小学生の頃、音楽の時間で習いましたリコーダー。
わたくしがベーシストを目指すきっかけとなりました、一番最初の楽器でございますの。
#や♭の音階を覚えるのに、苦労をいたしましたけど。
でも元来音楽的才能に恵まれておりますためか(あいすみませぬ。自慢ではなく、事実、でございます)一度習得いたしますと、後はたいていの楽曲を奏でられるようになりました。
「トルコ行進曲」や「ウイリアム・テル序曲」などの勇ましい楽曲や、「G線上のアリア」や「くるみ割り人形」に代表されますクラシックの名曲はお手の物。
演歌や宗教音楽にいたるまで、パーフェクトにリコーダーで表現いたしますのよ。
ただひとつ疑問がございました。
よく世間で言われております「男子は好きな女子のリコーダーを盗んで、こっそりと吹いて楽しむ」、これでございます。
わたくしは授業が終わって帰宅する前に、自分のリコーダーをわざと自分の机の上に垂直に立てておくのが常でございました。
この頃より、殿方には無駄な作業をさせぬよう、気配りの乙女でしたの。
帰るふりをして、教室後方の掃除道具を入れたロッカーに潜みます。一晩過ごすことなど、いとわなかったわ。
今日はどの男子がわたくしのリコーダーを、恥じらいながらお手にとられるのか、と最小限の呼吸のみで石のように固まって、当時より切れ長二重であった大きな瞳で観察いたしておりました。
結局小学生時代、中学生時代、一度もどなたも、わたくしのリコーダーをお手にする男子はおられませなんだ。
やはり恥ずかしさが優先するのでしょうか。
わたくしの詳細に記録いたしました観察日記を確認いたしますと、わたくし以外の女子は全員(全員ですの)、いずれかの男子生徒にリコーダーを弄ばされていたとあります。
それほど男子生徒の間では高嶺の花でありましたのでしょうか、わたくしって。
どこにでもいる普通の(ちょっぴり見栄えの良い)乙女ですのに。
今でも町内をお散歩いたしますおりなど、愛用のリコーダーを奏でながらゆっくりと景色を満喫いたします。
わたくしの華麗なる演奏の邪魔をすまい、と思われるのでしょうか。
反対側から歩いて来られるかたがたは一瞬立ち止まられ、わたくしを遠巻きにしながら緊張の眼差しを向けてこられますのよ。
そんな、プロの演奏ではございませんのに。うふふ。
この頃では吹きながら歩いておりますと、なぜかわたくしの後方に、どこから現れるのか大量の虫さんたちがついて参ります。
まるでブレーメンの音楽隊のよう。
今日も蠅さん、百足さん、ゴキブリさんなどの虫さん数百匹を従えて、町内を一周いたします。
ピ~ッピッピッピ~♪
さすがに息が切れるわ。少し休憩よ。
わたくしはたすき掛けにした水筒から、アイスティをいただきます。
周囲を虫さんたちに囲まれながら、カクヨムさまをチェック!
ピ~ッピッピッピ~♪
あらまあっ、拙作「明日に奏でる草笛の音」にレビューを頂戴しておりますわ!
関川 二尋さま、
いつもご多忙の中、誠にありがとうございます!
この物語は最後の一行に、わたくしはマジに、いえっ、本当に魂をかけて挑みましたの。
そこを読み取ってくだすって、つばきは思わず宙を仰ぎ、切れ長二重の目元から感涙を一筋……
猟奇ストではございますれど、この物語はつばきが渾身を込めて書き上げました。
重ねがさね、御礼申し上げます!