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【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】089第三十六話 01 関連エピソード その一

関連個所
【089 第三十六話 葬送戦 01】


「だいたいテメーは何者だ!」
「俺達のゲームに割り込んできやがって!」

「俺か?俺はユリウスと呼ばれている者だ」

「ユリウス!?」
「じゃあ、アキヒロ達を|殺《や》ったって言う……」


ユキマサとタケヒサに緊張に走る。

ユキマサは、つい先日まで失踪した|召喚勇者アキヒロ《仲間の召喚勇者》と、そのアキヒロを殺したと噂されているユリウスの調査をしていた。


上記部分

*



【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】には描かれない「召喚勇者アキヒロ×ユリウス」の物語です。


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【ミヤビの村と召喚勇者】


Side ユリウス


 俺は愛馬ネロに跨り、冒険者ギルドを出発。ティラノドラゴンが出没するという村に向かっている。

 この向かっている村は、レイミアさんから頼まれた薬草を届ける相手、ミヤビと言う女性がいる村でもある。


 「ふーむ、この薬草とティラノドラゴンの一件、何か関係しているのかな」


 そんな事を考えながら向かっていると、どうしたことか目的地近くまで来た時、ネロが足を止めてしまった。


「おい、どうした?」

「ヒンヒン!」


 ネロは進もうとせず、何かを訴えるように俺を見ている。

 そこで俺は気が付いた。


「なんだこの瘴気は?大地が腐りかけているじゃないか!」


 ネロが嫌がる理由はこれか。


「|ストール《馬房》」


 無理して行けないことはないが、後でネロがヘソを曲げても面倒だしな……

 ここはネロを時間停止空間に戻して、あとは徒歩で行くことにするか。


 ― ザッ


「お、なんだこれ?」


 俺の歩いたところが浄化されている?


「ふーん、俺もけっこうやるなぁ」


 そうこう感心しながら歩んでいるうちに、遠くに村が見えて来た。



 ん、なぜか村の中は瘴気に犯されていないようだな。どういう事だろう?


 ― パリッ!


「お?」


 村に入る際、パリッと何か衝撃があった。

 なるほど、村の周りに瘴気を遮るための結界が張ってあるのか。


 村人がチラホラと見えるが、俺とは一切目を合わそうとせず、ソソクサと立ち去ろうとする。

 ここもギルド同様閉鎖的な土地柄なのかもしれないな。


「縮地!」


 ― バシュッ!


 超高速移動でとある村人(男)の正面に出る!


「わ、なんだアンタ?余所者がなんのようだ!」」


 驚く村人の文句など無視して話を進める。


「村長に用があってな、どこに行けば会える?あとミヤビという女の子に渡したい物もあるんだが……」

「このまま真っすぐ進めば大きな屋敷がある。そこが村長の家だ。ミヤビ様は畑に出ているはずだ。もういいか?」

「ああ、ありがとう」


 村人は怪しい者でも見るかのようにチラ見しながら去って行った。

 言われた通り行くと、やがて大きな建物が見えた。


「ここか?いやここは村の集会場のようだな。村長の家はまだ先か……うん?」


『はあああああああああん♡』
『もっとおおおおおおおん♡』
『あの人よりいい!もう最高♡』


「な、なんだ、今の声は!?」


 まだ昼間だというのに、建物の中から聞こえてくる複数の嬌声!

 そして建物の前には、血の涙を流しているこれまた複数の若い男達。

 なんだこいつら?この村独特の宗教儀式かなんかか?

 事件だとしたら大騒ぎになっているはずだが……どうもそうでは無いようだ。


「なあ、あんたら。こりゃなんの騒ぎだい?」

「なんだ、おまえ?見ない顔だな?」
「余所者には関係ない事だ」
「見世物じゃないんだ、あっち行ってくれ」


 男達は異常なまでの殺気を漲らせながら、俺を追い払おうとした。


「なあ、もしかして中の女達って、おまえ達の大切な女(人)なんじゃないのか?血の涙を流すなんて普通じゃないぞ?」

「うるさい、部外者はあっちに行け!」
「おまえに話して何になる!」
「さっさと失せろ!殴られてーか!」

「わ、わかったよ。邪魔したな」


 どうやらマトモな話し合いは無理なようだな。

 俺は踵を返しその場から立ち去ろうとした。


 刹那――


『『『はああああん、勇者さまぁあああああん♡』』』


 ― ピタリ


「なに?」


 俺はもう一度振り返った。

 三人の男達は、もう勘弁してくれとばかりに耳を塞ぎながら嗚咽を漏らしている。


「そういう事か……中に居るのは召喚勇者で、相手をさせられているのはおまえ達の大切な女達だな?」

「「「…………」」」


 苦渋に満ちた顔の男達。

 この場に居続けているのは、召喚勇者の性癖を満足させるためなのかもしれないな。

 加藤弾がそうだった。

 あの野郎は最後の一線を俺に見せつけるツモリで、俺の処刑を先延ばししやがったんだ。

 思い出しても反吐が出るぜ。


「手を貸そうか?召喚勇者に女を奪われる苦しみは俺も知っている」

「余所者のあんたに何ができる」
「そんな貧祖な恰好のくせに」
「妙な期待をさせないでくれ」


 貧相とは失礼な。

 とはいえ、今の俺の姿は聖剣こそ携えているものの、それ以外は普段着に等しい姿だ。

 軽く見られても仕方がない。

 こりゃぁ、それなりの服を買った方がいいかな。


「|デフォイメント《アーマー展開》」


 ― ボシュッ!


 俺は一瞬にして白銀の騎士に様変わりしてみせた。


「な!?」
「え!?」
「ぴ!?」


 なんだ、最後の『ぴ!?』って。

 まあいいけどさ。


「言っておくが俺は並の召喚勇者よりも強いぞ。さあどうする?」

「「「召喚勇者より強い!?」」」


 男達の目に一瞬希望の光を見たが、それはすぐなりを潜めた。


「やはり駄目だ」
「女達の献上は村の総意によるもの」
「俺達の一存で決められる問題じゃないんだ」


 なるほど、個人的に女を奪われたわけではないのか。

 村の総意となると、これは契約に基づいたものみたいだな。

 迂闊に介入すれば、事態を悪化させる可能性もあるわけか……


「わかった。ところで俺は“勇者の魅了”を解除できるアイテムを持っている。村に滞在中、必要になったら呼んでくれ」


 普段着姿に戻り、今度こそ踵を返して村長宅に向いかけた。

 だがまあこれぐらいは……


「ライディーン……」


 ― カッ!ガラガラガラ!ドッシャアアアアアアアアアアアン!!!


 思うところがあり、俺は建物のすぐ真横に立っている枯れ木に落雷させた!

 そのせいで枯れ木が発火!

 男達が慌てて水をかけて消化する。

 もうもうと湯気と煙が立ち込め、それが建物を覆いはじめた。


「な、なんだ今のは!うぉ、こりゃ一体!?」


 召喚勇者とその仲間が、落雷の轟音と漂う煙にビックリして、フルチンのまま外に飛び出して来た!

 そして濛々とする外の様子に驚いている。


「おい、これはおまえ達の仕業か!?」


 ギロリと男達を睨む召喚勇者達。

 ふむ、肌の色、骨格、どうやら祐樹達と同じ日本とか言う国から召喚されたようだな。


「そ、それが突然雷が落ちて来たんです!」
「必死で消化していたんです!」
「嘘じゃありません、本当です!」


 必死で弁明する三人の男。


「はぁ?こんなに晴れているのに落雷があるわけ……む、本当みたいだな」


 召喚勇者達は落雷にあった枯れ木を見て、どうにか納得したようだ。


「ちっ、興が覚めたぜ。おい女ども、風呂浴びて着替えろ。外に飯食いに行くぞ。男達(おまえら)は俺達が戻って来る迄に中を掃除しておけ」


 そう言い放つと召喚勇者達は集会所の中に戻って行った。


「ちくしょう、なんで俺達があいつらの痴態の後始末なんか……」
「だがその間、女達が慰みものにされずに済む」
「ここは素直に、落雷に感謝しようぜ」


 残された男達も、情けない顔をしながら建物の中に入って行った。


「あいつらが召喚勇者とその仲間達か。顔は覚えたぞ」


 召喚勇者一行の顔ぶれを確かめてから、俺は今度こそ村長宅に向かった。



 ― ガラリ


「ここが村長宅で間違いないな。御免、村長さんはいますか?」


 玄関は珍しい引き戸で、カギは掛かっていなかった。ノッカーも見当たらなかったので戸を開けて直接声がけした。

 するとやや間があってから、村長本人が現れた。


「はい、どなたかな?」


 六十代くらいの幾分髪が薄い村長は、怪訝な顔をしながら訊ねてきた。


「僕の名はユリウス、復活竜ティラノドラゴンの討伐依頼を受けて、リットールの冒険者ギルドから来ました」

「なんじゃと?」


 明らかに驚いている村長に、討伐受注書を見せる。


「まさか……今さらティラノドラゴンの討伐に来てくれる冒険者が現れるとは……」

「では村長さん、まずはティラムドラゴンについて詳しく教えて欲しいのだが」


 しかし村長は苦渋の表情のまま固まってしまった。


「あの、村長さん?」

「あ、いやすまぬ。その案件なんだが、実は旅行中の召喚勇者様が引き受けることになったんじゃ。明日には討伐に向かう事になる」

「なんだって?」


 まさか召喚勇者に頼むとは……む、待てよ?するとさっきのアレは……


「村長さん、もしやこの村の女達を差し出すことを条件にヤツラに頼んだのか?」


 苦渋に満ちた表情の村長。


「その通りじゃ。最初はギルドに依頼した料金でお願いしたのじゃが……すまんがお主が受けた依頼はキャンセルということで頼む」


 おいおいおいおい、それは洒落にならんぞ。

 このままじゃ俺はギルドへの出禁決定じゃないか!


「村長さん、この依頼、何とか俺に受けさせて貰えないか?こちらにも事情があるんだ。それに俺は多分召喚勇者達より強いぞ。今からでもヤツラをこの村から叩き出してやるが」


 必死で食い縋る!

 しかし村長の態度は変わらない。


「それは無理じゃ。召喚勇者様に盾突けば必ず報復がある。仮にあんたが彼奴等を倒せても、その後には連邦から捜査官や兵を送り込まれ村が終わる!何よりこれまで召喚勇者様に慰み者にされた村の娘達の犠牲が無駄になってしまう……」

「そうか、まいったな……じゃあ奴らが討伐に失敗した時は俺に任せてくれるかい?」

「まあそれくらいは……しかし召喚勇者様に倒せなかったティラノドラゴンをお主が倒せるとは思えんがのう……悪いがお主が召喚勇者様より強いようにはとても見えんのじゃ」

「ありがとう。それでいい。ところでいのか?村の女達を召喚勇者に差し出すなんて狂喜の沙汰とは思えない」

「どうしようもない。依頼関係無しに、どのみち勇者法により、求められて夜伽の女を差し出すしか無いんじゃ……」


 なるほどそういう事か。召喚勇者達がこの村に来た時点で詰んでいたんだな。


「そうか、この国にも勇者法が……辛いところだな。ああ、そうそう。ミヤビという女の子がこの村にいるだろう?渡したいものがあるんだが」


 そう言って、俺は薬草がいっぱい詰まった袋を見せた。


「こ、これはレイミア様の薬草じゃないか!おまえ、これをどこで!?」

「どこでって……ラミアの森だが。ミヤビって女の子に届けるようレイミアさんに直接託されたんだよ」

「そうなのか?まさかこのタイミングで薬草が入手できるとは!さっそくミヤビ様に合わせましょう。ついてきて下され!」


 俺は村長の後に続き、ミヤビのいる畑へと向かっていった。


「ミヤビ様……様ねぇ?普通の女の子じゃないのかな?」







 ◆その頃のヒロキとアカリ


 ― ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


 相変わらず猛吹雪のアストラ山脈!

 祐樹と朱里はアストラ山脈のラミアの祠にて足止めを食らったままだった。

 祠の周りは朱里の炎の魔法により完全に除雪され、地面が露にされている。

 その祠の前で祐樹と朱里は膝を抱えてチョコンと並んで座っていた。


「アカリ、少しくっ付いていいか」

「うんいいよ、この吹雪っていつ治まるんだろうね」


 ヒロキはアカリの背後に周り、覆いかぶさるように座り直した。


 一向に止みそうにない吹雪。

 アカリの張った|ストライバー《魔法障壁》の向うは、視界1メートル以下の世界だ。

 そんな状況の中、じっとしているのが苦手なヒロキは、何かすることは無いかとソワソワサワサワしてアカリに迷惑をかけている。


「なぁ、ちょっとアリサに信号送ってみろよ」

「また?この吹雪じゃ無駄だと思うけどなぁ」

「いいからいいから」

「はいはい」


 アカリは例の通信機をゴソゴソと取り出した。


『こちらアカリ、応答せよ。オーバー』


---- ・・-・ ・・・ --・-- ・-・・ --・ ・-・-・・ / ・-・・・ ・・- ・・-・・ ・・- ・---・ -- ・-・-・・ / ・-・・・ ・--・- -・・・ ・・ ・--・- ・-・-・・

 ツーツーツーツー トントンツートン ………


 アカリが通信機に話しかけると、途端にそれはモールス信号に変換されて送信された。

 キチンと受信されれば信号はテキストに返還され、アリサの通信機にメールのように表示されるはずだ。

 しかし――


 ― シーン


 案の定、返信はなかった。

 やはりこの猛吹雪では信号は届かないようだ。


「やっぱり駄目みたい」

「ちぇ……|ユーシスとアリサ《あいつら》無事かなぁ……」


 彼らが動き出せるのは、やはりまだ少し先のようだ。




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【ラミアの巫女ミヤビ】


「あそこじゃ。ミヤビ様!」


 村長は指さす方向には畑にて何やら作業をしている少女の姿があった。

 見た目は十代中頃、もしかしたらもう少し若いかもしれない。

 色白な素肌に紺色の髪がよく映える清楚感溢れる美少女だ。

 しかし村長や村人から“様付け”されているあたり、見た目とは裏腹にただ者ではないのだろう。



「村長さん、どうかしましたか?えっと、そちらの方は?」

「初めまして、ミヤビさん。僕の名はユリウスと申します。レイミアさんから荷物を扱って来ました」

「初めまして、ミヤビです。お姉さまから荷物ですか?……あら、薬草じゃないですか!それに手紙も」


 お姉さま?レイミアさんの妹なのかな?しかしこの子にはちゃんと足があるし……?

 俺が疑問に思っている間に、ミヤビは手紙に目を通した。

 そして目を丸くした!


「ミヤビ様、どうかされましたか?」

「村長さん、こちらのユリウスさん、いえユリウス様は隣国の方ですが、決してぞんざいな扱いをなさらぬ様願います」

「隣国?お主、外国人じゃったのか!」


 露骨に村長の俺を見る目が変わった!

 人のよさそうな村長だったが、やはり排他的な気質はあったようだ。


「村長さん、大っぴらには出来ないのですが、ユリウスさんの正体は…………」

「なんですとーーーーーーーーーー!?」


 村長はミヤビ以上に……それこそ目玉がポロリと落ちそうなくらい目を見開いた!


「ちょっと、ミヤビさん!そんないきなりカミングアウトしないで下さいよ!」


 自国でさえ極力正体を隠して来たのに、こんなややこしい国で正体を明かされては困る!

 面倒事は極力避けたい。


「大丈夫ですよ。村長さんは寛容で理解力のある良識人です。口も堅く拡散したりはしませんから。ね、村長さん」

「も、もちろんですじゃ!この件はワシの胸の中にだけ留めておきます。そうかお主は……いや、あなた様は…………!」

「いや村長さん、そんな遜った口調はしなくて結構。それより口外しない件、頼みますよ」


 村長は目を白黒させながら口外しないと約束した。


「改めまして……私はミヤビ。レイミアの妹にして亜神ラミア様を崇拝するラミア族の巫女にして現人神です」


 ミヤビは改めて深々と頭を下げた。

 この村には、【リアース世界の女神ラミア】の亜神時代から【ラミア信仰】が根付いているようだ。




「レイミアさんの妹?しかしミヤビさんには足が……?」


 そう、ミヤビには蛇の胴体は無く、二本の脚がちゃんとある。


「ああ、ご存じないのですね。亜人ラミア族はレッサーラミアとは違い、人間形態に変化出来るのです。ほら」


 ― どろん!


 ミヤビはそう言うと一瞬にして上半身裸、下半身大蛇のラミア形態に変身した!

 しかし大蛇の下半身には戦いで負った大きな傷が……


「ミヤビ様には、この村に現れた三体の復活竜のうち二体までは退治して頂いたのじゃが、残る一体に傷を負わされてしまってな。申し訳ない事ですじゃ」


 村長は両手を合わせてミヤビを拝みはじめた。

 復活竜を二体も倒した!?

 巫女と言うだけあって、ただのラミア族の娘ではないわけか。

 もしかすると、俺よりもずっと年上だったり……?


「それが討伐依頼にあったティラノドラゴンというわけか。ミヤビさんの傷は大丈夫なの?」

「日にち薬ですね。不覚にも【邪竜の呪い】を受けてしまって、薬草や回復(ヒール)が効かないのです。あと数日で自己解呪できそうです。戦うのは無理ですが、村に結界を張って瘴気を防ぐくらいはなんとかやってます。あと外の畑の浄化なども……それでは早速……」


 ミヤビはほんの数メートル先にある村の境界線の外に出た。

 そこにも畑があるが、瘴気にやられ土は腐っている。

 ミヤビは万能薬として使えるラミアの薬草を一握りして――


「|シャフン《創造》、浄化の雨!」


 そう叫ぶと、俄に空が曇り、豪雨が降り始めた!


「な、なんだぁ!?」

「ミヤビ様の浄化の雨ですじゃ!これで田畑が蘇る!」


 いやそれより、あの子は確かに|シャフン《創造》と言ったぞ!?

 なぜ瑠香と陽子の技をミヤビが使えるんだ!?

 土砂降りの雨は唐突にピタリと止み、同時に濡れた身体が急速に乾いていく!

 そして腐れた大地は見事に浄化された!


「ふぅ、あとは|召喚勇者達《あの者ども》がティラノドラゴンを退治出来れば万事解決なのですが……」


 いくら大地を浄化しても、ティラノドラゴンを打ち漏らせば、瘴気汚染と浄化のイタチごっこが続くわけか。

 それより聞き捨てならないワードが……


「ミヤビさん、さっき|シャフン《創造》と言ったが、なぜその魔法を使えるのです?俺の……いや、僕の知る限り、それはリアース世界からの召喚者のみが使える魔法だと思っていたのですが」

「ユリウスさん、私にはもう少し砕けた口調で話して貰って結構ですよ」

「そうは言っても……」


 チラリと村長を覗く。


「ミヤビ様がそうおっしゃられているのだから、問題は無いですじゃ。儂のことも呼び捨てで大丈夫です」


 ふむ、村長もそう言うのなら――


「なら普通に……さっき言った|シャフン《創造》の件なんだが――」

「|シャフン《創造》はリアース人だけが使えるワケじゃありません。亜神ラミア様を信奉するラミア族の巫女なら使える者もいるのです。もっとも威力は弱く、何かを糧としないと機能しない機能限定版ですけどね」


 要は高度な錬金術みたいなものか、なるほど。

 無限の神通力と魔力を誇る【瑠香と陽子】のようにはいかないんだな。




 その後、村長とミヤビに連れられて、俺は村の中を巡り歩いた。

 村長は、会う人会う人に『この方はミヤビ様とレイミア様の大切で重要な御友人だから』と言って紹介してくれた。

 すると余所者を拒むはずの村人たちは、みんな手の平を返すように態度を改めた。

 どうやらこの村にとってミヤビとレイミアは、現人神のような存在らしい。村人達の信仰心が半端ない。


 それから村長宅で、ティラムドラゴンの詳しい話と、リットールの政都、さらにはアドレア連邦の状況について、いろいろな情報を得ることができた。

 その日はそのまま村長宅に泊まらせて頂いた。




 翌朝――

 聞いていた通り、召喚勇者達はガイドの男三人を連れて、意気揚々……いや、眠そうな顔で面倒くさそうにティラノドラゴン討伐に出撃したのだが……


「熱いいいい!いでええよぉおおおお!」
「身体が腐る!助けてくれぇぇええええ!」
「い、息が……誰か傷の手当を!がはっ!」


 昼にもならないうちに、召喚勇者一行はボロボロになって戻って来たのだった。



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