4章11話を更新しました。これにて4章完結です。
今回はメルのステージを真剣に書く回だったのですが、ものっっすごく難しかったです。
作曲センスも歌詞をつくるセンスもないので、まずそれっぽいミュージカルを作るのにめちゃくそ時間がかかり、それを文章で再現するのにも時間がかかりました。
ハイスクールミュージカルと美女と野獣はだいぶ参考にしました。お世話になりました……
さて、今回はなんとなくアルバート王国の音楽史を掘ります。
本編中でも説明していたのですが、この時代、楽器や役者を大規模に揃えた歌劇は、貴族や一部の金持ちのための娯楽であり、教養でした。
貴族にとって歌と言えば劇場でする歌劇、もしくは室内楽団の伴奏で歌姫に即興で歌わせるような豪華でこじゃれた歌でした。
学校で習うのは、やはり格式高い「ホンモノ」である歌劇です。
一方、メルやリーアンの仕事のほとんどは後者です。お金をもらって余興のためにその場で歌う仕事。場合によっては、教会のミサで聖歌隊と一緒に歌うこともあっただろうと思います。歌劇よりかなりカジュアルな娯楽ですね。
ですので、よりお手軽で、歌姫のパフォーマンスの自由がきく後者の歌で場数を踏んできたメルだからこそ、歌劇の型を大胆に破る発想ができたのだと思います。
アルバート王国の歌劇は悲劇がほとんどです。我々の世界でも同じような傾向があるのかなと思いますが、もっとも格式高い歌劇はバッドエンドなのです。
メルがツェベーニンの公演でするのも、王女と平民の男が駆け落ちの末心中する悲劇です。
それに加えて、歌劇を観る観客は一切物音を立てたりせず、じっと聴くのが常識でした。これは、我々の世界で言うクラシック音楽のコンサートや、オペラの観劇と同じです。
ただし、この世界のこの時代には音楽といえばほとんどこれだけで、メルたちが仕事にしているようなカジュアルな娯楽の場面でも、おしゃべりは最小限に慎むのが心得でした。
つまり、メルが今回強行実施したような、楽器と役者を揃え、台詞を歌でやりとりするような豪華なセットでド喜劇をやったり、ましてや観客を巻き込んで手拍子させるわかけ声を求めるわの大騒ぎをしたりするなんて、センセーショナルすぎる事態なわけです。
高貴な人たちからすれば、幼稚で野暮ったくて品のない、庶民や未開の地の人々が好む音楽を由緒正しい場に持ち込んだように見えるだろうなと思います。
これが、正真正銘この世界でのミュージカル、はてはライブコンサートの最初の先駆けでした。
観客含めた全員を出演者にし、とにかく楽しさだけを追求した斬新なステージを、メルはやりたかったのでしょう。そして、実際に成功しました。
若者はどの世界でも新しいものに挑戦したがるものなのかもしれません。
前回の更新から、2000PVを超えました!ありがとうございます!
Twitterアカウント乗り換えの影響で、追ってくださっている方も少し減ってしまったかなと思うのですが、それでも見てくださっている方には頭が上がりません。
ここしばらく仕事が繁忙期に入り、しかもヘルペスっぽい謎の病で体調が微妙に死んでいて、更新も近況ノートも遅れがちで申し訳ないです。次回こそ頑張ります。
次回の更新は来週です。5章を開始します。
今後とも拙作をよろしくお願いします。