タイトル:
小さな宝箱
評価:
ストーリー:C+
キャラクター:B+
設定・舞台:B
構成・バランス:B+
オリジナリティ:B
総評:
私的にかなり好きな話でした。ただ、物語の結末が物足りなく感じられたので、ストーリー評価を低めに設定しました。好意を感じていた異性がいなくなり、主人公の内面に何が起きるか。どんな変化をもたらせるのか。そこまでしっかり描くことで、私のみならず、この作品を目にした人たちの評価が劇的に変わってくると思います。
良かった点:
大学生の女性と手のひらサイズの少年騎士。いわゆる身分差のある恋愛ものとして読めるのが良いです。女性の方が3歳年上なので〝ショタ萌え〟層の方々には、クリティカルで突き刺さるかもしれません。
こたつのある、ワンルームの部屋で淡々と過ぎていく日常に、少年騎士の「居心地はいいけど申し訳ない」という態度が可愛く映ります。
しかし見方によっては〝ヒモ男〟なので、騎士の身長が戻った後で、デートをして帰ってしまうだけでなく、バイトして働いたり、意外な特技(料理ができるとか)があったりすれば良いかもしれません。
そうすることで、騎士が元の世界に帰る時に「離れたくない」という感情が増すと思われます。
悪かった点。
まず「小さな宝箱」が主題の話ではないことです。確かにこの宝箱は異世界の少年騎士を呼び寄せるアイテムになりますが、それだけです。
たとえとして適切かはわかりませんが「ドラえもん」のタイトルが「小さな四次元ポケット」では、ちょっとおかしいよね。という事です。
それと繰り返しになりますが、結末です。本作は少年が元の世界へ帰り、あっさりと終わってしまいます。
異世界の男子が現実に現れて共同生活をはじめる。というのは明確なファンタジーですが、好意をもった異性と、今後一生会えなくなるという事は、現実でも十分に起こります。
物語の結末で大切なのは、非現実(ファンタジー)的な事件が起きた後、主人公はどんな風に変化したのか。という事に尽きると思います。
ですが本作では、そういった事が一切書かれていません。一切書かれていないということは、厳しい言い方になりますが、異世界から少年騎士が現れたところで、特に意味はなかった。少年の存在は主人公に何の影響も及ぼさなかった。という見方もできてしまいます。
単純にもったいないです。驚くような結果でなくとも構いません。読者が話の結末を見た時に「異世界の少年に出会えて良かったね」と思えるようなエピソードをひとつ、付け足してみてください。
感想は以上になります。
今回は自主企画にご参加いただき、ありがとうございました。
秋雨あきら
2017/10/23