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〜ルール・オブ・ファンタジー〜 /前編

プロフに載せた寸劇の再掲載です。
(オンラインゲームをやったことのない作者が、キャラにやってみてもらうという妄想モノ、後半部を加筆)
近況ノートは10000字までしか載せられないようなので、2パートになりました。


『HEART BEAT NIGHT Tale.フィールド上の銃使いと剣士』

「先輩、狩りに行きましょうよ!」
「どこに、何を」
「スプーンゲイル湖沼地帯に、フィッシュドラゴンを!」
「……読んだことねぇよ、そんなファンタジー」
「本じゃなくて、ゲームっす。これ、ね、ログインして一緒に! サポートするんで一緒に!」
「何これ、このピョンピョンしてんの、お前か」
「かわいいですか?」
「男の子みたい。やけに敏捷そうだな、お前と違って」
「そうなんです! 素早さが売りのリス――」
「一ヶ月待っとけ」
「はい?」
「十日でもいいや、したら付き合ってやる」
「ぇえー、二人じゃないとスプーンゲイル行けないのに…」
「オレだって忙しいんだよ、いーから、仕事しろ」
「先輩に言われたくないっス」

五日後

「ぴあのくん、キミか……。アレに、ゲーム、を、教えたのはっ」
「はい?」
「水陸両用の恐ろしいドラゴンがいるっていうから、真剣に聞いてたら、ゲームの中の話じゃないかっっ」
「あー、信じたんスか、先輩?」
「だってまだ見ぬ未踏の地にいるって言うし、その向こうには、星々の力を集めて生態系を管理する神殿があるって言うじゃないか」
「それも、信じちゃったんですか」
「信じてないよ、可能性のありそうな話だって思っただけだ」
「柊馬先輩、お話うまいですからね」
「膨大なうんちくをムダに聞かされる身にもなりたまえ」
「え、ってことは、まさか先輩、星の宮殿まで行ったってこと!? き、聞きたいっ、私に話してくれればいいのにっ」
「知らない者に一から語る方が、面白いんだろう」
「そんなぁ」
「あまりのめり込みすぎないように。あぁ、その中では自分の分身を身代わりに作るそうだね」
「先輩もやりますか? これ私です」
「兎型の獣人?」
「違いますー! 白いけど、耳そんなに長くないっス! 脚力に優れ、敏捷さに重きを置いた、リスカントです!!」
「リスなの、カンガルーなの?」
「だから、リス――」
「そんなに素早くて扱えるのかい?」
「それが、時々、とんでもなく跳んじゃって、画面からフェードアウトします」
「ふーん」

それから二日後

(一週間しか経ってないのに、ゲートで待ち合わせって、先輩ほんとに大丈夫なのかな、ここでいいんだよね、時間合ってるよね?)

「よぅ、ぴ……じゃねぇや、お前の名前なんなのそれ」
「〝ハイパースピード2910〟です、ってせせせせせせ先輩、先輩こそなんスか、それ、どーしてそんな姿に!?」
「カッコいいじゃん、鎧武者。おっきくて、強い。お前の三倍はあるぜ?」
「でも顔がてるてる坊主ですよ!?」
「へのへのもへ字じゃねぇよ、せめてジャックフロストって言えよ」
「まっすぐな顔が似合ってません……」
「ちゃんと〝月丸〟って呼べよ後輩」
「つきまる……」
「バレてるからな、笑ってるだろ、画面見ろ」

「ぴ、じゃなくてハイ……、呼びにくいなもー、行けよ、ウサ子」
「っだから、兎じゃないってば!」
「オレが突っ込むけど、お前の方が速い、囮になって、死角をつくれ」
「はい!」
「――って、飛びすぎだアホーッ!! ど正面じゃねぇかこっち、あンの、バカ!」
「ごめんなさーい! あれ、先輩、二刀流にした? ちがう、二本合わせて巨刀に変えた? ちょ、それ神技じゃ」
「神息・断空牙!!」
「ッ――――いったい、この一週間どこで何してたんですか!?」
「超気持ちイイ! うるせーな、ちょっとこの世界半周して来ただけだよ!」
「一週間で!? バカじゃないですか?」
「おー? 先輩にバカっつったか今?」
「月丸さんにバカって言ったんです! ここでは私の方が先輩です!」
「だからー、ウサ子先輩にサポートしてもらうわけにいかないから、腕上げてきたんだろーが!」
「上げすぎだから!! 」
「いやいや、オレはあくまでお前に付き合うだけよ?」
「そんなこと言って、次の行き先決めてるんでしょ」
「そりゃ、お前、ここまで来たら、湖沼地帯を踏破して、星の都に殴り込むだろ」
「なんで殴り込むんですか、組の抗争じゃないんですから、穏便に行きましょうよ」
「観光かよ」
「観光したいですよ」

あれ、なんか終わらなくなってきた。



【星の都・大門通り】

「ここが、世界各地に神殿を持つ、運命を司る祈りの総本山なんですね。もぐもぐ」
「オレに綿あめ持たせてシリアスな顔でイカ焼き食ってんじゃねーよ、お前ウサギだろ!?」
「なんスか、ウサギがイカ食っちゃいけないてルールでもあるんですか」
「屋台満喫しすぎだっつってんだ! ていうか……なんでお前、そんな胸ぺたんこなの?」

「は!?」

「性別設定は?」
「それ、な、悩んだんですけど、中性にしました!」
「今スグ、ログアウトして設定し直してこい。もっとキュートでビッチな感じにな」
「パワハラー!!」
「いいから、イカ焼き食ったんなら、さっさと綿あめも食えよ」
「あ、すみません。この水ヨーヨーも持っててもらっていいスか。じゃなくて!」
「水ヨーヨー三個とか多くね? 信号機色? あたり前だろ! 普段の自分とは違う存在になるために、わざわざ機材使って錯覚起こしてまで、疑似体験しに来てるって言うのに、胸ぺたじゃつまらん!」
「いつも足手まといだから、ゲームぐらい素早く動きたかったんス! 女の子の可愛さよりも、この方が遠慮なく話しかけてもらえるかなって、」
「私情はさみすぎだ、ばーか。そういうのは現実でやんなきゃ意味ないだろ。視覚化して自分の願望がわかったんなら、それで十分だろ、ゲームなんだから、気楽に構えろよ」
「……気軽なつもりだったんだけどな」
「で、性別変える気はないの?」
「先輩――、歯を食いしばって下さい」



「なぁ、ハイパースピードウサ子センセイよ」
「もう普通にウサ子でいいっす」
「ああいう場面では、ビンタではないかしら!」
「素顔が見えないからって、人格ころころ変えるのヤメテ下さい」
「見ろよっ、ひでぇ、まだ高速回し蹴りのあとが顔についてる!」
「リスカントのスピードポイントは脚だけで、高速ビンタは無理なんですよ」
「そこ速さにこだわる必要ある!? おかげでオレの巨体が屋台なぎ倒して、テキ屋の元締めに目ぇつけられて、こんなイベント発生しちまったじゃねぇか」
「いーじゃないですか、お金を稼ぐチャンスですよ?」
「失敗したら、金巻き上げられるか、別の仕事斡旋されるんだろ? だから、まっすぐ宮殿行こうって言ったのにぃ」
「意外とせっかちですねー、いつもはちっとも働かないのに」
「サボりは無駄なことではナイ」
「はいはい、武士風に言ってもダメな発言です。……本当に場所、ここでいいんですかね?」
「『宮殿を襲う夜盗は夜陰に紛れて来るから、屋根の上で待て』って言われたんだ、最悪火の手が上がってからでもいんじゃね?」
「イベント不成功ですよね、それ。私ちょっと見回って来ます!」
「ダメだって、だーっ、先行くな! なんでお前はすぐ先走る!?」
「だって、じっとしてられませんっ」
「だってじゃアーリマセン。賊の姿も人数もわからないで、返り討ちにあったらどうすんだ。だいたいこのイベントに参加してるのは、オレたちだけなのか?」
「あー……もう少し、情報集めてから来るんでした」
「ねぇ! こんな夜に屋根の上でデートしてるの?」



「こっ、こんばんはっ」
「ひゅー、イイ女がいるじゃねーか! ウサ子、これだ、こーゆーの!」
「ウサ子?」
「す、すみません〝カウガール〟さん。こちらは〝月丸〟さんで、私は名前が長いから、その、何とでも呼んでください」
「一人で参加してるのか、あんた?」
「ええ、だから、よかったら仲間に入れてもらえない?」
「もちろんです!」
「いい女は、歓迎するぜ?」
「ちょっっと先輩、控えて下さいよ」
「なんだよ、ほめてるじゃん」
「……もしかして、月丸さんとウサ子ちゃんはリアルでも知り合い?」
「う、実は、はい」
「そのうちお前のせいで洗いざらいバレるな」
「フフフ。二人は恋人?」

「「まさか」」

「あの、私たちここに来るまで時間がなかったので、何も情報がないんですが、カウさんは何か知ってますか?」
「夜祭の最後の花火が上がったら開始だから、もうそろそろね。遭遇したNPCを宮殿に入れなければ成功、多く稼ぎたかったら、動き回ってより多く接敵することかしら」
「わかりました!」
「いやわかってないだろ、一回でも失敗したらオレたちは振り出しなんだぞ。倒すのは一体だけだ。倒したらお前は落ちろ」
「そんな!」
「あんたが荒稼ぎしたいなら、オレが付き合ってやる」
「カウガールさんと一緒にいたいだけじゃないですかー、私だって戦力になりますよ」
「リスカントになっても、お前のノーコンは治ってねーじゃん」
「うっ、でも、横面にキック食らった人に言われたくないです」
「ツッコミは不可避なんじゃボケ!」
「痴話ゲンカ?」

「違うわっ」
「違います!」

「祭りの灯りが消えたわ。さぁ、行きましょう」



「えっ、カウガールさん、敵を探さないでまっすぐ宮殿に向かってる?」
「ノンキャラと参加者の位置データが来てるな、遭遇しないルートを選んでる。お前、あの女についてけっ」
「ツッキーは?」
「誰がツッキーだ、オレは確かめることがある!」



「あれ、ウサ子ちゃん、月丸くんは?」
「…………たぶんトイレです」
「嘘が下手ね」
「カウガールさんは何を狙ってるんですか?」
「開始から、宮殿の真下にいるプレイヤーがあやしいと思って」
「? どういう……」
「こっそりオープンキャストを聞けるといいんだけど」
「えぇっ盗み聞き?」
「黙らないと置いてくわよ」
「あーえーと、ついて行きます!」



「オフモード。固定通話はっと、――おい、モグラ、モニターしてるか?」
『貴方の目を通してね。どこに向かってるの、反対じゃない?』
「お前、ログインしてんじゃないのか」
『してないわよ、足跡残したくないから』
「じゃ、あの女誰だ?」
『他の女のこと考えてるの? 妬ましい』
「イベント開始直後から、不自然な場所にプレイヤーが三組いる。位置情報が受け取れるのは三分おきだ、今から宮殿から離れてる二組を確認しに行く。名前は――」
『プレイヤーネームだけで検索するには、一分かかるわ』
「ログイン時間!」
『名前の上がった順に十九時三十分、十九時零分、十九時五十分、十九時五十五分』
「再ログインしてるやつは?」
『二人目が十八時にも入ってる』
「後の二人を優先する」



「聴覚上げても聞こえませんから、しゃべってませんねぇ」
「男二人で至近距離で個人メールって、なんかいやらしくない?」
「いやらしくないと思います。むしろ恥ずかしいことをしてるのは、こっちっす」
「そうね。こちらから出て行って、私の色気で口を開かせられないかしら」
「ななななにするつもりですか?」



『アタリでハズレ、最初の二人は不倫を隠してる教師と保護者。で、後の二人は……』
「子供か」
『なにこれ、仲間割れしてるの?』
「オンモード。おいこら、出遅れたくらいでモメんな、手に持ってる武器を相手に向けたら、その時点でアクター没収されるぞ。自分が悪くなくてもだ。んなことになったら、相手を一生許せなくなんだろ? イベント参加してる場合じゃねぇっての、二人で祭り行って遊んでこい」
「お祭りなんかもうやってない」
「わあってるよ」
「関係ないだろお前! ダッセー顔っ!」
「お前ら、武器はダメだけど、ツッコミ機能があるの知ってる? オレのツッコミの馬力はハイパーウサ子センセイの比じゃないんだぞ? まとめて吹っ飛んで壁にめり込んじゃうよ? なあ。それでもオレの単純な顔がだせぇと思うか。けっこう凶悪だろ」

「「……」」

「ドロップ。〝ハイパースピード2910〟から預かったもの一式。このお面かぶって、水ヨーヨーつけて、りんご飴かじって手花火でもすりゃ、ちったぁ祭り気分が味わえんだろ。試してみろよ。楽しくないケンカはすんなよ、拙者は先を急ぐんでな」
「あ、ありが……」
「雪だるま、ありがとうっ」
「ウッセ、雪だるまじゃねぇぇ――!」
『柊馬、宮殿下の二人、偽装アカウントだ』
「ログアウトのブロックは、」
『バレて機材を捨てられてたら? どっちにしろ使い捨てのアカウントを追跡するには時間がかかるわ、その間に彼らは、』
「一か八かウシ女に賭けてみるか? くそっ、ウサ子と回線開いてくれ、それとさっきぶん取ったノンキャラの刀、お前からもらった弾丸のデータを移し替えられるか?」
『ウイルスを弾丸に加工するのだって楽じゃなかったのに』
「今すぐだ、刀のグレードは扱いやすいように、一番下! 貸しならいつでも払ってやる」
『もう一つ渡したでしょう? それで今すぐこの世界を消滅させればいいのよ』
「花火が終わってたらな!」



「ハイ! え、せっ、先輩? どこから? 状況? っ今、宮殿の下です、カウガールさんがあやしいプレイヤーさんに絡んでて、個人メール拒否られちゃって、もう脱ごっかなって、すごく止めたいです。でも、あたしは待機だって言われちゃって」
「後輩、ウシ女に渡したい刀がある。お前が受け取れ、跳べ今すぐ!! たかくっ!!」
「わかんないけど、わかりましたー!!!」
「死ぬ気で受け取れよッッ――!」

「音声会話できなくても、目はついてるんでしょ、だったら見ていきなさいよ。――ん? 隠れててって言ったのに、なんであんなに目立ってるの!?」
「カウガールさんはー、ガンマンだと思うんですけど、でも、ツッキーがこれをー! 落としまぁーす!!」

「かた……な?」

「おい、聞こえるか、ウッシー!」
「ウッシーとは、失礼な」
「ぃいっけぇえ――――っ!!、リィィィィク!!!」
「――その魂、ここに置いて逝け」

「えっ何を……!ぅあう、まぶしっっ……、アアッ、やっぱり警報がっ、このフィールド全域――強制ログアウト!? そんなっ」


TO BE CONTINUED

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