深夜の町内を、真紅のつむじ風が音もなく吹いていきます。
目にも止まらぬ速さで疾走しておりますのは、ご存じ心霊マイスター高尾つばきその人でありました。
これくらいの速度で走れば、イチローさまほどの動体視力をお持ちではない一般のおかたには見えないかも、ですわね。
でも走るのが目的ではございません。
今夜もどこかで妖魔が、悪さをするために出没するはず。
お星さま(お★さま、ではございません)を散りばめた天空には、巨大な満月が淡い色を放っております。
わたくしの研ぎ澄まされた第六巻が、チリリッと毛羽立ちました。
むっ、この気配は……
いた、いましたわ!
満月をバックに、あるお家の三階建ての屋根上で立ちはだかる影がひとつ。
わたくしは駆けながら、ヘルメットのゴーグルを操作いたします。
暗視機能に加え、望遠レンズにもなりますのよ。
焦点が素早く対象物に合わされました。
拡大された影。
屋根の上には、ヘルメットにレオタード、しかもスーパーロングブーツを履いた……
ちょっとお待ちになって。
言葉で解説していきますと、それって……わたくし? エ~ッ!
などとあられもない悲鳴を上げながらも、わたくしのカモシカのような長い脚は凄いスピードで走ります。
その間、わたくしの視線は「わたくし」から離れず、注視いたしております。
「わたくし」はなにやら大きな荷物を背負っておいでです。
片方の腕が振られました。キラリ、と一瞬反射いたします。
「わたくし」は両腕を引っ張るように何かを確認すると、あろうことか、いきなり宙に舞ったのです。
こちらのわたくしには、そんな芸当はできやしません。
消えた直後、ドスーンッと物が落ちる音が聴こえました。
わたくしは区画の角を素早く回り、音の発生した現場に到着いたしました。
そこには、「わたくし」が地面に寝転がっていたのです。
月明かりに浮かぶわたくしと「わたくし」
いえっ、「わたくし」はどう見ましてもわたくしとは程遠いお姿でした。
ヘルメットは黄色地に緑の線で縁どられ、正面には「安全」とプリントされています。
レオタード・タイプのボディアーマーではなく、胸元には白い布が縫い込まれて「2-B えんどう」とマジックで書かれています。
これって、正真正銘、スクール水着ではありませんか!
しかも足元にはブーツではなく、農作業で使用される、ビニール製の長靴。
ハッ、まさかこのおかたこそが、あの謎の怪人!
「あいたたたーっ」
目の前で尻餅をついた姿勢で怪人が声を上げました。
おじいさま?
「やれやれ、わしの腕も落ちたもんじゃのう」
「も、もしもし、おじいさま?」
「おや、こんなところに姿見の鏡があるわい」
「いえいえっ、どう見ても同じじゃございませんでしょ」
「はて、わしも腹話術は得意じゃったが、こんな高い声など出たかいなあ」
「かいなあ、ではございません! おじいさま、大丈夫でございますの? あんな屋根から、スッ転げ落ちられて」
「いやいや、もうわしはこれ以上は飲めんよ、お若いの。あとは手酌でやってくれたまえ」
「はっ? もしや打ち所が悪くていらっしゃるのでしょうか」
わたくしはマジに心配するのでございますが、この後、驚天動地の幕が開きますの。
わたくしは謎のおじいさまを見下ろしながらも、突然カクヨムさまをチェック。ああ、すっかりスマホ中毒よ。
あらまあっ、拙作「猟奇なガール」にレビューとお★さまが!
Zooey(ゾーイー) さま、
初めまして!
この度はご多忙の中を、わざわざご覧くださり、また素晴らしいレビューを頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
化学反応、なんだかカッコよい響きでございますわねえ。
猟奇ストのネタは、それこそ猟奇。まだまだご存じない闇の世界が待っておりますわよ。
そんなにお褒めくださるなんて、つばきは嬉しい♡
今後とも、どうぞ宜しくお願い申し上げます!
@Kristenさま、
初めまして!
ご覧くだすったのは深夜、でございましょうか。お★さまをいただけたこと、とても嬉しゅうございます。
本当にありがとうございます!