わたくしは、久しぶりに閻魔大王さまが経営される三途の川二丁目にございますスナックへ来ております。
もちろんここでは大王さまを、イリアママとお呼びしなければなりませぬ。
ショッキングピンクのタンクトップからは筋骨隆々の腕をこれみよがしにむき出され、カウンター内でグラスを磨いておられます。
その所作はとても美しゅうございますれど、なぜか小指をお立てになられ布巾でグラスを磨くお姿は、やはりあの大王さまからは想像がつきませぬ。
十人ほどが腰を下ろせるカウンター。
スツールのひとつに座り、わたくしはイリアママ特製のカクテル、 “ブラッディ・マリー・イリア風スペシャル” をいただいております。
ようは血の池地獄に見立てたカクテルで、ウオッカをトマトジュース割っております。
「スペシャルっていうのはね、ふふっ、ちょっぴりアレを混ぜているのよ」
と、五センチほどある付けまつ毛を、音を立てながらウインクされるイリアママ。
アレって、なんでございますのでしょう?
「それはね、キギョーヒミツよ、つばきちゃん。ウフッ」
いったい何が入れられておりますのか、ちょっとコワい。
でも、下からねめ上げるようにこちらをご覧になる、イリアママの目つきのほうが、もっとコワい。
カラン! と、入り口ドアに取り付けられた、シャレコウベのカウベルが鳴りました。
振り返りますと、そこにはヘビーメタルのロックミュージシャンが、かなり酔ったお姿でドアにもたれられております。
金髪の長い髪を立てられ、鋲を打ちこんだ黒い革ジャンを素肌に直接羽織っておられます。
お顔はかなり濃いお化粧をされ、目元などは殴られたかのようなブルーのシャドウ。お顔立ちはかなりハンサムでございます。
やや小さめの口元は、紫色のルージュを塗られておいでです。
ちょっとタイプかも♡
「あらぁ、ジョニーじゃないのぅ、いらっしゃ……あら、かなり出来上がってるみたいだわね」
ママはそのお客さまにお声を掛けながら、ギロリ大きな目元を向けられます。
「けへへっ、ま~だ酔っちゃあいませんよっと、くらあ」
明らかに酩酊されている雰囲気で、そのジョニーさんとやらが千鳥足で店内へ入ろうとされます。
カウンターから「エッ!」と驚く素早さでママが飛び出ると、ジョニーさんの目の前で腰に手を当て、威厳に満ちたお声で言われます。
「ウチのお店は酔っ払いはお断りよ!」
「い、いやぁママ、いっ、一杯でいいからさあ、飲ませてよ」
「ダ~メ!」
えーっと、ここはスナックですわよねえ。飲めばわたくしも酔いますのに。酔っぱらいはダメとは?
「頼むよぅ、ママ……ママ特製のあのカクテルさあ、一口でもいいから飲ませてよう。
一度あのカクテルを味わっちゃうと、き、禁断症状が……」
ゲッ! ま、まさかこのカクテルって、そんなにヤバイ代物だったの!
「どっちにしても、アンタはお断りよ! さっさとお帰り!」
ママは腕の筋肉を膨れ上がらせますと、ジョニーさまの首根っこをつかみ、まるで粗大ごみを放るかのように外へ叩きだしました。
「ごめんなさいねえ、つばきちゃん。あの酔っ払いめ、二度と来れないようにしなきゃ」
「マ、ママ、あのう少しおうかがいしたいのです!」
「ああ、あのジョニーね。オフの時はああいう格好で、小うるさい音楽活動してんのよ。ロックっていうのかしら。
うん?
そうよ、あの子はジョニーって呼ぶんだけど、本名は弥勒菩薩よ。
変成王(へんじょうおう)っていう地獄を統べる十王のひとりなのにさあ。酔ったらタチが悪いのよ。普段はとても心優しい子なんだけど」
い、いえいえ、弥勒菩薩さまがオフの時にジョニーさまにおなりになるのは、この際よございます。
それよりも、わたくしがいただいておりますこのカクテル……いったい何がブレンドされておりますの~っ!!
わたくしは目の前の真っ赤な液体から、切れ長二重の目を伏せますとスマホでカクヨムさまをチェックいたします。
あ……もう一口飲みたい……やばっ!
なんと、拙作「明日に奏でる草笛の音」にレビューとお★さまをいただいておりまする! げ、幻覚?
@imatakei さま、
大変ご無沙汰いたしております。この度はご覧くださり、しかもレビューまで頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
書籍化など夢の夢、わたくしなどこうしてwebでアップいただくだけでも嬉しゅうございますの。
「優しい希望の種」、ありがたきお言葉、つばきは嬉しい♡
お目汚しにならぬ程度の物語を今後も描きたいなどと、希望を膨らませております。
心より御礼申し上げます!
@youka_sangatsu さま、
どうも初めまして!
ご多忙の中、わざわざご覧くださり誠にありがとうございます!
お★さまを活性剤として、わたくしなりのお話を紡いでいきとうございます。
心より御礼申し上げます。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます!