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最新話「亡霊かく語りきⅠ・Ⅱ」投稿しました。

 毎日投稿一発目は二話同時更新。
 海未の正体と、カイキョウシティに眠る秘密から。
 近況ノートによる補足は、とりあえず「ファンオヴァ」から再開していきます。
 一週間近くお休みをいただきましたが、執筆中に効率的な方法を思い出したおかげで作業は捗りました。同時更新していたのが更新が滞っていた原因なのかもしれないので、今後は自分のペースと合わせて更新ペースを決めていきたいと思っています。

 さて、今回の話では、『スペクター』と呼ばれる仮想体の祖であるデータ生命体の存在を、海未の口から明かされます。
スペクターは文字通りの幽霊で、ネット上に残ったデータがファントミームによって再構築されて、カイキョウシティに存在しています。彼らの戸籍情報等はGCによって改ざんされた偽造データで賄われており、参照序盤で公開した海未のプロフィールがそれにあたります。
スペクターは人間に接触するとき、対象の感覚器官を透析・ハックすることで『実物がそこにいるかのような錯覚』をリアルタイムで反映させます。これは人間でいうところの生理現象に近く、スペクター側でも完全に制御することはできません。これとGCの情報改ざんが合わさることで、カイキョウシティの社会に、人間同様の生活をしながら溶け込んで暮らしています。
 モデルは、『.hack』シリーズが黎明期だった90年代のネットオカルトが主な題材になっています。呪いの手紙とかチェーンメールがトレンドで、ネットに対する周知もまだ浅かった時代に起きた、今思えば根の葉もしょうもない噂を、未来都市で再現しようと画策したのがスペクターになります。
新しい技術がデマや誤情報によって印象操作されるのは、今のネットでもよくある話なのですが、そういった無知からくる恐怖というのは、どの時代にも起こりえることだと思います。そういう意味では、『人前に現れる幽霊』の意味もあるスペクターもまた、この街の恐怖の象徴であると言えるのですが、それが災害当時の恐怖にまつわる記憶をパージしているというのは、皮肉な話ではないでしょうか。
 そんな彼らは、自身が申告した通りネット上の自律型プログラムなのですが、前章で語られた意志の有無……というのも、後半では語られています。これは渚の言う通りデカルトの懐疑論と量子力学が組み合わさった哲学で、そこまで斬新なものではないでしょう。量子力学が哲学に片足を突っ込んでいるものなので、それをミックスしている作品はいくらでもあるでしょうから。ただここで意志の定義をしなければ、後に控えるホエルの存在と、それを巡る話にノイズが入ってしまう可能性を考慮して、設定させていただきました。

次回更新は9月23日(土)です。
ファントミーム・オーヴァーレイ/葛猫サユ
https://kakuyomu.jp/works/16817330660259961980/episodes/16817330664063366515

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