レビューこぼれ話と称していますが、今回は勝手ながらあとがき解説的なポジションでお話させて頂く事をご了承下さい。
「難民もしくは開拓者 ーー黒い太陽の下でーー」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887012143水円さんの作品をレビューするのは何度目になるだろうか。
カクヨムに登録した初期の頃からずっとフォローさせて頂いている作者さんの一人で、時には同じ自主企画に参加したり、私の自主企画に参加して頂いたりと比較的交流も多い事から、勝手に「同士」だなんて思わせてもらってたりするーーこの、勝手に「同士」だと思わせてもらっている人ってのがカクヨム内には他数人いて、それぞれ「発想の仕掛人」だとか「会話劇の先輩」だとか、誰に言うこともなく超個人的に通り名まで妄想させてもらっているのだけれど、「継続のおやっさん」と仰がせて頂いているのが水円さんなのである。
今回レビューした作品について語る前にまず水円さんのブログを紹介させて頂きたい。
https://ameblo.jp/mizumaru-gaku/このブログ、驚くべき量の作品が並んでいる。
長編を別にしたとしても短編だけで既に1000作品を越えているのだから、私が敬意を込めて「継続のおやっさん」と呼ばせて頂いている理由もわかってもらえると思う。
構成も面白い。作品の間や最後に花の写真や音楽が添えられていて、言葉通り文章に「彩り」を加えている。
小説、ひいては文章を読む新しい楽しみ方を、このブログは教えてくれた。
「難民もしくは開拓者ーー黒い太陽の下でーー」にもキャッチコピーという形で音楽がなにげなく設定されている。レビューにも書いたけど、本作を読む方はぜひその音楽にも耳を傾けてもらいたい。
きっとその音楽を聞けば、より水円さんの作品世界に没入する事ができるだろう。
作品の内容について語りたいが、ネタバレを回避してどこまで語れるか、少し自信がない。でも語る。
本作では水円さんらしい小気味の良い「ヒネリ」を随所に見る事ができる。
まず目につくのは主人公のアメリカ~ンな台詞だろうか。読者の中には面食らった方もいるかもしれない。しかし、これが実に水円さんらしい。
タイトルの「開拓」、キャッチコピーの「ラスベガス」、さらにアメリカ~ンな台詞となれば、ゴールドラッシュに沸くアメリカの一時代を容易に想像できる。
地球外を舞台にしたSFというジャンルに西部開拓時代のエッセンスを重ねることで「フロンティア・スピリッツ」というものを強烈に意識させるなんて。
したり顔の作者の顔が目に浮かぶ。ニヒヒ。
さらには登場する人物もまた「ヒネリ」が効いている。
血を好む主人公、獣に変化する男、氷の女にハエ男! 現代の文芸を知る私たちにはある種の馴染み深ささえ感じる「特殊な人間」たちではあるけれど、作者は、その個性をただの「特殊能力」とはせずに「理由」を作るのだ。
さらにその「理由」にもヒネリが加えられてーー。ニヒヒ、ニヒヒ。
そして終盤には、まるで物語全体を「ヒネる」ように大きなテーマがぶち上がってくる。そう、前書きの時点で作者はこう書いているじゃないか。
「どうにも妙ちきりんな連中ばかりが吹き溜まっている訓練所の日常と彼らの行く末を、ライトギャグテイストで描きます。ベーストーンは明るいと思いますが、最後に思わぬどんでん返しが待っています。ゆめゆめ油断なさいませんよう」
まったく、見事なヒネリ具合である。
他にも語りたいところは多数あるのだけど、ちょっと分量が多くなってきたのでこのくらいで締めることにする。
ぜひ皆さんにも、作品を読んで水円節を味わって頂きたい。
これからも応援させていただきます。