<智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。>
福島は一度行ったきりで空の色に覚えはないのだが、違ったのだろうか。実際のところ、東京と北陸の空は別物だ。北陸の青空はいつも何かしら白く薄い膜を感じるが、太平洋側となれば高く遠く澄んだ青に見える。
北陸は総じて水田が多く湿度も高く、そのあたりが影響しているのではないか、という話も耳にした覚えがある。だが理由を突き詰める気はない。確かに空は違うということだ。「ほんと」が指すのがどちらかは人によるのだろうけれど。
揶揄するような言葉だとして最近は使われなくなったが、常々日本海側は裏日本という言葉で現されてきた。裏、ということばには影というニュアンスもあるだろうし、実際に閉ざされる冬を味わえばそういう表現にもなるだろうな、と思う。
雪はイメージほどさらりとしていない。牡丹雪は宙に浮いているうちはよいが、地上に落ちるとべたつき踏まれ、融雪装置が溶かし茶色の水になる。冬の街路を綺麗だと感じられる数少ない時間は、朝一番の除雪車がまだ来ていないころだろう。もっとも、起きていたくないほどの寒さだろうが。
そろそろ車のタイヤ交換も予定を立てておかなければいけない。どうやら東京住まいにはその感覚がないらしく、夏タイヤで雪道を走ってリアバンパーを凹ませたり年中ずべずべのタイヤを履いていたりする。背筋が凍るような話だ。これもまた、同じと見えていた空の違いだろうか。