"あらゆる葉が花である秋は、第二の春である"
"Autumn is a second spring when every leaf is a flower. "
アルベール・カミュ
間もなく秋ですね。
食欲の秋、創作の秋。秋の暮れ生まれの私にとっては、1年を通じて最も好きな季節です。
そして地元、広島では宮島が色鮮やかに染まる季節でもあります。
宮島に渡ったら焼き立て・揚げたてのもみじ饅頭も良いのですが、お土産コーナーにある瀬戸田レモンを使用したケーキも美味しくてついつい買ってしまいます。
さて、そんな食欲、もとい創作の秋を迎えるにあたって、私も新しい小説の執筆に取り掛かろうと思います。
タイトルは……
【メランコリアA -崩壊の冠-】
この小説に関する想いや内容の一部をここでは書き綴ろうと思うのですが、先に言っておきます。
次の小説はお話自体が非常に【重たい】です。
なぜならば、テーマとして取り上げるものが
〈精神世界〉
〈戦争〉
この2つであるから。
加えて、過去の私の作品をお読みいただいた方にはピンとくるかもしれませんが、物語の主人公となるのはこれまでの話で伏線が敷き詰められている〈アンジェリカ〉です。
☆彼女の人物像などについては過去作品をぜひご覧くださいませ☆
https://kakuyomu.jp/users/limaria_novel/works※下記作品にてアンジェリカは登場します。
・アイリス・プロセス -虹の彼方に-
・眠りの妃 -嘆きの大地賛歌-
・不可視の薔薇 -ウェストファリアの亡霊-
私の作品群では、初期の〈イベリスの箱庭〉を除いて、ひとつの作品につき現実世界に実在する社会問題をひとつ取り込むようにしています。
・Re:Maria → 難民問題
・アイリスプロセス → 薬物問題
・眠りの妃 → 環境問題
・不可視の薔薇 → 宗教対立
そして次に公開予定の作品が
・メランコリアA → 戦争問題
となります。
もう字面だけでずっしりした感覚が想像出来るかとは思います。
精神と戦争。
切っても切り離せないこの二つを、アンジェリカという少女の人生体験を通じて描くつもりです。
それでは、タイトルの意味や登場人物のお話と、本編の中身について少しだけ語ろうと思います。
まずはタイトル。
〈メランコリアA -崩壊の冠-〉
メランコリア、またはメランコリーという言葉は「憂鬱」「うつ病」を指して使われます。
精神状況を表す言葉で古代ギリシャが発祥とのこと。
この言葉に付随する〈A〉というアルファベットはもちろん〈アンジェリカ〉のAです。
加えて、ジャック・ラカンの提唱した【対象a(object a)】を掛け合わせています。
対象aについての概念はさておき、この言葉は【人が生涯を通じて求めるもの、想像と現実の狭間にあり、欲動によってその人物が求めるもの】といった意味合いがあるそうです。
アンジェリカは、長きに渡って世界を生身で生きてきた少女であり、この世界が紡いできた歴史をその目で見て、肌で感じて、その記憶に焼き付けています。
メランコリアAは、そんな彼女が自身の経験を通じて辿り着いた【理想】と【現実】、さらに自身に与えられることが無かった【愛】というものの答えを、自らが起こす行動によって知る為のお話です。
加えて、これらのモチーフは彼女が使う異能【絶対の法(レイ・アブソルータ)】(想像と現実の中間地点にあるものを【真実】として具現化する能力)というものの概念として表されます。
【アンジェリカという少女の目に映る世界】
をしっかりと描いていこうと思います。
これまでの本編でも、国際連盟に所属するマリアの口から度々言及されていますが【正義と悪は、己の立つ立場によって如何様にも姿を変えるもの】という言葉の意味を改めて感じられるような内容とするつもりです。
また、アンジェリカは過去、イングランドに存在する【世界最古の精神病棟】である、【王立ベツレヘム病院】にいました。
詳細は作中で描きますが、その病棟でのある出会いが彼女の精神世界に多大な影響を及ぼすこととなります。
不可視の薔薇の作中で彼女が美しく歌い上げた【グリーンスリーブス】。
叶うことのない【愛】を謳いあげる詩ですが、「誰が・どうして」彼女にこの歌を教えたのかなども明かされます。
サブタイトルの【崩壊の冠】については、彼女のモチーフとなっている花の造形が関与しています。
彼女の姓である【カリステファス】ですが、これは【アスター】という花の学名です。
アスターは見た目が王冠のように見えることで有名で、さらに誰もが耳にしたことがあるだろう「すき・きらい・すき・きらい」の花占いの元になっている花でもあります。
少し余談ですが、私はリナリア公国出身のキャラの中で女性たちの名前には必ず花をモチーフとした意味合いを込めています。
イベリスはイベリス、マリアはマリーゴールド、ロザリアは薔薇、アルビジアはネムノキ、アイリスはアヤメといった具合で、それぞれの持つ花のイメージや花言葉をキャラクターイメージにそのまま反映させています。
当然、アンジェリカもモチーフであるアスターの花をイメージに落とし込んでいます。
そんなアスターの花言葉は多岐に渡りますが、一番印象に残る言葉はやはり
【私の愛は、貴方の愛よりも深い】
でしょう。
色々と設定を考える上で、初めてこの事実を知った時、私の中で感情が揺り動かされる感覚を覚えました。
「私はただ、誰かに必要だと言って欲しかった」
と言うマリアとは別の意味で救いが必要なキャラクターであるとも考えています。
他に、他のリナリア公国の女性キャラクターと違って「アンジェリカだけ」名前ではなく姓に花の名前が用いられていることにも当然意味があるのですが、それは語るべき時が来た際に語ることにしようと思います。
愛を知らない と嘯く彼女。
誰よりも愛を欲して、誰よりも愛を拒む少女。
誰よりも業が深いにも関わらず、誰よりも罪のない少女。
そして、世界の誰よりも愛を守ろうとした少女。
そんな矛盾だらけで一見つかみどころのない彼女の狂気の精神世界と、戦争のお話【メランコリアA】はまもなく執筆開始です。
続いて、作中で登場する新キャラクターの名前と国家について簡潔に記載します。
舞台となるのは世界中全て。中でもとりわけ焦点を当てるのは架空国家である【グラン・エトルアリアス共和国】。
国土面積1500平方キロメートル、人口20万人、1750年に成立した国家です。
北大西洋のほぼ中央に位置する極小の島国。
国土規模で言えば作中に登場する【リナリア公国】とほぼまったく同じです。
グラン・エトルアリアス共和国はイギリスの産業革命より先んじて科学技術が発展した国家で、本国周辺に存在するメタンハイドレートの抽出による資源確保と運用の実用化によって、石油資源に頼らないエネルギー源の確保を行い、先進の科学技術を他国へ供与することで大きな発展を遂げた国家という設定です。
現在、グラン・エトルアリアス共和国は大統領である〈アティリオ・グスマン・ウルタード〉が中心となって国を治めますが、実態は違います。
政府の裏から総統となっているアンジェリカが外交・軍備について取り仕切っています。(内政にはあまり関与していません。)
エトルアリアス公国は、エトルアリアス島の先住民と大航海時代に同島に辿り着いた(西暦1450年)スペインの人々によって西暦1460年に成立しました。
グラン・エトルアリアス共和国の前身となる同公国時代は【貴族共和制】を敷いた国家でしたが、共和国成立と共に【共和制】(民主共和制)へと移行しました。
また、グラン・エトルアリアス共和国には、前国家時代に国を治めていた貴族が存在し、御三家と呼ばれています。
その貴族の末裔である4人がアンジェリカの腹心となって、彼女の理想という世界実現の為に動きます。
貴族4人は【不変の掟 -テミス-】と呼ばれ、アンジェリカに忠誠を誓っています。
それぞれの名は
●リカルド・ランバス・ノームタニア(総統補佐官)
●シルフィー・オレアド・マックバロン
●アンディーン・ナイアス・マックバロン
●アビガイル・ウルカヌ・サラマドラス
不可視の薔薇の終節において、グラン・エトルアリアス共和国は国際連盟からの脱退、核兵器禁止条約の反故、世界特殊事象研究機構との協定放棄などの行動を起こし、いわゆる【戦争への道】を歩み始めました。
勧告や経済制裁を周辺大国から浴びせられながらも、頑なに戦禍へと突き進む同国、そしてアンジェリカの目的。
彼女の目指す理想を作り出すために、それぞれの人物がどのように動くのか、ご期待頂ければ嬉しい限りです。
今回の執筆にあたっては、少し今までとは違った物語の書き方をしようと思いますので、公開日は未定ですが、年末から来年初頭にかけて何らかの告知は出来るのではないかと思っています。
それでは皆様も、よき創作ライフを!
……少し言及しておきたい内容があるので追伸。
尚、これは創作の中の設定上の小話ではあるのですが、各物語の主人公、つまりリナリア公国出身人物の名前にはちょっとした仕掛けがあります。
公国七貴族の末裔であるキャラクター達を並べ、その頭文字を読むと
(L)●レナト・サンタクルス・ヒメノ
(I)●イベリス・ガルシア・イグレシアス
(M)●マリア・オルティス・クリスティー
(A)●アルビジア・エリアス・ヴァルヴェルデ
(R)●ロザリア・コンセプシオン・ベアトリス
(I)●アイリス・デ・ロス・アンヘルス・シエロ
(A)●アンジェリカ・インファンタ・カリステファス
【LIMARIA】
私の創作ネームです。
この一連の物語にかける想いなどを込め、自身の名前を刻む【何か】が欲しいと思い、このようなちょっとした仕掛けを施しました。
以上です!