白河夜船

第七回こむら川小説大賞参加作です。 たぶんホラー。 斜陽が、金色に耀いている。

声がするので、表の方を覗いてみると玄関に人が立っていた

地獄というのは案外近しい場所にあるのだな、とぼんやり思った。

水は彼岸と此岸を繋いでいる。

私が一人暮らしであるために、諸々都合が良いと思ったのだろう。飲んでいたら終電を逃したとかで深更、部屋へ押しかけてきた友人・Ｙは酒の勢いに任せてそんなことを話しつつ、自分の左耳に触…

この町では時々、人が消える。 僕が知らないだけで、もしかしたら人以外も消えているのかもしれない。犬も猫も鳥も虫も木も建物も……全てが消えて、空白に『何か』が流れ込む。空白は『何か…

短い怪奇譚を小箱に詰めます。 一話完結です。どこからでも読めますので、どうぞ気軽に覗いて下さい。 ※軽い残酷描写、近親愛、同性愛的表現を含む作品も投稿します。

俺は善良な市民だよ。 そう曰った兄の部屋で人間の死体を目撃したのは、上京した当日であった。

私の家には奇妙な部屋がある。 仏間の隣にある和室なのだが、さして広い家でもないのに物も置かれず、かといって客間として使われることもない。なぜかそこだけ、がらんどうのままただただ放…

そも俺は聞くまでもなく、この部屋のことをよく知っている。

ある日の放課後、僕等しかいないがらんどうの教室で、不意に友人がそんなトンチキなことを言い出した。

近頃、妙な夢を見る。 仏間で弟と話している夢だ。家のどこかで風鈴が時折りぃんと澄んだ音を立てるので、たぶん季節は夏なのだろう。廻り廊下の向こうに見える山々の緑は色濃くて、青褪めた…

夏の夜の話。

俺の実家はそれなりに古くて大きい家であり、旧家の常として仏間の長押にずらりと遺影が並んでいる。問題は、その中に肖像画がいくつか混じっていることだった。

埋めたのは父さんだよ。

自主企画「犯罪者が出てくるブロマンスを書いてほしい」に寄せて書きました。誕生日おめでとうございます。 死んだ友人と暮らしつつあれこれ思い出したり考えたりする話です。 ※動物に…

『兄』は存在しないはずだった。

水上家に纏わる連作短編。 ふんわりゆるい怪奇譚です。ちょっと怖い話も怖くない話もたぶんごっちゃに突っ込みます。

首なし女という見世物の噂を聞いた。首を失った女をどういう方法でか延命している、そういう内容の見世物らしいのだけど、それが本当なら素晴らしい。この寂れた見世物小屋を建て直す最高の商…

夕刻の赤い光が射し込む部屋に、兄の死体が転がっている。 ※流血あります。

深夜零時。 大学のレポートを書いているとスマートフォンが不意に鳴り、画面に表示された文字列が『兄貴』だったので電話を取ったら、開口一番がこれである。 ※流血あります。

おーい、おーい。

自主企画『因習村座敷牢人外青年祭』参加作です。 俺の家には兄がいる。兄と言っても本当の兄弟ではない。同じ家に住んでいるだけのおそらく他人だ。ただ、あんまり自然にそこにいて、家族…

美味い。

友達（そんな親しくない）の死体を渋々探す話。

右手に、影がある。月光を受けて窓辺のものが、畳に影を落としているのだ。その影の形が妙だった。

口から溢れたのは、吐瀉物でなく、作り物めいた白い泰山木の花だった。

廃ホテルの405号室に彼はいる。

近頃、妙な夢を見る。 ある立派な造りの日本家屋に招かれている夢である。その家がどこの誰の家であるのか、私は知らない。しかし、夢の中の私は知っていて、何かをじっと待っている。

明日には死のうと思うので、取り敢えず友人Ａの下宿を訪ねてその旨を伝えたところ、彼は「そうか」と頷いて、左手の小指を中華包丁でスッパリ切った。

自主企画「死別ブロマンスを書いてほしい」に寄せて書きました。 旅は道連れ世は情け。

縁日である八月二十日。章生が住む海辺の町では、灯籠流しが行われる。 ※若干インモラル気味です。

ねえさん。

あーあ。

夢日記のつもりで書いたら、原型ほぼ無くなったやつ。

少女達による真夜中の演劇。

※軽い近親愛表現があります。 ※短編集『怪奇の小箱』に掲載している作品です。

兄が語る、死んでしまった弟の話。