感想
英雄闘争ヒーローギア!!
この物語で一番良かったのが、冒頭のプロローグです。
勇者が、マオウから男の子を救う。最後の力を振り絞る。
テンプレだけど、シーンとして完成されているし「上手いな」と思いました。でもその後の展開が、まったく響きませんでした。
理由は、ヒーローが、正義のために、何もしていないから。
事務所で格闘トーナメントやって、淡々と修行してるだけだから。
現代社会でデビルと呼ばれる未知の敵対戦力が存在し、町にも物理的な被害を出しているのであれば、「デビルを倒さないヒーロー」は、仕事をサボってる警察官と同じような見られ方をするだけだと思います。
だからわたしは、登場人物にいろいろ質問をぶつけながら読んでました。
「なんでヒーローやってるの?」「ヒーローってお給料でるの?いくらぐらい?」「休みの日はなにやってるの? 週休2日?」「デビルは人型してるけど、そいつらに暴力振るっても心痛まない?」「国を守る使命感はあるの? それとも単に暴力が好き?」「死ぬこと怖くない?」「休みの日にデビルが現れて、休日出勤を命じられたら、一般人の為に命を賭して働いてくれる?」「ヒーローを引退したら転職先はあるの?」「そもそも他の働き口はなかったの?」「この世界観で、どうしてヒーローになろうと思ったの?」
先を読んでも、疑問は増えるばかりでした。シンプルにヒーローとして己を体現してるのは、冒頭の勇者だけで、他のヒーローの正義が見えてきません。
仮に「ヒーロー」というのが、役職の仮名称であり、人々は誰もそんな信念をもっていない。能力を使いたいだけ。と言うのなら、現実でも「警察官、軍人、自衛隊」という組織は成り立ちません。
誰かの為に働ける。身を犠牲にできる。そういう【損をする人】が世の中にいてくれる、様々な形で戦って、バトルをしているから、現実はどうしようもなく回っている一面があるはずです。
要は、バトル物の作品は、バトルそのものが大事なのではない。
能力合戦をする。合戦をした上で相手をボコボコにする。途中で覚醒して急に強くなったりするけれど。
主人公は原則として、相手をボコボコにする、できる理由をもっているはず。血を流しても戦えるから、その職業に就いているはずです。
バトルの内容がだいじなのはもとより、先に【内容に共感できるバトルの開始と決着がある】こと。その構造を提示して、必然性のあるゴングを鳴らすことが、バトル物では一番重要なんじゃないかなと思いながら読みました。