ここ最近は仕事を原液で飲まされており、雑記らしい雑記のネタもない。
なので、ありがちではあるが小説における分量の話。
ちょうど今キリのよいところまで書き上がったので。
文章書きであれば常に文字数と行数に悩まされるのだが、どうやって算段しているだろうか。
word等で文字数をこまめにチェックしたり、場合によってはIndesignで直に執筆するだろうが、僕の場合はエディターである。
というのも真っ当に小説を教わったことはなく、エンタメの作法等はゲーム会社で薫陶を受けたためだ。
ご存知の方も多いだろうが、ノベルゲームのギャラは量り売りで、KB/○○円となっている。txtだとわかりやすい。またエディターはWordに比べると軽いということも利点だが、このあたりは涼元悠一先生の『ノベルゲームのシナリオ作成技法』に詳しい。
そんなわけで文字数をKBで計算しているのだが、暗算する時に512文字ではなく500字で計算してしまう。だいたい目安、と思って考えているので。
ところがこの12文字が300KBになると3600の誤差となるわけで、小説にして3600字増やす・削るとなると大事である。短いシーン1つ分にあたるかもしれない。
実際投稿時代にはかなり削ったこともあって、それは文字数というより行数なのだが、一晩で30ページ近く押し込んだこともある。それで筋を変えなかったのだから正直に言って相当厳しかった。
おおよそ描写の度合いを薄くしたり、行意識をして見直したり、事によっては、
「無理だよ」僕はうつむいた。「そんな文字数詰められっこない」
というようなやり方にしてみたり。
しかしこの手の、すなわち台詞間に地の文を挟むやり方も、必要な時にだけ使うようにしたいので、乱発は避けたいが。描写にせよ構成にせよ、ハマり方が弱くなると全体も緩む。できれば一言一句全て必然であるべきなのだろう。
ちなみにアガートラムは文字数とシーンを目一杯削らざるを得なかったため後半が駆け足になり、協議の結果とはいえ難しさを感じた。それでも15万字程度はあるが。
僕はたいてい想定比で文字数が増えてしまうほうで、ひとつには細かい描写まで組めていないという未熟さがあるのだろうけれど、画とカメラワーク、それから芝居をその場に立って意識してしまうと骨組みと同じというわけにはいかない。
加えて丁寧さを求めるとどうしても言葉数は増える。そもそもアウトラインだけを追いかければいいのであれば小説よりほかのメディアに優位性があるし、描写の精密さやどこにフォーカスするかという点を丹念に見せていかなければと個人的に考えているものだから、意味段落にも注視するし(もっとも、これは当たり前のことだと思うのだが。あえて書くことの意味は各々で察していただきたい)、単なる情報公開の手順以上まで踏み込むべきだろうとは考えている。
ではそういった小説本来の良さ、始点と終点ではなく道行きを楽しむことのできる作家といえば誰か――と問われた時に、僕は真っ先に古井由吉を出すのだが、その話はまた別のお話。