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レビュー御礼&御礼~「怪談師」

本日は我がお屋敷に、怪談師の蛇骨亭 雨賛狗斎(じゃこつてい うさんくさい)先生が遊びにいらしてます。

ボサボサ頭に口ひげがトレードマーク。
黒地に金色の髑髏をあしらった和服を着こなされており、いかにも妖しげな雰囲気をかもし出されておいでです。

真夏の怪談ライブで全国を周られ、ようやくお手すきになったとのことでお手土産にいただいたエクレアをお茶請けにいたしまして、リビングにて歓談しておりますのよ。

「それでアタシはね、シーンと静まり返った会場を、こうやってゆっくりと客席をなめるように見渡しましてね。
もちろんライティングも大事ですから、サゲ(オチ)の前にはBGMもストップさせ、ピンスポットをアタシだけに向けるんですよ。

千五百人は超える満員の会場で、お客さんたちは固唾を飲んで微動だにしません。

この間が大事でしてね。早くても遅くてもいけない。
必ず『ここだ!』ってえ、キモがあるんですなあ。

で、その瞬間、アタシは『おまえの後ろにいる~っ!』と座っていた椅子から立ち上がって会場を指さしながら叫ぶんです。

『ヒ~ッ!』とか『ギャ~ッ!』なんてえ悲鳴が会場に響き渡って、アタシのライブは終了するんですよ。

まあ、あなた、この絶叫を全身に浴びた時に、怪談師としての満足感に浸れるってえわけですな。

夏場はアタシらの稼ぎ時ですから、ライブ終了後はすぐに次の開催場へ向かわなくっちゃあいけません。

その日は一本目が二十時に終わって、すぐにタクシーに乗ると、そこから一時間弱かけて二本目のライブ会場へ向かいました。
ライブは二十一時半からですんでね、まあ綱渡りみたいな危なっかしい掛け持ちですわ。

アタシのマネージャーは終了した会場で興行主さんとやりとりして、後から次の会場へ飛んでくるってえ段取りだったんですよ。

次の会場もありがたいことに満員御礼ですわ。と言っても、小規模なホールでしたから、お客さんが満杯に入っても三百人ってとこです。
アタシは得意ネタを、次々と披露していきます。
お客さんたちもよく心得たもんで、悲鳴の上げるタイミングもバッチリなんですな。

で、いよいよラストになりまして、先ほどと同じように頃合いを見計らって『おまえの後ろにいる~っ!』とアタシは立ち上がったんですよ。

ところが、ところがですよ。会場から悲鳴が上がらない。シーンと静まり返ったままなんですなあ。
このラストの演題は「墓場から憑いてくる」ってえ、アタシの十八番(オハコ)でしてね。どこでやっても必ず絶叫が上がる、それゃあコワい話なんですけどね。

先ほどまで、あれだけ気持ちよく絶叫してくれたのに……

まあ、たまにあるんですよ、こういうことが。

アタシはさすがにライブを二本もやって疲労困憊でしたから、シーンとなった会場で一礼して楽屋にもどったわけですな。
ところがマネージャーがまだ来ていないわけですよ。何やってんだ、ってアタシは携帯電話を取り出して怒り心頭で電話するわけです。ライブはやっぱりラストが盛り上がらないと、演者としては非常に歯がゆいもんですからね。

はた迷惑なのはアタシのイライラを受けなきゃならないマネージャーなんですが、まあそれもお仕事ですから。

ようやく電話に出たマネージャーを怒鳴ろうとした時に、いきなりマネージャーがアタシに怒声をあびせてきたんです。
先生、どこへ逃避行されてるんですか!  ってね。
おまえさんこそナニ言ってんだ。こっちはもうライブも終わって、おまえさんを待ってるんだって言ってやったんですよ。

そうしますと、マネージャーが驚いたような声で訊いてくるんです。
先生、どこにいるんですかって。
おまえさんねえ、マネージャーならしっかりしておくれ。アタシは次の会場へ来て、もうライブをやっちゃったんだよ。

マネージャーはゴクリと生唾を飲み込んで、こう言うんです。
先生、待たせてたタクシーにも乗らずにどこへ行って、今なにをやってるんですかって。

ちょ、ちょっと待っておくれよ。
アタシはふと顔を上げますとね、今の今まで楽屋にいたと思っておりましたのにね、いつのまにやら朽ち果てたような納屋の中に独りで立ってたんですよ。
天井から吊るされた裸電球が、チーカチカまたたいているんですな。あわてて壊れた木のドアを開けて外へ飛び出すと、なんとそこは墓場のど真ん中だったんですよ」

ヒエ~ッ!  わたくしはあられもない悲鳴を上げて、あやうく気絶するところでございました。
わたくしに怪談を聴かせるなんて、やめてくださいまし。

遠くなりかけた意識を呼び戻そうと、わたくしはスマホでカクヨムさまをチェックいたします。

マッ!  拙作「予想外な涼ノ宮兄弟に」レビューとお★さまをいただいておりますわ!
これは幻覚ではございませんわね?

天宮詩音さま、
初めまして。この度はご覧くださり、またお★さまをお付けくだすって誠にありがとうございます!
嬉しい♡
他のおかたが紡がれる物語と趣がやや異なっておりますれど、いかがでございましたでしょうか?
今後ともよろしくお願い申し上げます!

白里りこさま、
貴重なお時間を拙作に費やしてくだすって、誠にありがとうございます!
かなり精神疲労なさっておいでのご様子、つばきはとても心配申し上げております。予想外、確かにわたくしもこのような物語になりますとは、考えもしませんなんだ。自分がコワい……
平素はとてもおしとやかなる乙女でございますのよ。うふふ。
今後ともよろしくお願い申し上げます♡

かいしげるさま、
ご無沙汰いたしております。この度はご丁寧なレビューを頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
読了後に、うすら寒さをお感じになりましたのでしょうか?
お風邪?
それとも拙作のせい?
パワフルな、とお褒め賜り、つばきは喜びもひとしおでございます♡
今後ともよろしくお願い申し上げます♬

4件のコメント

  • 高尾つばき様

    コメントありがとうございます。
    お気遣い感謝します。お陰様で、類稀なる読書経験により昂った気持ちも、だいぶ落ち着きました(笑)
    こちらこそ、今後ともよろしくお願いします!
  • まあっ、りこさま(などと気安くお呼びしても、よろしかったかしら?)こんな遠方まで徒歩でいらっしゃるなんて、危険でございますわよ!
    特にこの町内には妖魔はもちろん、サーカスから逃げ出した猛獣たちがコミュニティを公園内に作っておりますゆえ。

    でも嬉しい♡
    すこ~しだけ描く作風は変わってはおりますれど、わたくしはいたって平凡な、どこにでもいる乙女でございます。
    お慣れになりますれば、けして危険な人物ではございませぬ。
    人畜無害、でございます♬

    そうそう、今度いらした時には、淹れたてのアイスティをご馳走いたしませぬと、ですわね。
    美味、でございますのよ。
    ただ一度でも飲まれますと、もうこのアイスティなしではいられなくなる禁断症状が出てしまいますのが、ちょっぴり難点。

    お気軽にいつでもいらしてくださいまし。
    あっ、くれぐれも重武装でと、一言ご注意をば。
  • つばき様

    こちらは魔の巣窟だったのですね、気づきませんでした。危ない目に遭ってしまいました。
    しかし今回は、手榴弾その他を隠し持って参りましたのでご心配なく!
    そして、例のアイスティ、また、飲ませて下さいね……ええ、次回も少しばかり目を離して下さると助かります。また中身をすり替──何でもございません。


    自分でもノリが分からなくなってきましたので、この辺りで失礼させていただきます。その前に、御礼だけ言わせて下さい。
    拙著『ヘウムノに通ずる道』へのお星様、レビュー、応援、フォローをありがとうございました。こんなに沢山いただけるなんて、驚きました。感謝してもしきれません!
    レビューのお言葉にも大変元気づけられました。
    ありがとうございました。

  • おはようございま〜す!

    今日もお腹から大きな声を出してご挨拶。
    わたくしはノリのみで生きておりますゆえ、お好きな時にお好きなようにおノリくださいな。うふふ。

    御作、わたくしは衝撃を脳天にくらってしまいました!
    何故もっと早く出会わなかったのかと、地団駄を三三七拍子で踏んでおりますのよ。
    こちらこそ新たな世界にいざなってくだすって、ありがとうございます。

    あっ、どうぞわたくしのことは、つばきとお呼びくださいまし。様などは似合いませぬゆえ。
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