コトノハーモニーの遠野と北山です。
今回ははじめての企画に参加して頂きありがとうございます。一体何を言われるのかと身構えてる方もいらっしゃるかもしれませんが、物語を書く端くれとして、書き直すための材料として何が必要だと思うのか、真剣に意見を出し合い、まとめました。
批評『「きっと誰も感じ得ない背徳」』低空飛行さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921040904今回作品を読ませて頂きましたが、肯定的批評、批判的批評として語るより、全体を通しての批評の方が伝わりやすいと判断しました。そのため全体として批評する形を取らせて頂きます。
まず一つ目、「気が付かない病気」というのが何を意味しているのか、という点がスッキリしません。何かの暗喩なのか、心の病気によるものなのか、先生のせめてもの抵抗としての無視という形なのか、最後まで判然としません。主人公以外の生徒も加担していること、病状は為す術もなく悪化……とある事から今回は病気なのだと解釈しましたが、その場合生徒にも気づかないような状態で教師として続けられるのだろうか、という疑問があります。この話の内容で根幹の設定が読み手の解釈によってブレるのは、大きなマイナスだと思います。
二つ目、主人公の好意の表現について。主人公は先生に対して好意を少なからず抱いており、制服の第二ボタンという表現から中学生もしくは高校生であると読み取れます。それにしては少々幼い気の引き方のように思います。また、病気である先生に対して、一人だけいつまでも悪戯に(というより先生からしたら嫌がらせでは?)固執し続けることが、先生への一途な愛情を表現したいのか、屈折した愛情を表しているのか判断つきかねました。
三つ目、登場人物達の行動と感情について。主人公だけが最後まで先生に対してただ地道に悪戯を仕掛ける生徒、という事でしたが、それは果たして周囲から称賛されるような行動なのでしょうか。これは単純に褒める褒められないという話ではなく、この作中においてその行動を是として称賛する周囲の理由が、そうさせた先生という人物の背景が見えません。そのため主人公が悪戯にこだわる理由が最後に好意として語られることに疑問が残ります。
もし書き直すのであれば、最初の「気が付かない病気」とは何なのか(具体的な病名を示唆する必要があればそれも出してほしい)、生徒と先生の関係と物語の背景をハッキリ示した上で、主人公の行動と理由が伝わるような構成にして欲しいと思います。少なくとも、この舞台が進学校なのか荒れた学校なのか、それだけでも読み手が受け取る印象は大きく変わるはずです。またこの話が教師と生徒という関係である必要があるのか、事務員やボランティアなど、学校に関わる大人は他にもいるはずなので、その点についても合わせて考えてみて頂きたいと思います。
今回は企画に参加頂き、ありがとうございました。
この批評も私たちの意見や主観が入ったものになりますので、全てを受け入れる必要はなく、それを望んでいるわけでもありません。どうかご自身のよりよいと思う作品を、これからも作り続けて頂ければ幸いです。
このような機会を頂きありがとうございました。
今後の活躍をお祈りいたします。