聴いて下さるかしら。
わたくしは、今、自分の作戦に酔いしれておりますの。
以前から申しておりますように、わたくしは心霊マイスターといたしまして、町内に湧いて出ます妖魔討伐を人知れず行っております。
いわば人助け、でございますわね。
もちろんどなたからも退治料はおろか、お礼さえいただいておりませぬ。
これは神がわたくしに与えたもうた人智を超える力ですからして、ボランティアで行うのは当然でございます。
ただ、ひとつだけ。
さようでございますの。わたくしがボディアーマーを装着いたしまして深夜の町内をパトロールしております姿が、いつのまにやら「スクール水着に長靴姿の真っ赤な怪人」として、心外な噂が流布されておりますこと。
自転車は、キーキーと音がうるさいからダメ。
一輪車は夜間灯が装備されておりませぬゆえ、安全のために松明を灯しながらでもダメ。
徒歩ですと、もっとダメ。
つばきの灰色の脳髄は、スーパーコンピューター「京」なみに高速演算いたしました。
カタカタ、ピンッ! こ、これはグッドアイデアですわ!
わたくしは庭園にて作業をいたしまして、深夜二時を待ちましたの。
そして用意致しました秘密兵器を使用いたすために、屋敷の二階バルコニーに出ます。
もちろん真紅のヘルメット、レオタード・タイプのボディアーマー、スーパーロングブーツ姿でございます。
バルコニーには秘密兵器が出番を待つかのように、立てかけられております。
ええ、それは竹馬、でございますの。
長さ十メートルを超える二本の竹を切りだして、作成いたしました。
この高さからなら妖魔の姿を捉えることも、またパトロール中のお巡さまからもわたくしの姿は見えないはず。
よっこらしょ、などとババくさい掛け声とともにブーツの先端を足止めに乗せ、さあっ出動よ!
カッコン、カッコンと竹馬を操りながら帳の下りました町内を巡回いたします。
よい眺めですわねえ。
ムムッ、公園の先になにやら蠢いている影が。
どうやら妖魔のようですわね。
カッコンッカッコンッカッコンッカッコンッ!
わたくしは走ります!
カッコンッカッコンッカッコンッカッコンッ!
お待ちなさいな! 闇に生きし、ヒトさまに悪さを働く不逞な輩!
このわたくしが成敗してくれましょうぞ!
わたくしは青白く輝く化け物の十メートルほど手前から叫び、そのまま竹馬を地上目がけて倒します。
ゆっくりと弧を描きながら竹馬が大地と水平になった時、わたくしは華麗に一回転してダッと地面に立ちました。
さあ、心霊マイスターの聖なる平手打ちをくらいなさいな!
妖魔はビビッてされるがままにわたくしの折檻を受けました。
これに懲りたら、二度と現れるのではありませんことよ。
妖魔はわたくしの慈悲なる言葉にひれ伏すと、闇にとけいるように姿を消しましたわ。
一件落着。
さあ、次よ。
わたくしは地面に寝かせてある秘密兵器を真っ直ぐに立てます。
……ちょっとお待ちになって。
ええっと、足止めは遥か上空十メートルの位置よね。どうやって登ったらよろしいのかしら?
まさかご近所さまを叩き起こして、「竹馬に乗りたいので、お二階を拝借できませんかしら」などとお願いするのは、ちとまずいわね。
一一〇番通報確定ですわ。
わたくしは仕方なく、二本の超ロングな竹を引きづりながら、再び屋敷に戻ることに。
これって途中でどなたかに発見されたら、またしてもあらぬ噂が広まりますわねえ。
「スクール水着に長靴姿の怪人、今度は不気味な竹竿をズルズル引きずって徘徊している」などと。
もう一度出動する元気を失いましたわたくしは、とりあえずソファに背を預け、アイスティで乾いた喉を潤しながらカクヨムさまをチェックいたします。
こ、これは……拙作「THE☆騎士MEN」にレビューを頂戴しているではありませんか!
RAYちゃん、
超超ご多忙なのに、まさか拙作をお読みくださるなんて……
わたくしは切れ長二重の目元から大粒の涙を、西洋人と見まごう高い鼻梁の先端からは鼻水を、妖艶な真紅のルージュで彩られた小さな口元からは涎を、意思とは無関係に垂れ流しておりまする。
ありがとうございます!
無茶苦茶嬉しい♡
心より御礼申し上げます!
本当に、死ぬほどお暇な時でよろしくてよ。
つばきはいつも暇でございますゆえ♡