言葉は人の体に無形に刻まれます。一度聞いた言葉は、耳に、胸に、肺に、見えない刻印のように残って何度も蘇るのです。体に刻まれた言葉は他者とのかかわりや関係を通して何度もその顔や力を変えていきます。
言葉は現象・力の媒体
次のようなファンタジーのアイデアを考えました。
アイデア其の1
人が一度聞いた言葉は体のどこから士らに刻まれるというアイデアです。
例えば「死ね」と言われて育った子供はその骨に心臓に「死ね」という文字が刻まれています。その子供が人生に行き詰ったとき、その「死ね」という形の傷が骨や心臓を苦しめます。しかし、有るピエロが「好きだ」という意味で子供に「死ね」と挨拶を繰り返しました。子供はそのピエロのあいさつを聞くたびに胸が苦しくなりました。体中に死ねの文字をした痣が浮かび上がったこともあります。しかし、ピエロとともに暮らしお互いに信頼しあえるようになったとき、心臓と骨に刻まれた「死ね」という文字は陽のような温かい光で全身を照らすようになりました。子供は心臓に刻まれた「死ね」の文字が呻くたびに幸せを感じるようになりました。
アイデア其の2
人は言葉を交わすとき、はじめはその声が聞こえない。しかし、後になると遅れて体のどこかにその声が聞こえてくる。
例”かなたはニカに手を振って挨拶をした。何と言ったのかに蟹は聞こえなかった。30年たって、かなたの「おはよう」の声が胸の骨に聞こえてきてニカは涙が止まらなかった。”
アイデア其の3
言葉が形のない物質となって身体に作用する。
例えば「お前なんかキライだ」と言われたとします。そのお前なんかキライだという言葉がずっとのどに詰まってそれを言われた人は食事を食べられなくなります。水を飲むと喉から口に水が押し返されます。食べ物を無理やり喉にねじ込んでもまるで喉に蓋でもできているみたいにそれは胃に落ちて行かないのです。しかし、食べ物でも何でもない管や石ころは平気で胃へと落ちていきます。言葉が形のない物質となって体に作用しているのです。言葉は無と有繋ぐ媒体であると解釈します。