https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818093087529853763そんなわけで第九話です。
前半はシルヴィアとカー君による谷の調査、後半はシルヴィアの家庭教師デビューです。
カー君が体格の割に小さな翼でも飛べるのは、地上の植物を含むあらゆる生物の生命エネルギーを、吸い取って利用しているからです。
これに対して、龍(具体的には蒼龍グァンダオと赤龍ドレイク)は、これに魔力が加わった「魔素」と呼ばれるものを吸収して飛行します。
幻獣界は魔素に満ちているので、本来龍の飛行能力は非常に優れていて、長距離飛行が可能です。
ところが、シルヴィアたちの世界にはそれがありません。
そのため、龍は自分の体内に蓄積された魔素を消費して飛ばざるを得ず、短距離しか飛べなくなっています。
さらに、魔素を補充するため幻獣界に帰っていることが多く、蒼龍帝と赤龍帝はその都度、召喚の儀式を行っています。
白虎ラオフウと黒蛇ウエマクは飛ばないのですが、やはり魔素は必要で幻獣界に帰る必要があるのですが、龍に比べると頻度や期間は少ないのです。
ウエマクは滅多に帰りませんが、ラオフウは「時々暴れないと身体がなまる」と言って、ちょくちょく帰っています。
さて、天才少年セドリック君ですが、彼が並外れて賢いのは事実なのですが、今のような化け物になったのは、ほぼ前の家庭教師・イレーネ女史のせいですw
前回説明したように、彼女には不幸な過去があり、特に失ったわが子は大きな棘となって心に刺さっていました。
たまたま高額の報酬につられて、片田舎の貴族の家にやってきたのですが、そこには素直で溢れるような勉学欲をもった少年が待っていました。
彼女はわが子(男の子でした)の影をセドリックに重ね、自分が半生を費やして得た知識を、何かに憑かれたように教え込んだのです。
わずか七歳のセドリックは、イレーネ女史が創り上げた「歪んだ天才」と言ってもいいと思います。
セドリックの苦手は国語、特に文学の読解力で、彼自身それが悔しくて、イレーネにどうすれば成績が上がるのかを質問しました。
女史の答えは「できるだけたくさんの名著を読むこと」でした。
セドリックはもともと読書好きでしたので、それを実践したかったのですが、そのための時間がなかなか取れなかったのです。
彼は多くの王国民と同じように、夜明けとともに起床しますが(シルヴィアは彼の爪の垢を飲むべき)、一日六時間の勉強のほか、朝食前と夕食前には剣術の稽古があります(父親が教えている)。
そして、八時には強制的に消灯となるので、何度も九時まで延ばしてもらうよう、父親に頼んでいるのですが「子どもが生意気」と言われ、相手にされていないのです。
さて、シルヴィアは家庭教師をしながら、事件の謎に取り組みます。どうか次回をお楽しみに!