わたくしはこの世に生を受けまして以来、一度も口にいたしたことがございませんの、 “ハンバーガー” なるものを。
テレビやネットでのコマーシャルをば拝見いたしますと、どうやら大半の国民の皆さまは、こぞってお召し上がりになっておられるようでございますわね。
近ごろでは季節の限定品、であるとか映画やアニメとのタイアップで景品がついてきたりと、さまざまな商法が生み出されておりますのにはビックリでございます。
町内にも一軒ございますゆえ、好奇心旺盛なわたくしは十日ほど食事を制限いたしまして、チャレンジに備えます。
なぜとお聴きですの?
ハンバーガーなるもののカロリーたるや、一個で成人女性が摂取いたしますおよそ一ヶ月分含有しているってご存じなくて?
約4万カロリーほどあるらしいではございませんか、ハンバーガーひとつで。
それをあなた、毎日食しますれば、十日で40万カロリー、三十日で120万カロリーよ。
ざっと計算いたしますと、約三年間分のカロリーを一ヶ月で摂取……
クラリ、と眩暈が。
えっ? それほどのカロリーはございませんって?
それをうかがいまして、ホッと一安心のつばきでございます。
チャレンジ当日、ねじり鉢巻きで、いざ参らん!
お店の中はまるで遊園地。楽しげな飾り付けに陽気なBGMが流れております。想像しておりました西部劇のイメージが一転しました。
やはりお若いかたが多ございますわねえ。
「らっしゃーせっ! はい、ご新規いっちめいさま~」
カウンターから威勢の良いお声がかかりました。あらっ、居酒屋?
「ごっ注文を、うっけたまわりま~すっ」
巻き舌でカウンター内に立っておられますのは、もしや力士のおかたかしら。本場所のない時は、こうしてアルバイトを……
失礼いたしました。女性におかたでしたわ。
制服のボタンがはち切れそう。体型に合わせた制服の用意はございませんのでしょうか。
黒縁の眼鏡に、絵本に出てくる金太郎さまのようなヘアスタイル。
巨大な樽に、ボンレスハムを組み合わせたような容姿の女性店員さまです。お顔が、デカイ!
わたくしの切れ長二重の目は、ハラハラしながら制服のボタンを見つめます。断崖絶壁で、強風にあおられているママチャリば想像いたしましたの。風前の灯火、ボタン。
「あーっとぉ、店内でおっ召しあがりっすかあ」
「えっ、ええ。そうですわね」
店員さまは、アイブローパウダーで描かれました眉と同じくらいの細い目で、わたくしを睨まれます。結構コワいわ。
「ごっ注文は、いかがしやっしょう」
ええっと、ええっと、わたくしは不慣れなため壁に貼られたメニューやら、カウンターに下敷きのように置いてあるメニューを何度も確認いたします。
「チッ! たっだいまぁ、こちらのセットがおっ薦めっす」
今このおかた、間違いなく舌打ちされたわよね。チッ、て。
ただわたくしの後ろにすでに他のおかたが並ばれております。
意趣返しは後にいたしまして、早くメニューを決めねばなりませぬ。
お薦めのセットなるものは、ハンバーガーのパテが5枚。ご、5枚?
しかもパンが通常の三倍で、ポテトがXLサイズが二つ……
コーラにいたっては2リットルサイズのペットボトルよ!
わたくし、これを万が一にも胃の腑へ収めましたならば、数カ月は断食せねばなりませぬ。
「んじゃあ、このセットでよろし~っすか」
「い、いえいえお待ちになって! こんなに食しきれませんわ」
「大丈夫っすよ、これくらい。アタイも毎日まかないでこれを食ってますっし」
だからイヤなのですわよ、あなたみたいな力士体型になりますのは。
「で、ではこちらの一番シンプルなハンバーガーと、アイスティのSサイズをば」
「ご一緒に、ポテト、いかがっすかあ。今ならSサイズのお値段で、
XLサイズに変更できまっす」
「あいすみませぬ。ポテ、ポテトは結構で」
「一緒に食ったほうが、美味いっすよう、マジで」
「いえ、マジで結構でございますゆえ」
店員さまは再び、チッと舌打ちをされまして、わたくしのオーダーを通されます。
やはりわたくしには絶対に合いませんわねえ、ハンバーガーは。
トレイに叩きつけるように注文いたしました品を載せ、「ったせえ!」と店員さまがわたくしに差し出します。
わたくしは客の身でありながら、平身低頭でトレイを受け取りまして空いております席へようやっと腰を下ろしました。
アイスティでまず乾いた喉を……色のついた水道水?
こんな時はカクヨムさまのチェックで、落ちつきませんとね。
まあっ、拙作「猟奇なガール」くわえまして「猟奇なドール」にお★さまを頂戴しているわ!
お★さまの増減は気になりますれど、またしても “カクヨム界のバミューダ・トライアングル” に巻き込まれたと自身を納得させます。
緋石E奈さま、
初めまして!
この度は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます!
二作続けてですと、かなりの精神疲労がございませんでしたでしょうか? お★さま、とっても嬉しい♡
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!