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ホームベーカリーと戦争。

友人に軍事マニアがいるのですが、特にその人は軍隊のご飯(ミリ飯って言うの?)に明るい方でして。

つい先日、その友人からミリ飯を自炊したから食べにおいでと誘われ、友人宅にて夕食を共にすることになったのです。

ところで、これを読まれている皆様につきましては、ミリ飯と言うものを食したことはありますでしょうか。

軍隊のご飯と聞いて皆様がどのような味を想像されるかは判りかねますが、私の知る限りあまり美味しいものとは思いません。

特にアメリカのレーション! 確かMREレーションって言ったと思いますが、あのパウチに入った油ギトギトの得体の知れない肉の味。あれは最悪でした。(唯一の救いはレーション付属のM&Msチョコ)

自衛隊の食事は美味しいと聞きますが、まだ食したことがないので何とも。

私のミリ飯好きの友人に付き合って、MREレーションに限らず他数カ国のレーションを頂いたことがありますが、まぁ美味しくないこと。

基本的にミリ飯とかレーションというものは基地ではなく戦場にて頂くものと認識しておりますが、あんなもん食べたら戦う気力も無くなるもんじゃないんですかね。(MREレーションは美味しい部類らしいけれど、アメリカ人との味覚の違いかしら。私には無理)

ゆっくり食べる時間の無い戦場で、手早くカロリーと栄養を補給出来るという意味では、確かに理想的な食事なんでしょうけれど。

そんなこんなで散々ロクでもないものを食べさせられて来た私は、あんな不味いもの二度と食うか! と毎回決意しながらも、何故か誘われると心躍らせて楽しみにしている自分がいるのです。(あの不味さがいいというミリオタの心情に近づいているのかしら)

かくして私はまたミリ飯食事会に呼ばれて行った訳ですが、なんと今回は自炊。

今までは既製品(というか軍の放出品?)ばかりでしたが、友人の手作りともなれば期待値も高まります。

だってわざわざ自分の家のキッチンでクソまず料理するんでしょ? そんな狂気の沙汰を間近で見たいと思うのは普通のことじゃありませんか。

という訳で、期待で胸を膨らませる私に友人が振る舞ってくれたのはなんと! あの悪名名高いゲキまずパンこと「Kパン」でした。

カルロ・ゼン先生の「幼女戦記」を読まれた事がある方ならK-Brotの名前で親しみがあるのではないでしょうか。

Kパンとは主に第一次世界大戦頃、帝政ドイツにおいて軍を中心に支給されていた戦闘糧食の一つです。

これがどんなものかと言いますと、当時第一次世界大戦の予期せぬ長期化によってドイツ国内の小麦粉(とかライ麦)が不足し始めます。小麦粉が無くなれば主食のパンが作れなくなりますし、パンが食べられなければ戦争も出来ません。

そこで編み出されたのが、パンの小麦粉の分量を減らし、減らした分だけ粉末にしたジャガイモを混ぜたパン。まさにK(Krieg=戦争)パンなのです。

このKパン。最初はまぁまぁの評価(美味しいとは言っていない)だったようですが、戦争が進むにつれてジャガイモ粉の分量増加やジャガイモの品質低下によって、兵士の間でもゲキまず最低の評価になり、やがてはジャガイモすら調達が難しくなっていったようですが、今回は割愛。

ともかく私はこのKパン。噂の不味いパンを食する機会を得たのです。

なんと友人は自宅のホームベーカリーで作ってくれまして。ライ麦と小麦粉とジャガイモ粉のパン。

自分で不味いものを作る為にわざわざ材料揃えてホームベーカリーまで買っちゃって。ミリオタの執念はまさに恐るべしといった感じです。

さて、この友人自作のKパン。この記事に写真が載せられないのが実に残念ですが、見た目はぶっちゃけ、良くあるドイツパンです。普通に美味しそう。パン特有の焼き立ての香りが鼻腔をくすぐり食欲をそそります。

ですが、相手は悪名高いKパンです。兵士たちが塹壕で戦うよりもKパンを食べる方が辛いとまで言わしめた(言ってない)あのモンスターなのです。見た目と匂いに騙されちゃいけない!


まぁもう予想ついていると思いますが、普通に美味しかったですよ、はい。

だってジャガイモは1917年ドイツ産じゃなく純国産の北海道のジャガイモですもの。

普通に美味しい。ドイツパンとは確かに食感が違って、やや硬いかな? と思う程度。味は申し分なし。

はっきり言ってガッカリ。「俺は不味いもん食いに来てんだよ! 不味いもん食わせろ!」と暴れたくなります。

ただただ友達の家で焼き立てのパンを振る舞われただけ。なんですかねぇ、これは。え? それが普通?

それにしても、ホームベーカリーって凄い。

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