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消費財を拾う

筒井康隆『虚航船団』でのアレ。

 滑稽なしぐさで相手を自失させ、たちまちのうちに倒す技を持つイイズナとか、蠱惑的な踊りで相手を幻惑し茫然とするそれへ踊かかって倒す、気性が荒く決断力があるオコジョとか、も博物学的な見地からのアレだよななんか。
 
 売春婦への刑罰トリオセ・メンデフラは、いはゆる普通のスプラッタでとどまらず、当初そこそこその水生生物をかみ殺してゐる囚人が、後に全滅するまでを紹介する他、最も貧しい一族であるテンが、その処刑の一部始終を(刑罰が見世物的なものだったのはガチの史実で存在した筈)ポルノ代りに鑑賞しまくり、かつ、テンその物が処刑場を出禁になったのを遠因として後に立ち上がり抵抗し逮捕された際にメンデフラの餌になるまでを描く。
 なので『メタモルフォセス群島』の作者入魂但無名の植物をエロネタにするのは可能の筈である。

 船団司令艦へ食物系を見に行ったごはん担当の人(超絶的やんちゃちんぽを持余す糊)が、アレする際の、閉鎖系。
 新種の単細胞緑藻(大豆の九十倍近い蛋白質を持つが酸素生産量はそこそこ)>>新種のミジンコ>>新種のカタクチイワシ。

 流人の惑星クォールへ流された服役囚の末裔はグリソン、タイラ、イイズナ、オコジョ、クズリ、スカンク、ゾリラ、テン、ミンク、ラーテルの十種を主とするが、単行本の方P183に、少数民族として「カワウソ、ラッコ、アナグマ、フェレット、ケナガイタチ」と「数名のシマウマ」がでる。「麝香猫の一種」で「どういうわけか」服役囚として流されて以降、鼬族の歴史に占師として介入しまくるスリカタ姉妹は劇中でかなり活躍みたいなのをするのに対し、シマウマが劇中で実在するとしても都市傳説扱ひ。また、水担当、海戦関係はミンクやゾリラが活躍するので、獺やラッコはここ以外に一切登場せず。

 イイズナが経営する島エコノスは、ソレの前の今日泊亜蘭『光の塔』やちょっと後発表の『トップをねらえ!』でみられる「日独ユニオン」みが何となくある。日独ユニオンに、『高い城の男』とかは入らないで良い筈。

 エコノス史の、百五十年間カリカチュアライズされた封建制度を行ってゐたこの島が、諸外国による海岸の都市への砲撃と、内側からエコノス尊皇国粋党の唾棄すべき活動により開国させられ、ヘド幕府の虐殺から免れ得たエコノス尊皇国粋党の志士ヒドラによるいろいろと他で、スカンクの大虐殺なども成し遂げつつ、異常な速度で科学を発展させ、十五年戦争へ突入、敗戦して復興後、ヴィデオで世界を席巻する。それから刊行直後のバブル景気を幻視するやうなアレが出る(確か1983年は景気悪かった筈)。のやうな、歴史のパロディつうても時々ワープするよなぁ、な点は劇中で指摘されてゐる。

 そんなわけなので鼬族の皆さんは、千年ほど前、宇宙でもふもふし繁殖し虞犯者となり鼻つまみ者として忌避されてゐた頃の技術に関するタラレバ込みの知識が何となく(文献とか他の形で)ある為、いきなり蒸気機関ができたり、機関車の軌条の幅がいきなり物凄くでかく取られてたり、する代りに、内燃機関の発明以前にロケット造れーとか言ふ謎の無茶振りがなされたりもする。スリカタ姉妹は技術的なものに関してのアドヴァイスはやってないぽい。江川達也『BE FREE!』は引っ張り出さんでもいいか。

 なので劇中で言及される澁澤龍彦(筒井先生の息子さんが「三冊も四冊も買ってくる」)作品での「アナクロニズム」が、「その藝を持つ」特殊なナニがゐたりキャラがなんとなく知ってたりするのと対照的に、この辺はちゃんとした言訳で出来てゐるでいい筈。『高丘親王航海記』は刊行が似たやうな頃なんだよな。

天なる鷹神フルツラータ・キームラ、鳶の女神ヒョローワ・ピークルリ、法を司る鷲ゲデンデン・ブラツコワ、知恵ある木菟の神ヒンメンタン・チョンモン、豊饒の梟神アサミヨレ・ヨハゲノマコモ(諸々の神々は鼬頭鳥身がデフォらしい上、鼠鬼と呼ばれる鼠頭鳥身の悪魔的なものがゐる)をパンテオンとし、島流し船が着陸したらしいエマを聖地とする宗教が、汎クォール的に存在する。・・・参考文献に福田恆存先生の本はあるんだよな。『私の英国史』の方。うー、参考資料にある川北稔先生は、後に「英国が“トンデモ本”を根拠に北アメリカを英国領と言張った謎歴史」を追ひかける『アメリカは誰のものか』を著してゐる。あー、文房具の人でネクロフィリアの墨汁は、伝玄といふ仏教徒で、戦場では死体を見て
「歓喜天じあ わしゃ歓喜天じあ」
 とこましまくる他、クルーの葬式も行ふ。ので仏教はそこそこあるらしい。

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