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インド起源系メモ

インド起源関係

 呉均『続斉諧記』 陽羨の許彦が一介のガチョウ売りだった時、一介の書生に見える物体がタクシーに乗るやうにガチョウの籠へ入らせてくれと言ふので乗せると、特に問題なく、てふかガチョウは鳴かんは重量も感じないはだが彦さんそのままぽくぽく歩く。適当な樹下で止まる彦さんの、籠から書生さんが出てくる。さらに彼は口から蓋つきの箱と娘を吐き、箱から色々出していちゃいちゃと宴会をして礼とした後、書生さんが寝るのを見計らった娘、実はひそかに彼ぴを持ってきてるといって吐き出し、いちゃいちゃする。そして娘が寝ると彼ぴが「実は娘を連れてまして」でアレをナニする。こっちは全部丸く収まる。
 原典つうかネタ元である呉の康僧会訳『旧雑譬喩経』上ってインドの奴。ある国の王子が、おかんの淫乱(お外で皆さんへ顔を見せるだけ これは南方熊楠によれば汎東アジア的に破廉恥行為らしい)に絶望し国を逃げ出し、どっかの木の上でのほほんとしてゐると木の下へやってきた梵志がなんかして壺を吐き、中から娘さんを出してよろしくやった後寝る。と娘さんが壺を吐いて中から彼ぴを出す。そのあといろいろあって何とかなるのを樹上で見てた王子、女性のアレにため息をついた後、おうちに帰って梵志を召喚、壺とそのマトリョーシュカ地獄を開陳し、女性なんてこんなものだと説く。インド人ミソジニー。

 南方熊楠説で、この「口から人を吐く」と鉄拐仙人(トンファーで有名であるが幽体離脱の大技も修める)が霊魂を出すてふのとが日本で合はさって、コピー能力としての鉄拐が爆誕したらしい。のでなんか、兄さんがイケてる美少年吐くとか、娘さんが女性を吐いてえちちな真似するとか、といふ記述のある文献が散見されるさうである。

 瘤取りぢいさん 支那とか朝鮮とかアイルランドとか、結構傳播しとる。南方熊楠先生が、瘤取り譚をインド起源シャムブハダッタの『起尸鬼二十五譚』で蒙古とか経由で支那を経て来日説を披露してゐる。で南方先生とWIKIが無視してゐるもの。

 ドイツ 背中に瘤のあるヴァイオリニストの若者フリードリヒが、娘アガテへ求婚するが親にダメと言はれ、失意のうちに野原へ行くと魔道士が集団で宴会をやってをり、皆さんが音楽士としての彼へ弦楽器による演奏を依頼する。若者の使ふ魔道ヴァイオリンは結構良い音楽を奏でるので、魔道士族盛り上がる。報酬で瘤取ってもらって金銭ゲットした若者、嫁を貰ふ。瘻付き音楽家同士のハインツ、アレをナニして魔道士族を怒らせ、瘤が付く。リアルが充実したフリードリヒの方、瘻付きの若者を保護しました。めでたしめでたし。(水木しげる『世界の妖怪百話』)

 オーストリー ケルンテン州 或る、背中に瘤のある音楽士の兄さんが、お金持ちの娘さんへ求婚するが体と経済的なアレを言訳に親から拒否られる。失意のうちに野原へ行くと、魔道士族が夥しく集まって合唱してゐるが、彼のパートがゐなかったので入ってみる。結構なイケヴォで結構盛り上がった謝礼として、魔道士族の人は彼へ瘤をとって結構な金銭を渡す。それを娘さん家へ渡して結婚した人を見て妬ましく思った欲深兄さんで瘤付きのコントラバス奏者、魔道士族のゐるところへ行ってろくでもない曲を披露する。キレた魔道士族は彼へ瘤をつける(『世界の民話』オーストリア編)。小沢俊夫先生がこの話を紹介する際「瘤取り爺さん譚と似てますね」で終る評を。

 インド起源繋がりで『蒟蒻問答』はインドで発生し禅宗の如き、ジェスチャーで問答してた頃のキリスト教圏でも出る。ただ南方大先生も昭和に至るまで支那の類話を発見できず、オランダ経由で来日説に行く。東アジア―。南方説では、グローバルに行く割に国内の体系がアレ、と言ふのが妖怪関係の研究家による指摘であるが、この関係も、禅宗の僧侶が、無茶ぶりされるんで困ったら通りすがりの餅屋が応じ、どうたらと言ってみると、ザンジバルにもあるとかの他「それ蒟蒻問答ぢゃね?」といふのが多数来たと。WIKIで蒟蒻問答の古い奴が南信の方にあったってな(若干うれしい)。

打出の小鎚 水木しげる『世界の妖怪百物語』で「朝鮮半島」の話として出てゐるが、新羅の話として収録されてるのが『酉陽雑俎』
 ある貧乏なをっさんが鳥を追って山へ入り、若干開けたところで野宿をしてゐると、日が暮れるのと同時に赤い衣の稚児共がいっぱい出てきて、適当な岩から槌を出し、それで岩を叩いてほしいものを出して盛り上がる。隠れてみてたをっさん、ガキどもが帰った後にそれを盗んで大儲けしましためでたしめでたし。南方熊楠によれば、この話の起源はインドらしい。シャムブハダッタの『起尸鬼二十五譚』とソーマデ―ヴァ『屍鬼二十五譚』の関係、南方大先生が引く『桜陰腐談』が謎。

 大黒様の槌はガネーシャの者といふのがー、南方熊楠説で―、確かあった。大黒天と多聞天と弁才天の三神合体イコンは結構あるらしい。大黒様が太極様であるとする吉野裕子説、えー、さう言ふとマハーカーラが支那の五行説てふか陰陽説バイアスでアレするのだがえーと。

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