(2023/12/09 一部文章や表現の修整)
ネット小説の書き手なら、多くの人が一度は悩むだろうタイトルのそれ。
以前は、一話あたりおおよそ3,000文字前後がよい、という話をよく聞いたものの、最近はさらに短い作品も増えてきた印象があります。
3,000文字前後がよいというのも、それぐらいが読みやすいという経験則的な話だった気がしますし、もっと短いほうが読みやすいというのもわからなくはありません。
では、まずここでひとつ告白、いや懺悔をします。
実は私、一話あたりが2,000文字以下のような最近の短い作品は、ロイヤルティプログラムのスコア稼ぎの面もあるのかなぁと思っていました。
でもあれ、関係ないのですね。
いえ、どんな意図かは作者さんによるでしょうけど、少なくともリワードのスコアという点では意味がない。
――(引用ここから)――
以下はカクヨム公式ヘルプ、『作品に広告を表示してカクヨムリワードを獲得する』からの引用。
『アドスコアの計算について』
〝また係数として文字数が考慮され、文字数が多いと獲得するスコアが多くなります。これは話数の分割を増やして閲覧数を増やすことに対する抑止です。また過剰に文字数を増やすことについても同様にスコアに寄与しないようにしております。〟
――(引用ここまで)――
そりゃ対策しますよね、という。
しかしお恥ずかしながら、私はこの近況ノートを書くにあたりガイドを読み直していて初めて知りました。
ロイヤルティプログラムにはもともと興味がなく、参加するつもりもなかったためろくに調べていなかったのですが……すでにプログラムを利用されている方にとっては周知の仕様だったのでしょうか?
なんにせよ、一話あたりの文字数を考える上で、リワード狙いといった要素は考慮してもあまり意味がないようです。
(追記:
この点については、涼森巳王(東堂薫)さまの『カクヨムロイヤルティプログラムでお小遣いを稼ごう!〜ついでに小説うまくなろう〜』に具体的な数字と解説があり、大変参考になりました。感謝。
https://kakuyomu.jp/works/1177354055363788455)
では、実際のところどれくらいの文字数がよいのでしょう?
上記の『作品に広告を表示してカクヨムリワードを獲得する』には、こんな記述もあります。
〝読者にとって読みやすく適正な文字数を心がけてください。〟
この『読みやすく適正な文字数』というのが、内容や文体によって変わるだろうところが難しいのですよね。
たとえば、内容。
超長編のハードファンタジーで文体も堅め、地の文も多い……といった作品で一話あたりが2,000文字を切るようなものはあまりないでしょう。
ゲーム的なシステムがあったり、本格SFや壮大な戦記ものなど、基本的な情報量が多い作品も不向きに思えます。
一方、日常をのんびりこつこつ描く内容や、地の文が少なめで軽めのファンタジー作品などは向いているのでしょう。
そして、話数と更新頻度。
投稿当初からリアルタイムで追いかけている場合と、すでに長期連載となり何十話何百話とある作品を読みはじめた場合とでも印象が変わります。
たとえば前者。
一話が短い作品は、私個人の感覚では正直じれったく感じることが多いです。
一話あたりが短すぎると、日々話を読み進める楽しさより、なかなか話が進まないもどかしさが勝ってしまう作品も多いのですよね。
さくっと読めるぶん、途中で断念するほどではないのだけど、ある程度話数を重ねて内容が出そろってこないと入り込めない、という。更新頻度が低いとなおさらです。
かといって一日に複数話投稿を毎日というのも、追いかけるのが億劫になってしまうときもある。このあたりのバランスは難しいところです。
翻って後者。
すでに何十話何百話とある作品を読む場合は、一話あたりの軽さが素直にありがたい。
長編だからこそ、軽くてさくさく読める、というのは一気読みのときに楽なんですよね。
ただ難しいのは、長編を一気読みする場合、一話が短いことが必ずしもメリットばかりとは言えない点です。
これはものすごく単純な話なのですが、話数が多いとそのぶん次の話へ進むための操作→読み込み、という手間が頻繁に必要になるわけです。
おもしろく読み進めていればなおさら、読み込みと画面遷移、そのとき目に入ってしまう広告といった視覚的な外部情報などで、集中や話への没入感がいったん、わずかだけど途切れてしまう。
読書体験において、これがけっこう馬鹿にならないのですよね。
加えて、一話あたりが短いことによる〝ぶつ切り感〟も長編になるほど増してしまう。
話がこれから展開する、緊迫感のあるいいシーンでいよいよ話が動き出す、というところで次の話なんてのが毎回続くと、おもしろいよりもうんざりしてしまったり。
一話が短すぎて、同じシーンが何十話も続いている作品を見ると、あえてここまで細かく分ける必要はないんじゃないか、と思えてしまうのです。
もうひとつ、読書スピードは読者によって大きく変わるという点まで考えると、これという数字を出すのはさらに難しくなる。
私のように、3,000文字を1分ほどで読み終え、やっぱり一話4、5,000文字はないと物足りないなあ……という人もいれば(もちろん、これも作品によりますが)、日々のすきま時間に倍以上の時間をかけてゆっくり読む人もいる。
これについては、個人差が大きすぎて、想定する読者層というだけではなんとも言えない領域。考えるのは無駄、とまでは言いませんが、あまり意味はないかもしれません。
ここからは、比較的読書スピードが速いだろう私の好みと私見全開になりますけれど。
考えてみると、そも〝短いほうが読みやすい〟という捉え方自体に、罠感あるのですよね。
短い時間で読めることと、読みやすいは、そのままイコールで結んでいいものか?
一話1,000文字の話は、たしかに誰にとっても読みやすいでしょう。
ですが、読書慣れしている方なら1分もかからず読み終えてしまうだろう短さは、作品の魅力や中身がちゃんと伝わっているか。また、読者にとっての日常の楽しみのひとつとして、人を惹きつけられる分量になっているか、とも考えてしまいます。
多数派でなくとも、〝物足りない(ネガティブな読後感)〟が〝読みやすい〟を上回ってしまう読者も確実に存在するでしょう。
とはいえ、短く区切られているほうが、手を出しやすいのもたしかです。
スマホの画面サイズによっては、短い文字数のほうが物理的にありがたいという方も多いでしょう。
そんなこんなを考えてみると、なんだかんだと言いつつも、一話あたり3,000文字前後という数字は、やはりバランスのよい文字数なのかもしれません。
堅めの作品でも軽めの作品でも、それなりに内容を込められる文字数というとそれぐらいなのかな、と。
最終的な判断は、もちろん書き手が決めることではありますけど、内容や文体、投稿サイトの仕様といったもろもろを鑑みたとき、一話3,000文字前後というのは、いまでも指標のひとつになりうるのだなと改めて感じた次第です。