【留】
黄間友香さんの作品。短編・16000字。
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【あらすじの情報から】
・主人公、夏帆(かほ)。
・高校の時の進路選択から――とあるので、現在は大学生か社会人。
・アメリカで上手くいかなかった。自信を喪失している。
・親子の仲は良い。もしくは両親の関係が上手くいっている。
・夏帆の成長の話。家族の『キズナ』の話。
・PR対象は、父親との会話。
【あらすじの第一印象】
情報が不足しすぎている。たとえば夏帆は、アメリカでどうして失敗したのか。そもそもアメリカにどうして行きたかったのか。物語の要となるであろう「父」は、どういう履歴があるのか。
それは本文にぜんぶ書いているのだろうけど、PR先で『父親との会話』を挙げている以上、500字の中にもう少し情報を圧縮してほしかった。でなければ、結局「冒頭から読まないといけない」ことになる。
つまり、この物語は「なにがおもしろいのかわからない」
あらすじの主張も「とりあえず読んで」ということになってしまう。
おもしろいというのは、キャラクターが素敵なのか、ストーリーラインが良いのか、舞台背景が良いのか、複合的な意味を持つ。要するに『わたし達はどこへ共感してゆけばよいのか』それがわからない。
あらすじがそうだと、そもそも『本文もあらすじと同じではないのか』という疑問が生まれる。とても勿体ない。
・第2-14を読む。
・母親と夏帆が上手くいってない。
・噛み合ってない感覚。その間に立って干渉役となる父親。
・母親が電話口で矢継ぎ早に喋る。それに苛立つ夏帆。
・電話を切る。シーン終了。
正直に言ってしまう。困った。感想を書くにしても、なにを基準にすればいいかわからない。お母さん仕方のない人だな。ぐらいしか。
続き。2-15
・言葉にするのが難しい感情。夏帆も言葉で伝えるのが苦手。
・お父さんの発言がでる。なんとなく良い大人になったよ。大丈夫。
・シーン切り替え。
続き。2-16
・自宅の写真を撮る。車から降り、母が出迎える。
・物語が終わる。
【総括的な】
えーと、ちょっと感想の視点を変えますね。作品ページを拝見した際に、文学賞に応募するとあったので、そこを中心にします。
文学賞に応募するなら、あらすじが必要になってくると思います。
あらすじって、実は結構大事です。端的に言って第一印象みたいなもので、そこには「この物語がおもしろい理由」があるはずです。ライトノベル、ヘビーノベル、掌編、短編、歌詞、ゲーム、あらゆるジャンルにおいて「どうしてそれはおもしろいのか」
誰かを惹きつける理由が必ずあります。なんとなく、から一歩踏み込めば、どんな媒体でも言語化できる「おもしろさ」は存在します。
ですので、この作品を文学賞へ応募するのでしたら、送付する『あらすじ』も、ちょろっとで良いので、工夫してみてください。
そうすることで、作品自体にもべつの側面や、発見が生じるはずです。感想の書き方もまったく変わりますし、読む人の意見も変わってくると思います。
(5月17日)