たぬき85

　妊娠期間と同じだけの時間があれば、野ざらしにされた死体は風化し、完全に姿を消すらしい。 　恋心が消えるために必要な時間も同じなのではないか。 　二〇〇一年。中学の卒業式の日、…

　アイドルソング『らびあんろーず♡』のMVは、珍しいことにアイドル本人は一秒も登場しない。当時、中学生だった星野里菜が主演をつとめた五分足らずのドラマ仕立てのMVである。 　色…

　岩田屋町2013年、夏。 　川島疾風が車ではねた男は、ヤクザの息子と名乗った。 　たいした交通事故ではなかった。警察ではなくチンピラが呼ばれたものの、問題ではない。義理の弟に…

「青春を謳歌しよう！」 そんな宣言から教習所に通う三人の若者はNGワードゲームに興じる。 幼なじみの風鈴に誘われて教習所に通っている貴裕。 彼が書いたNGワードは『待ってる』。…

　世界を終焉へ導く『空の割れ目』を塞ぐため、救世主たる『適合者』に選ばれたクラスメイトの高橋さん。 　他のみんなが「ヒーロー誕生だ」と騒ぎ立てる中、僕だけは知っていた。『適合者』…

俺の名前は、宇陀 帯刀（うだ・たてわき）。見ての通りのイケオジだ。“お兄さん”って呼ばせないのかって？ そいつは突然現れるかもしれない12人の妹に取ってあるのさ。 陰陽寮に属し…

マッチングアプリで知り合った杏心。 実家で生活している杏心の姉、心乃花さん。 僕らが借りた部屋が実家に近いこともあって、遊びに来るようになった心乃花さんには一つ大きな秘密があって…

SF（すこし・ふしぎ）なドッペルゲンガーラブストーリー。 一緒に住んでいる恋人、深水紗希にプロポーズしようと準備をしていた聖は、家に帰るともう一人の『紗希』がリビングで眠ってい…

　前略、このページをご覧いただいている全ての皆様へ、まずは心から感謝を――。 　この作品は、西暦２１６８年４月から、１１月にかけて私が執筆した、文字で綴られる”彼等”と、それを…

「××」くぐもった声で秋穂が言った。 「なに？」 「私のこと、好き？」 「好きだよ」と僕は言った。 「どのくらい？」 「秋穂が想像しているよりも、ずっと」 「いつから、好き？」 …

「ねぇ、行人」 「なに？」 「エッチしたことある？」 　突然の問いだった。 　中学三年の僕は当たり前みたいに経験なんてなかった。 　夏休みが終わって、けれど、まだ夏は終わってく…

　姉の死がきっかけになって小説を書き始めた宮内浩は高校進学と共に「眠る少女」というガールズバンドを知る。 　そのバンドが歌っている曲が自分の書いていた小説のタイトルと内容だった。…

　創作に関するエッセイです。 　中身がトロトロなやわらかいオムレツとジャガイモなどが入っているかたいオムレツ。 　どちらも美味しいと僕は思います。 　ライトノベルも純文学も大…