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第一回自主企画⑦

コトノハーモニーの遠野と北山です。
今回ははじめての企画に参加して頂きありがとうございます。一体何を言われるのかと身構えてる方もいらっしゃるかもしれませんが、物語を書く端くれとして、書き直すための材料として何が必要だと思うのか、真剣に意見を出し合い、まとめました。

批評『君は夢か幻』雨の弓さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890654049

肯定的批評
①描写による雰囲気作りがとても丁寧
②「僕」が出会った「彼女」が未来から来たAIであるという設定がおもしろい
③即興小説という事だが、多彩な表現が随所に出てくる

批判的批評
①「彼女」は「僕」に会いたくて過去にやってきたはずなのに、なぜか最初からずっと悲しげに笑っている。彼女の心情がわかりにくい。
 もう少し会いたかった!という気持ちが全面に出たり、感極まって泣き出したりしてもいいのではないか。
②読者に対して作中で提示されるべき情報(「僕」がどういう立場の人間で、今どこにいるのか等)が提示されておらず、読者が「僕」に寄りそいにくい。
③なぜ「彼女」が会いに来たのが、この時代の「僕」なのか、その理由がわからない。現時点で「僕」と「彼女」をつなぐものはなんなのか。なぜ作家になった「僕」に会いに行かなかったのか。

雑感
・物語全体にわたって描写が丁寧で細かいので、もう少し緩急をつけるとテンポがよくなり、今よりもっと印象的でドラマチックなシーンになると思う。(冒頭からずっとスローモーションが続く印象を受ける)
・「僕」が「彼女」を怪しむこともなく信じるに至るまでがあっさりしすぎている。
 例えば、彼女の瞳の奥に自分と同じ孤独を感じとるとか、いっそAIという事は伏せた出会いから今の「僕」は売れない作家であり、そんな「僕」に彼女が「あなたのファンです」と言ってみせる、くらいの興味を持つきっかけが欲しい。
・必要な情報について作中でもう少し見せてほしい。
 「僕」がなぜ声を出せないのか(病気なのか精神的なものか)、そういった事情が前半は何一つわからない。まずは「僕」の声が出せない孤独や苦悩に触れ、それからの非日常への誘い、そこからタイムマシーンの件、「彼女」がここに来た真の目的とは…という流れなど、もう少し構成を見直してはどうか。
 何より「彼女」が心を揺さぶられた「僕」の作品について、作中ではほとんど触れられない。「いつか、同じような気持ちをもった誰か」「この苦しみ」について掘り下げたい。作家なら普通に物語でもいいのでは?エッセイにした場合、今の「僕」に会いに来た理由と結びつける方が自然だと思う。
 「彼女」自身についても、未来の描写をどこまでするのか、「彼女」の境遇をもっとクローズアップして描くのか、そこは検討が必要だと思う。というのも「感情はない」と作る側は言うだろうか?(こんなに精巧な人間に近いAIを作っている側なのに?)「民間人じゃないからタイムマシンに乗れた」それは彼女にとって自分が戻ったらスクラップにされかねないのでは?過去の人間に未来の話をすることは未来から来た立場としてNGだという意識はあるのか?未来から過去への片道切符のような悲壮感はないのか?など、提示されている情報からも疑問点が出てくる。

これが「僕」が出会った不思議の物語なのか、それとも「彼女」が自分を救ってくれた人に会いに行くために過去に飛ぶ物語なのか、どちらに主軸をおくか考えて組み立て直すと尚感動的な作品になるのではないだろうか。
これは個人の好みの話になるが、「彼女」がAIであることは明言せず、読者にだけ匂わせるくらいでも良いように思う。例えば最後は「僕」視点の未来の話でしめられているが、「彼女」視点の未来で「僕」の本が読み継がれているという演出をした方がよりドラマチックな余韻が残ると思う。


今回は企画に参加頂き、ありがとうございました。
この批評も私たちの意見や主観が入ったものになりますので、もちろん肯定的・批判的共に全てを受け入れる必要はなく、それを望んでいるわけでもありません。どうかご自身のよりよいと思う作品を、これからも作り続けて頂ければ幸いです。

このような機会を頂きありがとうございました。
今後の活躍をお祈りいたします。

1件のコメント

  • 丁寧な批評をいただいていたのに返信が遅くなってしまって本当に申し訳ありません。
    客観的な視点からのご意見、非常にありがたく受け取らせていただきました。やはり自分で書いている時は主観的になり、自分の文章に酔ってしまいがちなので盲点が多いですね。読み手の意識、人物の感覚に寄り添いながら、書き手の都合だけで進まない物語を書けるように努力したいと思います。
    本当にありがとうございました。
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