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長く温めている構想を吐き出してみる。#3

前回の続き、というよりも舞台設定の話。

明治、大正初期の日本をモデルにするからには絶対に登場させたい舞台ってのがあって、その一つが鉱山街だ。

兵庫県(私の生まれだからやはり贔屓にしてしまう)には有名な鉱山がいくつもあったのだけれど、そのひとつに明延(あけのべ)鉱山という場所がある。

その鉱山が繁栄した背景ってのが実に面白い。

明延鉱山の近くには生野銀山、神子畑(みこはた)鉱山といった大きな鉱山がすでにあったのだけれど、鉱石の運搬ルートの関係(明延鉱山は鉱石を運搬する際、山を大回りして運ばなければならなかった)から、明延鉱山は一歩出遅れる形となっていた。

そこで施策されたのが、明延と神子畑を繋ぐ5.75kmのトンネル。山を突っ切る形で掘られたこのトンネルに線路を敷き、明延で出た鉱石を電車で運んで神子畑で選鉱する、という方法だ。

このトンネルを明神電車と呼ばれる電車が一日に10往復もして鉱石を運んだ。人を乗せる客車も(一円電車)一日に3往復していた。



このトンネルが完成とされたのは昭和に入ってからなのだけれど、明治末期から大正、昭和にかけてこの一大工事に関わった人たちにはとてもドラマ性を感じる。
泥だらけの鉱夫、火薬にまつわるトラブル、そしてやっとの思いで完成した線路を走る電車(鉱山街の人間は電車をも自作したのだ!)に乗った鉱山街に住む人の笑顔。

そういった住民のリアルな心情を下敷きにして、物語を書いてみたい。

前回の記事で書いた主人公設定でいえば、「二重人格の娘を守る男」をこの舞台に登場させたいと思っていて、妻に逃げられた不器用な鉱夫が二重人格を発症してしまった娘に戸惑っている最中、閉鎖された坑道近くで殺人事件があった、という話。

この時代、鉱山の掘削方法も改革が為されていた筈なので、以前から働く鉱夫と新体制派との間に衝突もあっただろう。そのあたりも描写できれば良いなあ。

※綿密な時代考証と照らし合わせると上記の情報は大なり小なり前後したり間違っていたりするのかもしれないけれどそこはご勘弁。
私はあくまでもこの時代(明治末期~大正)のあれこれをモデルにした物語を書きたいだけなのだ。実際に書く際はこの時代の日本であると明言するつもりも一切ない。

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