町内のいたるところに、ハロウィンの飾り付けが施されております。
人は、なんだかんだと飾るのが好きなのでございますわねえ。
回覧板によりますと、子供会からのお願いがございました。ようは子供たちが仮装してお宅を訪問するので、お菓子などを用意されたし、ってことです。あい、わかりました。
わたくしは得意としておりますクッキーを焼いて、いつ子供たちが来てもいいように準備は万端でございます。
夕方、日没前後の時間帯でございます。
玄関のノッカーを叩く音が聞こえました。
「は~い、ただいま~」
わたくしは小走りで玄関まで。
ガチャリッとドアを開けますと、そこには十人くらいのお子さまたちが仮装して立っていました。
魔法使い、吸血鬼、アニメのキャラなど可愛らしい衣装に身を包み、全員手にした籠を差し出します。
「トリック、オア、トリート~!」
「はいはい、わかりました。ちょっと待っててね」
わたくしは笑顔を振りまきながら、キッチンへ向かいました。
~♡♡~
「ここのおばさん、いっつも手焼きのクッキーだけどさ。砂糖やバターをケチってんのか、美味しくないんだよね」
「そうそう。ママが言ってたけど、まだ独身らしいわよあのオバン」
「へえ、だったらボクがもらってあげても、いいけどな」
「あんなオバさんが好みなの? ちょっと引いちゃうわね、その発言」
「お母さんよりは若いだろ。それにこんな豪邸に住んでるんだったら、間違いなく金持ちじゃん」
「はは~ん、お金目当てか!」
「無論だよ。他に理由はないさ。一生遊んで暮らすってのがボクの夢なんだからね」
~♡♡~
わたくしがクッキーを乗せた大皿を持って玄関にもどりますと、「ワーイ、クッキーだ」「美味しそう」などと口々にお子さまたちが歓声をあげてくれます。
「綺麗なおねえさん、ありがとう!」
「わたしも大きくなったら、おねえさんみたいな美人になれるかなあ」
などと純真無垢な言葉に、わたくしは満面の笑みを返します。
お子さまって、本当に正直だこと。
それぞれのカゴにクッキーを入れてあげますと、お子さまたちは一斉に頭を下げてお隣に向かいました。
しばらくして、またもやノッカーの音。
どなたかしら?
「は~い、お待ちくださいな~」
わたくしは再び小走りで玄関へ。
ガチャリッとドアを開けますと、そこには十人くらいのお子さまたちが仮装して立っていました。
ちょっと待って。先ほどと同じパターンよ。
ただよ~く見ますれば、仮装が違うのです。
子泣き爺に、砂かけ婆、河童にぬらりひょん……洋ではなく和?
すると先頭に立つ赤鬼姿の小さなお子さまが、「と、とっくり? おらあ、とっとっりだぁ!」としわがれた声で叫びました。
はあっ?
すると後ろの砂かけ姿の女の子が、「ちょっと、トメさん、違う違う。とっとりじゃなくて、しまねよっ」と同じような年季の入った声で囁きました。
はは~ん、わたくしは察しましたの。
「あらぁ、いらっしゃいな、ぼくたちおじょうちゃんたち。ハロウィンですわよねえ。ハロウィンは “お子さま” だけの特別な日なのは、もちろんご存知かしら」
「お、おう! その、はろ~なんちゃらだわい。わしらは、ご覧のとおり、小学生じゃ。だからお菓子をいただく権利を持っておるわい」
「おねえさんの質問に答えられたら、お菓子をさしあげま~す。
では、ぬらりひょんの、ぼく。あなたのお生まれは?」
「わしゃあ、大正十三――」
すかさず砂かけ婆が、ぬらりひょんの足を踏むのが見えました。
「あいたっ! ああん? ああっ! え~っとじゃなあ。確か平成十六年の三月三日だったかいな、タケシの誕生日は、ばあさんや」
子供会の次は、老人会の皆さまがたがお菓子をねだりにやってこられたのでした。
幾つになっても子ども心を忘れない。よきことでございます。
リビングにもどり、残ったクッキーをいただきましょう。
あらっ、美味しい♡
粉のついた指先を丁寧にねぶりながら、カクヨムさまをチェッ~ク。
あ、拙作「ひねもす漫研、オタクかな」にレビューをいただいておりますわ!
aoiaoi さま、
いつも大変お世話になっておりまする。この度貴重な睡眠のお時間を削ってまでご覧くださり、誠にありがとうございます!
ええ、私小説とございますように、97%は実話でございますのよ。
若干添加物が混入されておりますれど。
江川さま、実在のおかたです。お名前は、やや変えさせていただいております。
漫研部員は、マジに奇妙キテレツな人間が多ございますわ。わたくしなど、本当に普通の乙女からいたしますと。うふふ。
心より御礼申し上げます♡
お、拙作「THE☆騎士MEN」にレビューを頂戴いたしております!
銀鏡 怜尚 さま、
いつも大変お世話になっておりまする。ご新作をお手がけ中にも関わらずご覧くださいまして、誠にありがとうございます!
生まれ育ちました名古屋を、なんとか表舞台にと描き上げました。
いただいたレビューがあまりにも嬉しすぎまして、宙を仰いであふれる感涙を必死に堪えておりますの。
お★さま、3つも頂戴できますれば、つばきは狂喜乱舞でございます♡
心より御礼申し上げます♬