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レビュー御礼~「ハッピー・デイ」

『わたしはその時、次の講義を受けるために工学部棟の階段前に向かっておりました。

今朝、大学へ出かける前に、朝の情報番組をテレビでつけながら軽くお化粧をしてましたの。
夏もそろそろ終わり。ファンデーションやチークはいつも薄目です。友人からうらやましがられる、きめの細かな白い肌。
お化粧しなくてそれほど可愛いのなら、もっとオシャレにお化粧したら意中の人は百発百中でイチコロよ、なんて言われても、元々自分の容姿には自信はないのです。
唯一勉強だけはできるって、ちょっぴり自慢しちゃってます。
現役であの国立大学理工学部へ入学できたんですから。

勉強机に立てた鏡越しにテレビをチラ見していると、星座占いのコーナーに差し掛かってました。

これこれ。

わたしはこの占いコーナーが大好きで、今日はどんな一日になるのかなってワクワクしながらも、ドキドキしちゃいます。
バッド・デイだなんて言われたら、やっぱり朝から落ち込んじゃいますもの。

えーっと……やったあ!  
今日は素敵な出会いがあるでしょう、なんですって。

よーし、こうなったら少しだけ濃いくお化粧しなくちゃね。どんな出会いが待ち受けているのか、楽しみ~!

午前中は残念ながら素敵な出会いはありませんでした。ただ男子学生に、声だけはよくかけられるの。街中でもよ。
わたしって、そんなに尻軽に見られちゃってるのかなあ。もちろん丁寧にお断りしてますのよ。
だって、大学は学ぶために通ってるんですから。

髪は肩まで伸ばして、ほんの少しだけカラーリングしてます。
今日はベージュピンクのフェミニンカットソー に、裾フリンジデニムスカートです。少し膝上なんだけど、これくらいのオシャレはわたし的にはOKよ。

そうそう、それで階段前に差し掛かった時なのです。

「ウワ~ッ、だ、誰か止めて~!」

男子と思われる悲鳴が、階段の上から耳に入ってきたのです。

えっ!  なにごと?

わたしはビックリして階段を見上げたんです。
そしたら、階段を音を立てながら転がり落ちてくる男子の姿が見えました。
体操選手が練習のために転がって来たのかって、思っちゃいました。

あわてて周囲を見渡しても、わたし以外に誰もいないのです。
わたしはすかさず教科書を入れたバッグを放ると、恥ずかしさも忘れて両脚を開いて身構えました。
その男子は悲鳴を上げながらわたしの両腕の中へ飛び込んできたのです。

もうビックリです。

「あわわっ、どこのどなたか存じ上げませんが、止めていただいてありがとうございます!」

その人はわたしに抱かれたまま、顔を上げてお礼を言いました。

か、かわいい!  超絶かわいい~っ!!

わたしは多分間の抜けたような顔つきだったと思いますよ。

だってだって、その男子、物凄くキュートだったんです。例えるなら、そう、テディベアのぬいぐるみのよう。
男の子らしい短めの髪。武士のような太い眉。眼鏡の下には、真理を見通すような知的な細く鋭い目。

「い、いえ、大丈夫ですか?  どこかお怪我されてるんじゃありませんか」

わたしは心配してその男子の顔をのぞき込みました。

すると耳まで真っ赤になり、「だ、だ、大丈夫。助かりました」と横を向いてボソリとつぶやいたんです。
その声が、これまたわたしのハートをくすぐります。

「でも万が一があるといけないから、医務室までご一緒しますね」

「い、いや、そこまでしていただいては、ご迷惑――」

「ダメです!  ちゃんと診てもらわないと、ね」

わたしはニコリと微笑みました。

本当は目の前に現れたわたしの理想通りの男の子と、少しでも一緒にいたかったんです。

わたしよりも十センチ以上小さな彼は、ちょっと小太りでこれまたギューってしたくなるカワイさ。
でも下心があると思われるのが嫌だったので、医務室までご一緒したあと、手を振って別れました。

もう気分はルンルン。思わずスキップしながら廊下を進んでいくと、途中で物理学の担当教授に会ったのです。

「おや、随分楽しそうですな」

「はーい。占いって当たるんですね、先生」

「はっはっはっ。理系人間としてはその根拠に疑問を持ちますがね。そうそう、この前きみが提出したレポート、大変よくできてました。益々学問に精をだしてくださいよ、中林玄太くん」

「いやーん、先生。本名で呼ばないでくださいな。わたしは中林りいさ、りいさってよんでくださ~い」

「そうでしたな。これは失敬」

先生に褒められるし、意中の男子に出会えるし、今日は本当にハッピー・デイだわ』 

あら、このお話は拙作「予想外な涼ノ宮兄弟」のスピンオフだわ。
ご覧になっていらっしゃらないおかたには、なにがなんだかわからないわよね。失礼いたしました。
と、頭を下げながらも自作をアピールする、姑息なわたくしでございますの。おほほっ♬

さあ、カクヨムさまをチェックですわ。

まあっ、拙作「猟奇なガール」にレビューをいただいておりますわ!

まとりくれあ さま、
本当にご多忙な中、わざわざお目通しくださり、ご丁寧なレビューまで頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
【真実の香り】、まさしくキムチには何ものも寄せ付けぬ、強烈な香りのパワーが秘められております。 醗酵食品なくしては語れぬ本作、お身体に臭いが染みついておられぬか、心配申し上げております。
猟奇、と申しましても今作は “ 香り ” に重点をおかしていただきました。読み取ってくだすって嬉しい♡
心より御礼申し上げます♬

一矢射的 さま、
「夢」も「希望」も皆無の拙作をご覧いただき、望外なデビューまで、誠にありがとうございます!
かなり深層部まで読み解いてくださり、恐縮いたしております。
日本人のおもてなしの心……はてさて、どこまでが本音なのでしょうや。人さまの心のうちは、けしてわかりませぬ。
ゆえに文学なるものが読まれ、語られ、研究されておりましのでしょうねえ。ノーベル賞に、映画や音楽(あ、ボブ・ディランは音楽家でした)がないのはそんな理由もなきにしもあらずや、でしょうか。
心より御礼申し上げます♡

3件のコメント

  • つばきお姉様

    ライオンがしばしカクヨム様を留守にしている間に、まあ! 涼ノ宮兄弟が登場していたなんて!
    わたくし、さっそく、うっかりお姉様の術にはまり、涼ノ宮兄弟を読み直してしまったではございませんか!

    おや? 中林りいさ様とは?
    気になりますわ。

    続きをお待ちしていますわ(* >ω<)
  • あらあら、そんなに駆け足でいらっしゃらなくても、よございますのに。
    こんにちは、ライオンちゃん♬

    ま、術中だなんて。おほほっ!
    してやったり、でございますわね。
    いえいえ、ありがとうございます♡

    中林りいさ……またもや、わたくしの予想外のキャラクターが登場してしまいました。ホントは可愛いい普通の女の子と、いわゆる『恋愛もの』として描こうとしておりましたのに。
    なぜ、なぜわたくしは、マトモなお話を描けないのか、自問自答しておりますの……

    まねちゃん、いい感じですわね♬
    お楽しみですわ〜!
  • あらっ、薔薇の香りが……
    いらっしゃいませ、まとりくれあさま♬

    つ、つばき姫!
    姫だなんて、わたくしどうしたらよろしいのかしら、オロオロしてしまいます。でも、なんだか嬉しい♡

    御作、とても丁寧な描写でキャラクターの心情や情景を描かれていて、とても勉強になりました。ありがとうございます!

    独特の世界観は、あくまで物語だけですのよ。わたくしは、いたって普通の乙女でございますゆえ。

    遠方までお運びくだすって、本当にありがとうございます♡
    こちらこそ、お世話になります♬
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