茶番の閑話(【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】162部分用)
内容のペラいメタな閑話です。
読み飛ばし推奨。ちなみにバッドエンドです。
【閉ざされるハッピーエンドと血まみれの聖女】
「おい……」
「どうしたのケンツ?」
「なんで俺とシャロンなんだ?」
「え? どういう事?」
「“どういう事?“じゃねえ! 続きは!?」
「続き?」
「だからぁ、『んあああああ、なんなのこれ!? 私こんなの知らな……ひぎぃぃぃぃぃ!』の続き!」
「ああ……」
「俺はアリサの嬌声の続きを首を長くして楽しみにしていんだぞ!」
「楽しみに?」
シャロンはギロリとケンツを睨んだ。
「あ、いや……俺は心配していたんだよ!」
「ふーん」
「シャロン、そんな冷めた目で見ないでくれよ。気になるもんは仕方ねーんだぜ! シャロンだって気になるだろ?」
「私は別に……」
「シャロン、ウソは駄目だぜ! あのアリサが『んあああああ』『ひぎぃぃぃぃぃ!』なんてエロ漫画みたいな嬌声上げたんだぜ。気にならないわけがないぜ!」
「エロ漫画みたいな嬌声って……そりゃ少しは気になるけどさ」
「だろう!」
「でも所詮は茶番の閑話なんだから……」
「それは違うぜシャロン。茶番の閑話だからこそ某ノ〇ターンを超える展開があってもいいと思うんだぜ!」
「そうかなぁ。垢バン食らって存在自体消されてしまうんじゃない?」
「こ、怖いこと言うなよ」
「だいたいこの作者は過去に二度も別サイトで『赤いお手紙』貰ったんだし、またエロいこと書けば次は無いのよ?」
「ぐぐぐ……それでも俺は作者を信じるぜ……」
「やれやれ。あら?」
「どうしたシャロン」
「あそこに人が集まっているわ」
「ん?」
霧が漂う中、シャロンが指さす方向を目を凝らしてみてみれば、何やら河原でバーベキューを楽しむ一団が。
「なんだろうな?」
「ケンツ、よく見たらセレナさんも一緒だわ」
「本当だ。おーい、セレナさん!」
『あら、ケンツさん。シャロンさん。いつぞやはどうも』
「久しぶりだぜ」
「いいですね。バーベキューですか」
『はい。今日はなんと子供達と御近所さんが来たんですよ! 再会をお祝いしてバーベキューパーティー開いていたんです』
「子供達と御近所さんが来たって……」
「それはつまり……」
『はい。みんな死んでしまいました!』
「…………」
「…………」
『そんな顔しないで下さい。みんな再会できて喜んでいるんですよ』
「ああ、うん」
「良かった……のかな」
『さあさ子供達。ご挨拶なさい』
『きょええええええ!』『えみゃああああああ!』『きいいいいいいいい!』
アーク、カレン、マインは奇声を発しながらケンツとシャロンに襲いかかった!
「うわっ、なんだぜ!?」
「きゃああああああ!」
『あらあら。ごめんなさいね』
「なんかゾンビかグールみたいなんだぜ!」
「こ、この子達大丈夫なんですか?」
さらに
『ぐうぅぅぅうぅぅぅ……』
『ふしゅるるるるるる……』
『こおおおぉぉぉぉぉ……』
「なんだぜ!?」
「ケンツ、囲まれているわ!」
マークス、トムズ、バイアデンがケンツとシャロンの退路を塞ぐ!
『みんな死んだばかりだから|生者《せいじゃ》の肉体を本能的に欲してしまうんです。私もここに堕ちたばかりの頃はこんな感じだったんですよ。ほらほらみんな落ち着いて。お肉が焼けましたよ~』
『『『『『『 がうっ! 』』』』』』
亡者たちの興味は肉に移り、我先にと肉を貪り出した。
「なんかスッゲー怖いぜ」
「ま、まあきっと今だけなんでしょ」
『死にたてのほやほやだから皆お腹が空いているんですよ』
「死んでるのに空腹……なんかシュールね」
「なあセレナさん。ここには他の追放竜族とかも来ているのか?」
『え? あ、はい。 よく見てください。河原の彼方此方で石を積んだりバーベキューしている人たちが大勢います。ダゴン以外は皆ここに堕ちてますよ』
ケンツは|霧の靄《きりのもや》の中を目を凝らしてみた。
「なるほど。確かに大勢いるようだな。全員殺された追放竜族とその家族か。謹んでお悔やみ申し上げるぜ。南無南無……………………ん? まてよ」
その時ケンツ、天啓の如く閃く!
「どうしたのケンツ?」
「セレナさん達をハッピーエンドに向かわせる方法があるかもしれないぜ!」
『本当ですか!?』
「ケンツ、私にもわかったわ!」
「ああ。これでもう作者がエタら無い限りハッピーエンド間違い無しだぜ!」
シャロンも周囲を見渡して何か思い当たったようだ。
『もしかして過去に戻って歴史改変とかですか? 設定では過去の出来事に対しては傍観しか出来ないからその手は使えませんよ』
「ちっちっちっ。そんなチートなマネはしないぜ」
「それに歴史改変なんて危険な事はしないわ」
『それじゃ本当にハッピーエンド!? ケンツさん、シャロンさん、早くその方法を言ってください! 【血まみれの聖女】が来る前に!』
「【血まみれの聖女】?」
「なんですかそれは?」
『【血まみれの聖女】とは、本文以外でネタバレしそうになると鋼鉄のハンマーで頭を叩き潰しに来る聖女なんです!』
「なんだその物騒な聖女は!?」
「ホラーすぎる!」
『だからケンツさん、頭を潰される前にその方法を教え……はっ!?』
ズズッ……ズズズズズッ…………
「なんだぜ? この重いものを引きずるような音は……」
「ぶ、不気味な音…… それになんだか血の臭いが……」
『ああ、来てしまった…… ケンツさん、シャロンさん、逃げて! 超逃げてー!』
「くっ、どこだぜ? 返り討ちにしてやるぜ!」
「ケンツ、後ろ!」
ケンツは後ろを振り返ると、血糊ベッタリな鋼鉄のハンマーを高々と構える、それはそれは禍々しい聖女の姿が!
「こいつが【血まみれの聖女】か! いや……まさかおまえはアリ……ぐぎゃっ!」
グシャッ
ケンツは頭を粉砕され記憶は消去された。
「きゃー! ケンツーーーー! ……えぼっ!」
グシャッ
シャロンも頭を粉砕され記憶は消去された。
「クフ……ネタバレハ許サナイ……アナタモネタバレスルノ?」
『しません! 私は何も気づいていません!』
【血まみれの聖女】の問いかけに、セレナは腰を抜かしながら全力で首を左右に振った。
「デモ念ノタメ」
腰を抜かして四つん這いで逃げようとするセレナの後頭部を……
グシャッ
セレナもやはり頭を粉砕され記憶は消去された。
「ウフフフ。私ガンバッタヨ。ユーシスニ褒メテモラオット♡」
【血まみれの聖女】の正体はアリサ!
彼女はネタバレしそうになると【血まみれの聖女】こと作者の都合の良い記憶消去マシーンと化すのだ。
「ア、ソウダ。最後ニ私モ消サナキャ……」
グシャッ
アリサは自分の顔面をハンマーで粉砕した。
こうしてネタバレの危機は去り、手に届きかけていたハッピーエンドは粉砕された脳髄とともに失われてしまったのである。
― Bad end ―