのですが。周りの乗客のみなさまも、ザワザワとされていらっしゃいました。ところが、わたくしのお隣のご婦人は何事もなかったのように、ジッと笑みを浮かばれたまま。このちょっとした騒ぎもどこ吹く風でございます。
五分もたたないうちに、先ほどのお医者さまが戻ってこられました。ところが髪を逆立てられ、顔面は死人のように蒼白。
よろよろ、よろよろっとシートの背もたれにすがるようにお身体を引きずるように歩いて来られたのです。
むしろこのおかたのほうが病人かと思われるほど。
わたくしは切れ長二重の目でお医者さまが横を通り過ぎ、ご自身の席へ向かわれる姿を追いました。
シートに倒れ込むように身を投げ出されると、茫然自失の様相でお口を半開きのまま、焦点の合わぬ目で宙を仰いでおられますの。
えっ、いったい患者さまはどうなさったのでしょう。
すると先ほどのお綺麗なCAさまが、今度はドドッと人目もはばからず必死の形相で走って来られました。
満席のエコノミー・クラスを見回しながら、大声で叫ばれます。
「お客さまの中で、妖術師のかたはいらっしゃいませんでしょうかっ!」
よ、妖術師?
「妖術師のかたがいらっしゃいましたら、大至急お名乗り下さい! き、機長が」
でぇ~っ! いったい何がコックピットで……
ああ、わたくしはボディ・アーマーを持参しなかったことを悔やみました。
武器も持たぬ身ではありますれど、ここはわたくしが!
手を上げて席を立とうといたしました時です。
「おやおや、現れおったかい。仕方ないのう。お嬢さんはここで待っていなされ。おまえさんじゃあ、ちーっと難しい相手やもしれんでのう」
「はっ?」
「このババがなんとかしてみるわいなあ」
笑みを浮かべたまま、隣席のご婦人は、よっこらせっと立ち上がられました。
「あ、あなたは……」
「わしかの? ただのしなびた妖術師じゃよ。ほっほっほ」
老齢のご婦人は笑いながらCAさまと共に前方へ向かわれました。
飛行機はその後何事もなかったかのように、定刻通りに目的地へ到着いたしました。
いったいコックピットで機長さまはいかがされたのでしょう。
妖術使いのご婦人は戻られても何も語られず、ただ笑みをお浮かべのままでございました。
やはり飛行機に乗る際には、対妖魔用の武器を懐に忍ばせておかねば安心できない世の中でございます。
さあ、カクヨムさまをチェックよ!
あ、拙作「トリック・トリップ 無限大」にレビューをいただいております!
伊藤愛夏さま、
愛夏り~ん♬ 年末へ向けてご多忙の中、お時間をねん出してくださり誠にありがとうございます!
パラレルワールドなる異世界を描いた、すこぶる健全なお話で、物足りなさをお感じになってのではございませんでしょうか……
拙作「魔陣幻戯~」の陳式太極拳の使い手レイが、女子高生を弟子にするというお話でございます。児童文学もどきだ、などと言われたこともございますの。ですから敬愛する作家、愛夏りんからレビューを頂戴できて、ものすごく嬉しい♡
無頼漢、法王パウロ二世でスピンオフを描いちゃおうかしら。
冗談はさておきまして、心より御礼申し上げます!
あ、拙作「翡翠の月」にレビューを頂戴しております!
(13)ひとみさま、
ひとみちゃん、ヨム中に拙作をチョイスくださり、またお褒めのレビューまでくだすって、誠にありがとうございます!
閻魔大王はこの近況ノートにおいては、オネエなのですれど、今作におきましてはおっしゃられますように、超イケメンのホスト風。
ただ主人公は占術師オボロのはずが、わたくしの悪い癖でサブキャラが際立ってしまいましたの。クスン……
経典のような世界、いただきました♡
心より御礼申し上げます!
あ、拙作「ひねもす漫研、オタクかな」にレビューをいただいておりまする!
銀鏡 怜尚さま、
いつも大変お世話になっております。ご執筆で超ご多忙の折にお時間を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
わたくしのお話はほぼ名古屋を舞台といたしております。この「ひねもす~」は、わたくしが一番最初に描きました物語でございます。
姫二郎を超える漫研の実在人物は、まだまだおりますの。現在連載は止まっておりますれど、再開の節にはお目汚しにならぬ程度にチラ見くださると嬉しい♡
リカちゃん人形は今でもわたくし持っておりますのよ。うふふ。
心より御礼申し上げます!
年末に向かってお忙しい中、拙作をご覧くだすった皆さま、誠にありがとうございます!!
また、つばきの近況ノートはいつでもどなたでもウエルカムでございます。死ぬほどお暇な時にでも、是非遊びにいらしてくださいまし。
あ、くれぐれもお手土産は結構でございます。
エクレアは少々飽きて参りました。仙台銘菓「ハキノツギ」など久しく口にしてはおりませんわねえ♬