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紐でポン

ガーターは元々、男性の者だったらしい。いつ頃から女性の靴下止めになったのかはえーと。スペイン北東部にある新石器時代の絵に、膝にガーターぽい物を付けただけの男性の周りで九人の女性が囲んでゐる絵がある。これは多分なんかの聖なる装束のアレらしい。

 ガーター勲爵士団
 Order of the Garter ローズマリ・エレン=グィリー『魔女と魔術の事典』100頁

エドワード三世が、1344年から構想を重ね、1350年聖ジョージの日に設立。多分普通の勲爵士の集団なのだが、26人体制で、12人をエドワード王と皇太子殿下が率ゐるので、1人のディーンと12人のキャノンで構成される魔女組織と関連付ける人がゐる。
三位一体と証聖王エドワードと聖ゲオルギウス(イギリスの守護聖人)と処女マリアを敬ってゐるので、Order Of the st georgeとも呼ばれる。ガーター勲章とする訳はなんかで無視。

 なんぞガーターには、悪魔的な意味付けがなされるらしいので、二十世紀になっても、ソールズベリ泊夫人がエドワード3世陛下と踊ってゐた際にガーターが落ちたので王陛下がお拾ひ遊ばしご自身のおみ足へはめて「悪しき考えを持つものは恥じ入るべし」と言ったとかの傳説があるこれは、ソールズベリ伯夫人が魔女であるとか言はれる。

 ポイント Pointes 端に鎖の付いた紐で、16~7世紀の服の留め具。ガーターとともに一般的なものの筈であるが、悪魔の装束のお約束であると言はれる。

aiguilette REグィリー『魔女と魔術の事典』訳では通常訳「飾緒(しょくしょ)」と区別して「飾り緒」とする。リガチュア(Ligature)とも呼ばれる。糸を結んで環にしたもので、十六世紀のフランスで、魔女がこの輪っかを作って結婚生活がダメに、不妊になり、あるいは不倫が起きるやう、祈ったとして恐れられた。教会で司祭が結婚を祝福する後ろで、魔女が、糸を結びこれ作って魔王の名を叫びながらコインを落とすと言はれる。コインが見つかればよいのだが見つからないばあひは悪魔が持ち去り、夫婦間には不幸、不妊、姦通が来ると信じられた。暴力機構からの解放を説く人の施設で、なんで邪悪とされる人がさう言ふアレを一生懸命やってるのかはアレであるが、ラングドックなんかでは十%ほどの新婚さんが教会以外で婚礼が行ってとか、人口がどうたらとか言ふくらゐにビビってたらしい。

 日本で―、なんかーさういへばー、ひもは即ち「霊裳(ひも)」で、中臣であったころの藤原氏は、そのマナ・アーティファクトみがある霊裳たるふんどし系を貴者へ付ける職業であったと言ふ折口信夫説へお弟子の皆さんがなんか言ってた気がする。
 長野のどこぞにあるサネカズラといふ女性用のふんどしと、「マハシ」が元来「女のふんどし」を指す呼称であったとする南方熊楠説を、うーんうーんうーんうーん。憑き物であるスイカズラは、水木しげる先生は囲炉裏端でコロコロする丸い者として描いてゐるが、谷川健一説ではこれは「すい蔓」であったさうな。

『エゼキエル書』13:18~「諸々の腕の関節につけるケサトートを綯いなんとかかんとか」
 シナイ半島の娼婦が「体にひもを巻き付ける」とする例に、エゼキエル書のこれを上げるアト・ド=ヴリース『イメージ・シンボル事典』ではルターの「枕」とする訳を採用し「Pillow」の項目でも紹介してゐる。教文館刊『旧約新約聖書大事典』ではこの「占い紐」(「Zauberbiden」@「魔法の紐」とするドイツ語訳も収録)は、「包帯か小箱」のやうなものであったとし、ルターのそれは誤訳であるとする。マルチン・ルターが「けしからん」衣装として腕にばふばふしたものの付いたものを想定した可能性が。ド=ヴリースはかういふ聖書での異教のざっくり説明に「テキストその物の姦淫」を指摘するが、魔除け的な意味付けがされるぽいぴったりフィットのフードをつけ、ありがたいものが入ってさうな箱だかの付いた袖の衣装でなんかやるってふのがあの辺にだばーんてあって、モーセってふ××××が、さう言ふのを体系化した上で絶対者をアレして何したのがアブラハムの宗教なんではないかいなとか思ったり。ラビもなんか箱を腕に付けてるんだよな。
 岩波聖書翻訳委員会の見解で、エゼキエル書のこの巫女が仕へるなんぞの語は旧来「萌え出る」系のであったがこれでは説明できないとして「飛ぶ/走る系」あるいは「切り刻む」を指す語と想定し翼を持ってなんかする悪霊の写真を載せ、「切り刻む者たちのために」うんたらかんたらと書く。てふかソレでググるとWIKIのコピペがえらいことhitする。「萌」は、たみ くさぎる の訓はある。「飛ぶ」がない。

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