ビヨ~ンビョオォン、ベンベンべべ~ンッ……
「祗園精舎の鐘の声~ェッ、 諸行無常の響きあ~りぃ~、 娑~羅双樹のぉ~花の色~ッとぉ、 盛者~必衰の理をあらわ~すうぅぅ」
はっ?
いきなりディーン胃腸ヶ峰さまとおっしゃる “ 流し ” のおかたの演奏が始まりましたの。
って、これは演歌でも流行歌でもなくてよ。
わたくしは、すかさず「ごはん屋」のご主人を振り返ります。
「いやあ、やっぱりいいなあ、ディーンさんの『平家物語』はさ」
「いやいや、ご主人。
このおかたは、流しを生業にされておられるって――」
「ああ、そうさ。流しといっても演歌師じゃなくて、平曲、つまり『平家琵琶の伴奏を伴う平家物語の語り』を現代風にアレンジしてる琵琶法師なんだな、彼は。だから薩摩琵琶や筑前琵琶とは違うだろ?」
と言われましても、わたくしには琵琶の違いなどわかりませぬ。
ビョンビョンビョンビョン、ビョ~ヨヨ~ンッ……
「おご~れ~る人も~久しから~ずっ、 唯春の~っ夜の~ぉぉ夢のごとし~ぃっ」
ディーンさまは琵琶を弾きながら、平家物語を歌う? 語る? とにかくビブラートを効かせた張りのあるお声が、狭い店内に響き渡ります。
ま、まあ、わたくしも日本人といたしまして、やはりこのような古典芸能をたまには拝聴いたしませねば。そう思いながら耳を傾けます。
切れ長二重の目をつむれますれば、いにしえの平安時代の様相が浮かんで参り……あらっ? 店内の灯りがバチバチと点滅を始めましたわ。
ディーンさまの演奏は興に乗ってきており、ご主人は目を閉じ腕を組んで聴き入っておられます。
バチンッ! 電灯が弾けるように消えてしまいました。
えっ、停電?
でもお二人とも平家物語の世界へ完全にひたっておられるのか、気付いておられませぬ。
その直後でございます。
ビョンビョン鳴っております琵琶の周囲が、ぽーっと鈍く輝き始めたのでございます。
「た~けき~っ者も遂には~ぁぁほろびぬ~っとぉ、 偏に風~の~ぉ前の塵にぃぃ同じ~ぃぃ」
カラオケのエコーどころではい残響がこだましまして、琵琶の音がまるで地の底から亡者を呼び出すように鳴りま……
ちょっと待って。
店内には、お客さまはわたくしひとりだったはずよ。
では、ディーンさまの横にヌウッと姿を現したのはどなた?
あらっ、ひとり、二人と次々と。
しかも皆さま、なにやら白いお着物姿で長い髪でお顔を隠されているわ。微妙に発光しておりますのは、当節の流行?
狭い店内に、続々と登場なさる不思議なおかたたち。
わたくしの左右にもいつの間にやら、いらっしゃいます。カウンター内のご主人の横にも。でもご主人は目を閉じ、ややお顔を斜め上に向けられディーンさまのパフォーマンスに酔いしれていらっしゃいます。
えーっと、この突如現れたおかたたちは、わたくしが思いますのには多分、霊? 怨霊?
ディーンさまの演奏に、導かれるように集合なさったのね。
はい、わたくし、ただ今腰が抜けてまったく動けませんのよ。
うふふ。
妖魔には強気のわたくし。でも、心霊現象はチョ~苦手。
まもなく意識を飛ばされて、いわゆる気絶するやと思います。
その前にカクヨムさまだけは、チェックいたしませぬと。
ああ、横におわす亡霊さまがスマホを覗きこんでおられますぅ。
なんと、拙作「猟奇なガール」&「予想外な涼ノ宮兄弟」にレビューをいただいておりますわ!
阪木洋一 さま、
どうも初めまして!
この度は二つもご覧くださり、しかもレビューまで頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
「猟奇なガール」のつばめちゃん、コワあございましたでしょうか?
確かに、ちょっぴり人さまの感覚とは異なりますかと。トンでおります漫研部員でございますゆえ。そのあたりをお察しくだされば、幸いでございます。
「予想外な涼ノ宮兄弟」、これは本当に純文学を目指して描き始めましたの。あれよあれよと方向が変わってしまい、なにやらトンデモナイ方向のお話になってしまいました。
仰しゃられますように、最後のほうではわたくしも吹っ切れまして、確かに描いていて気持ちはようございました♬
二作続けてご覧くだすって、嬉しい♡
心より御礼申し上げます!
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
オリオン さま、
どうも初めまして!
ご多忙の中、拙作を二作もご覧くださり、またレビューまでいただきまして、誠にありがとうございます!
「猟奇なガール」、霊長類最 “ 恐 ” 、イタダキました♬
多少脚色はしておりますれど、つばめちゃんは実在ですのよ。マジ。
どこまでが真実なのかは、ヒ・ミ・ツ。うふふ。
「予想外な涼ノ宮兄弟」、さようでございますの。破天荒極まりないお話になってしまいました。えっ? 確信犯かとお訊きですのね。
いえいえ、わたくしはそのような器用人ではございませぬ。
ダ〇プンだなんて、わたくしとしたことが、後から気づきましたの。ちょっと、お下品でしたものね。でも普段はそのようなお下劣な人格ではございま……ちょっぴり、そうかも。
キワモノの二作を続けてだなんて、嬉しい♡
心より御礼申し上げます!
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。