• 現代ファンタジー

リマリア夢日記3「おもちゃのからだ」

夢。それは夢で良かった。

私は気が付くと手術台の上にうつぶせになって寝ていた。
それが夢なのか現実なのかという区別もあいまいだ。
周囲が話している内容からすると脳神経手術をしているらしい。

医師らしき人物が頭に何か棒のようなものを突き立てたのを感じた。棒のようなものは細い管のようだ。
さらにその管の中に何かを挿入していく。カテーテル術式のようなものだろうか。

神経に?

挿入されたものが頭蓋骨の内側に入ってくる感触がある。頭の一部がガンガンする痛みに襲われ眼の奥が刺激されるような気がした。

その瞬間、右目だけに自分の記憶の中にある景色がいくつかフラッシュバックする。
手術を受けている身ながらもなぜか流ちょうに喋ることが出来たので、今何が見えるのかなどを言うと医師は困惑した声で「そんなはずはない」と言っていた。

それからどの程度の時間が経過したのか。
手術が終わったというので私は自力でうつぶせの状態から起き上がる。
その時だ。明らかな異変を感じたのは。


手が。足が。
木で作られたおもちゃになっている。


腕を持ち上げるとジャラジャラとした指先を模した木の塊が垂れ下がる。
妙にリアルな感触だ。
当然、おもちゃの脚となってしまった自分の脚で立つことは出来ない為すぐに転んでしまった。
その後は医師の助力で車いすに乗せられたと思う。

間もなく、医師から鏡を見せられた。
そこに映っていた者は見慣れた自分の姿ではない。


おもちゃだ。


クマの顔のようなデフォルメされた木彫りのおもちゃの顔が首から上に取り付けられている。
ここで四肢と頭が挿げ替えられているのだと悟った。

私は多少は驚いたが、しかしすぐに『そんなこともあるか』と気を持ち直した。
なんとなくこれが夢の世界であると自覚できていたからだろう。

車いすに乗せられた私は病院の廊下へ出された。医師が車いすを押して別室へ移動する。
途中で似たような "元は人間であったもの" と思われる何かとたくさん遭遇した。

私はその人ではなくなった人の背中を叩きながら『よくやったね』と意味の分からない言葉を言っていたと思う。

結局、その夢はそこで終わりを迎える。


現実に目覚めた時、部屋の天井を眺めながら右目の奥と頭がグシグシと痛んだ。
この夢に、どんな意味があるのかは今でも分からない。

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