タイトル:
わたしの熟語魔法は最強なんだから!
読む前にお詫び:
まず私が「転生ものは好きではない」というのを念頭に示しておきます。理由は、この現世で生きる人たちを尊敬し、敬愛しているからです。
べつの世界で生きたい。と思う気が、今のところまったくありません。消える時は、やりなおさず、完全に消え去ってしまいたいです。
冒頭:
この物語で単純にマズイなと思うのが
「四字熟語が好き」=「魔法が発動できて使えること」に、結びつけるのが難しいことです。
そもそも、主人公は『熟語(言語)』が好きなのか。『異世界〝も〟好きなのか』その点が非常に曖昧です。
仮に主人公は『熟語』が好きで、異世界は別に好きではない。というのであれば、異世界転生ファンタジーである必要はないと思います。
理由は『主人公がその〝世界〟に憧れる必然性』が存在しないためです。
主人公の設定にもう一工夫を:
・主人公は異世界〝も〟好き。
・仮にテレビゲームが好きなのであれば『熟語(言語)』好きが高じて、それをテーマにしたフリーゲームを作ったことがある。あるいは、アナログゲームを好事家の間に配ってまわった。
・熟語と異世界(ゲーム)両方に通じるエピソードがほしいです。
指輪物語の「J・R・R・トールキン」が、言語マニアだった話は有名です。
氏は熟語のみならず、彼の世界に通じる言語そのものを下敷きに話を作りました。
これは作者自身のエピソードが「説得力」を持っている例ですが、仮にトールキンと同様のキャラクター(生前は学者で軍人で信仰者であった)が異世界に転生すれば、自らが駆使した『言葉』で魔法を生みだし、世界そのものを攻略していく。という主人公の存在自体に説得力が増します。
なので、この物語の主人公にも「熟語好き」=「異世界ファンタジーで魔法を使うこと」を念頭においたエピソードを一つ、取り入れてみると良いと思います。
人物が増え始めてから:
会話文のテンポが良くて、楽しく読めます。
ただし、主人公の設定と同様に、どのキャラクターも一工夫ほしいなと思います。
それと『主題』が見当たりません。たとえばRPGゲームなら「魔王を倒す」「帝国から祖国を取り戻す」「空の果てを探す」といった主題が必ず存在します。前述したトールキンの指輪物語では「冥王の指輪を火山に捨てる」がこれにあたります。
基本的なRPGゲームの構成としては、主目的をもった道程の最中、立ち寄った町で楽しく食事会を開いたり、お家騒動に巻き込まれたりする(サブストーリーが発生)するわけですが、本作はファンタジーの大原則である『主人公はどこへ向かい、何をすればいいのか』が提示されていません。
提示されていないと、場当たり次第に起きたことに対処するだけのお話になってしまいます。
逆に「異世界居酒屋のぶ」みたいな話だったら、毎日異世界のお客さんが、食事を食べにやってくる。それを現世と変わらず居酒屋の店主として受け入れる。という一話区切りの話として成り立ちますが、〝目的のない旅〟というのは、本人は楽しくても、見てる側、話を聞いている側としては『本題』がないので、退屈に感じてしまいます。
個人的な意見:
あと、本当に私的に思うのだけど「人生を謳歌する」って、目的を達成したわけではなくて「自分にとって意味のある人生を生きてきた」って事だと思うのです。だから人生を謳歌するなら、毎日を有意義だったと感じていたら、べつにいつ死んだところで『謳歌した』と思うんじゃないか? と感じるのです。
わたしにとって、異世界ファンタジーが苦手な最たる理由は。『現世で生きる意味』を持てなかった人が、都合よく環境が変わったところで、はたして『生を謳歌できるのか』という疑問に辿りついてしまうからです。
主人公が異世界に転生してもいいけど、チートしてもいいけど、『目標』や『目的』といったものは、やはり存在してほしい。チート能力を使って、その世界で『何をするのか、何をしたいのか』。
主人公のやりたい事、やってみたい事を、わたしも共感したいのです。
そして周囲よりも優れた能力があるならば、無気力な主人公(人間)など、絶対に存在しません。
作者は、ある意味で物語のお父さん、お母さんです。親は子供に、きちんとやるべきこと(役割)を与える、そのヒントだけでも授け、授けた後に「うちの子カワイイでしょ?」と胸を張って頂けると、読んでる方もほっこりします。
感想は以上です。
またなにかありましたら、ご利用ください。
秋雨あきら
(11/13)