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レビュー御礼~「空港にて」

わたくし、本日は研究のためにセントレアへ来ております。
えっ?  ナニの研究かとお聴きでございますのかしら。
もちろん出国するために、例の保安検査場をいかにクリアするか、ですわ。

ロビーの長椅子を朝から陣取りまして、通り過ぎゆく旅行客の皆さまを観察いたします。

「ここは、あいてますかぁ?  どうぞぅ」

いきなり声を掛けられ、双眼鏡で観察しておりましたわたくしは、そのまま顔を向けます。
ドアップに写る西洋の若い殿方。ちょいハンサム。

「は、はいはい、空いておりますゆえ」

わたくしは双眼鏡を膝元に置き、隣の席を指さしましたの。

「おう、うれしいですかぁ、   どうぞぅ」

いわゆるバックパッカーと呼ばれる、旅人のようでございます。
白いTシャツには “熱湯”とプリントされており、紺色の膝丈パンツに大きなリュックを手にされておいでです。
ね、熱湯?
温泉好きの外人さんかしら……

わたくしは再び双眼鏡を持ち上げて、周囲を観察し始めます。

「あのう、えーっとぉ、あなたはぁ、すめし?  すこんぶ?  
そうそう、ちんすこう!  どうぞぅ」

「はっ?  わたくしは酢飯でも酢昆布でも、ましてやチンスコウなる沖縄銘菓、食べ物ではございませんわ」

「ノーノー、そうです。 アッハハハーッ!  どうぞぅ」

高笑いされると、なにやらわたくしが小馬鹿にされたような、少しイラッとしてしまいましたの。
言葉の語尾の「どうぞぅ」って、無線で日本語を教習されたのでしょうかしら。

「……なにか、わたくしにご用でも」

「せいかいっ!  ワンダフーッ!  フーッ!  
すこし、いいですかぁ、でしたなあ  どうぞぅ」

「えーっと、何かしら」

わたくしは得体の知れぬ異国人を、油断なく見つめながら訊きます。

青い目の殿方はいきなり立ち上がり、Tシャツの裾をバッと両手でまくり上げたのです。

はっ!  
これは異国人を装った、新手の性犯罪者!

わたくしはすかさず臨戦態勢に移れるように、中腰になろうとしましたの。
ところが、わたくしの切れ長二重の目が、そのお腹部分に釘付けになったのです。

「そ、それはっ!  もしや」

「わたしーっ、どひょーいり、ノウ、でしいり、  どうぞぅ」

「ど、土俵入り?  ではなく、で、弟子入り?」

「せいかいっ!  ワンダフーッ!  フーッ!  どうぞぅ」

「お気は、確かなのかしら」

「ワッハッハッハーッ!  せいかいっ!  ワンダフーッ!  フーッ!  どうぞぅ」

異国の若者のお腹には、どこで手に入れられたのか、マワシ、ではなく、あの仮面ラ〇ダーの変身ベルトが巻かれていましたの。

「わたしーっの、くにはぁ、いま、デスト〇ンに、てごめにされ、   どうぞぅ」

「あなたさまのお国が、デ、デス〇ロン?」

「わたしーっは、からだをこうさく、わかりますかぁ?  
トンテンカン、トンテンカン、   どうぞぅ」

「工作?  でございましょうか。つまり、あなたさまはお身体を、改造されたと?  えーっ!」

「せいかいっ!  ワンダフーッ!  フーッ!  どうぞぅ」

「まさか。アレはテレビの中の作り話……」

そこまで言いかけた時です。突然、野太いバスボイスが。

「いやあ、待っていたよ、デビッド」

「おう!  せんせいっ  どうぞぅ!」

目の前に、なんとあの藤〇弘にそっくり、いえ、瓜二つの殿方が現れたのです。
しかも召されているジャケットの内側には、これまた変身ベルトをお巻きに。

えっ?
ま、まさか、仮面〇イダーって実話でしたの?
あれは正義の改造人間と悪の組織が戦う、ドキュメンタリー番組だったってことかしら。

お二人はガッチリと固い握手をされ、すかさず変身!  のポーズを取られました。

「いたぞ! あそこだ!」

大きな声が上がり、ロビー奥のほうから白衣姿のおかた数名が、血相を変えて走って来られます。

「うむっ、デビッドよ、敵さんが登場したようだ」

「せんせいっ、ここで、へんしーんしてぇ、たたかおうおうぉぅ、   どうぞぅ」

「いや、ここにいる人々を巻き込むわけにはいかないぜ。
よし、ついてこいデビッド!  
ひとけのない場所まで奴らを誘導する」

お二人は鋭い眼差しで向かってくる白衣の集団を睨み、わたくしに向かって親指を立て、そのままダッと走り出しましたの。

「待てーっ!」

どう見ても悪の組織の戦闘員というよりも、病院関係者と思われる白衣のかたがたは、必死の形相でお二人の後を追いかけていきます。
はて、いったいあのお二人は本物の改造人間だったのかしら? 
それとも……

わたくしは小首を傾げながら、自身がここへ何しに来ていたのかを、すっかり失念しております。
そんな時はティータイム。
今日は目立たぬよう、こうして唐草模様の風呂敷にお茶セット一式を持参してきておりますの。

長椅子の横にゴザを敷きまして、キャンプ用の湯沸かし器で本格的に作りますのよ。うふふ。

お湯が沸くまで、カクヨムさまをチェック!

まあっ、拙作「猟奇なガール」にレビューをいただいているわ!

その時です。ダダッ!  と靴音を響かせながら数名の警備員のみなさまが走って来られるのに気づきました。
また物騒な事件かしら。

aoiaoiさま、
この度はお時間を費やしていただき誠にありがとうございます!
揺るぎない自信……さようでございますわねえ、なんと申しましても百二十パーセント、パーフェクトな女子つばめちゃんでございますゆえ。ぜひ機会がございましたら、またのぞいてやってくださいまし。

心より感謝申しあげ、えっ?  なんでしょう?  
わたくしでしょうか?   
わたくしは、ここで静かにお茶をって、なぜ?  なぜわたくしのティータイムをないがしろのしようとなさ、あっ、せっかく火を点けましたのに、もみ消しなさるなんて!
はっ?  別室へ来い、と仰いますの?

わたくしは急いで懐より煙玉を取りだし、警備員に囲まれながら「えいっ!」と破裂させます。
モウモウと立ち込める煙幕。
すかさずお茶道具一式を風呂敷に包んで、その場からトンズラいたします。

お読みくださった皆さま~っ、御礼申し上げま~す♡

2件のコメント

  • 高尾つばき さま

    「しいたけ~」を読んでいただいてありがとうございました。
    ええっと…高尾さん…で、すよね???
    あの、しっとりしたレビューをくださった、高尾さん…ですよね???
    もうすっかりやられてしまいました。
    なんて方なんでしょう。素晴らしいですね!
    近況ノート、そのままショートショートでアップしてもいいくらい。

    ずっとお名前だけ拝見していましたが、今日は新しい扉を開いてしまいました。きっと癖になってしまうと思います。
    「猟奇なガール」の彼女に、地味~な人がこっそりファンレターを置いていったとお伝えください。
  • 庭園にて、いつもの西洋鎧で完全防備いたしましての草むしり。
    ヒュンッ!
    鋭い音に続いて、目の前のクヌギの幹にカンッ!  と矢文が刺さりました。
    何者っ?  わたくしは注意深く矢から巻かれた紙をひろげます。

    まあっ、新樫さまからのお手紙だわ!
    あな嬉しや!

    御作、とても心温まるお話でございました。良い物語をありがとうございました。ああいうお話を紡がれるおかたって、とても素敵です♡

    わたくしの闇物語をご覧くださるのは、とても嬉しいのでございますれど、どうぞくれぐれもお気をつけくださいまし。
    後戻りできなくなるやもしれませんゆえ……

    お越しいただきまして、心より御礼申し上げます♡
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