この文章は、未来の、おそらくは来月あたりの自分自身に向けて書いてある。ちゃんと読めよ、来月の私。
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4ヶ月たったわけだが、目に見える進歩がない。何書いてるのか分からない、って毎回言われる。
仮説と解決策はこんなかんじ。
・短編で書くには、世界設定が複雑すぎる → 世界設定をシンプルに。
・設定した世界で展開される「物語」がおろそかすぎる。→ 人物(的なもの)を描く。
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以下は、上の仮説に至るまでの雑多なメモ。
毎回終わってから、言われたことの改善策を決めて、次の梗概を書くときのチェックリストにいれてる。でも、効果が出てない。
そもそも、って考えてみたところ、
・世界設定がだめ。
・世界の上で展開される物語がだめ。(工学的ストーリー創作なんたらって本より)
・コンセプト
・登場人物
・テーマ
・構成
・短編で書くには、物語が複雑すぎる
・梗概としての表現が下手
世界設定がダメな例は、前回の「ハローアリス」とか。リアリティレベルがアンバランスすぎる、と言われた。
物語がだめなの、構成がだめなのは、第一回の「慰安旅行」。外側世界と内側世界が相似なんだけど、だから?って感じになってる。今回の「ショートカット」も同じ問題がある。中と外がつながってない。法月輪太郎「ノックス・マシン」や麦原遼「無積の船」みたいにしたい。
テーマも曖昧だ。前半はテーマ設定あったんだけど、他の要素がひどすぎて、最近2回はほったらかしている。
全部に共通して、登場人物の行動原理が分からない、と言われる。「ハローアリス」が典型で、フィットネスアプリに誘導されたがる同期が分からない、と言われることが多かった。これはランナー、トライアスリートが欲しいと思っている、というハイコンテクストによりかかりすぎている。
で、つながるんだけど、短編で描くには、複雑だったり、必要な情報が多すぎたりする。フィットネスアプリもそう。「ショートカット」でも、制約充足問題の解法がベースになってるんだけど、抽象的すぎる。私の中では、解候補のバリデーションは、すなわちシミュレーション。解を見つけることは、多数のシミュレーション結果から、評価が最大になるようなパラメータ群を見つけること。そのためには、似たようなパラメータ群で何度も似たような計算が必要になりがちなこと。が、バックグラウンドにある。多い。多すぎる。この文章だけじゃ自分でも分からないだろ。来月の自分、分かるか?
もっとシンプルな話にするなり、エッセンスを抽出する必要がある。私は制約充足問題を教えてるわけではなくて、物語を書いてるんだから。
そして、上が全部できてたとして、梗概表現ができてない、という問題。「1200字では書ききれない」とか絶対にしないことにしている。ログライン、200字で三幕、400字で三幕八場、1200字で梗概、という順に書いてる。物語を膨らませていく、解像度をあげていってる。何が起こるか、どのように起こるか、なぜ起きるか、の順に書き足していってる。
設定は最初の方に書くようにしてる。んだけど、まあ、伝わってない。あと、下流で変更があったら、また上流に戻って更新するようにしている。
でも、このやり方がダメなのだ。
文章でログラインを書く「前に」、設計図が必要かも。ソフトウェアを書くときも、企画をするときも、改善策を打つときも、そうしてる。設計は多次元的で、文章はコードは最終的な表現なのだから、自分にとっては。
稲田さん推しなので、稲田さんの「外来種」と、私の「ショートカット」を比べてみる。あと、推しってだけじゃなくて、内容が比べやすいから。
「外来種」は、宇宙の陣取りゲームが、地球での陣取りゲームを内包している。
「ショートカット」は、宇宙が初期値問題で、牧場の生態系シミュレーションという初期値問題を内包している。
ほら、もういきなり、この差である。
陣取りゲームどうしなのは分かりやすい。初期値問題は抽象的で、物語で起こっていることより抽象的。たとえば、生態系シミュレーションを宇宙規模と牧場規模でやるとかなら、抽象レベルが揃うので分かりやすくなると思う。
世界設定自体がシンプルなぶん、外来種では「ガチで詣でるようになる」とか「ぽっと出の新参」みたいに、世界の上で展開される物語が生まれている。一方私のほうは登場人物の変化や行動原理を書く余地が少なくなっている。
登場人物について。外来種では、主人公が引きこもりの友達に対する感情を持っていて、解決しようとして行動し、外側に影響を与える。内的変化も物語に組み込まれている。
ショートカットでは、世界説明のコマのようになっている。世界設定が面白いならそれでいいんだけど、世界設定がややこしくしょぼいのに、登場人物の動きが見えない。それもこれも、世界設定が複雑すぎるからだ。
世界のヒミツの明かし方。
外来種では御神体が教えてくれる。藤井太洋「リンカーン〜」でも、未来の自分によって、何が起こっているかを教えてもらっている。麦原遼「無積の船」では、夢で見たことが、目の前で同じことが起こって、友人が解釈をしてくれる。「ノックス・マシン」でも、アカデミーというより専門的な知識を持っている集団が、謎を説明してくれる。
ショートカットでは誰も教えてくれなくて、世界内部の人間の気付きに依っている。これに説得力を持たせるのは、ちとむずい。特に短編では。
私はいつもこの「世界設定を説明する」のがとても下手だ。短編におさめるんだから、なんなら天下り的に、 givenな条件にしたほうがマシなくらいだ。第一期だたかな。のしもち型マルチバースとか、もう説明してしまってる。
そんなわけで「1200字の梗概で説明できるように、シンプルな世界設定をして、物語に字数を割く。」っていうのが、次にやることであろう。
もちろんこれは必要条件であって十分条件ではない。面白い面白くない以前に、何書いてんのか分からない、をさっさと卒業したいのだー。梗概の書き方にも難点があるけれど、その1つ前の段階に問題がある、ように思える。
あと私は文章でいきなり書いてはいけないのだと思う。たとえば私はツイッターに新機能が追加されたとき、そのピクセル自体はほとんど見ていない。ではなくて、その後ろにあるデータ構造を見ている。物語を読むときも。新しいビジネスを見るときも。だから、構造を先に考えるといいんだろうなって思った。文章にするのは、その後だ。
小浜先生が言ってた「価値観を疑う」ことができるのがSFのいいとこなんだし。不老不死の世界になったとき、寿命が原因となる問題が解決する。そのとき、どんな価値観が生まれたり、消えたりするのか。行動はどう変わるのか。倫理観は?などなど。
というわけで、来月の私、どうでしょうか?