数ヶ月ぶりに鉛筆を持って紙に向かっている。
字数換算機能に慣れたせいで、自筆の手応えだと今何文字くらいか分からず、尺が長いのか短いのか狼狽しながら書いている。(数えろよ、面倒くさいよ)
文机上の開きっぱなしのノートに気付いた幼子がこれなあに、と訊いてくる。
「ひーちゃんが書いてるおはなし」
反応は無反応。
傍らでは下の甥っ子がそのノートに一心不乱に義務のように、消しゴムをかけている。
(興味ないのはわかった。けど)
けーさなぁーいでーぇえええっっ
続き。
人のiPhoneの充電を削りに削って特撮のオープニングを聴いた後、
「折り紙がしたい」と言い出す。
部屋の調度を替えた際に、折り紙も手放した。
私は持っていないけど、下にいるおばあちゃんが持ってるかもしれないと告げる。
「取りに行ってくる!」
戻って来るまで、下の子に鉛筆の持ち方を教えるも、
「それじゃ書けないよ」と言われる。
おめーの持ち方で書けてることの方が不思議だよ。
「じゃあ、動画を見てみよう」と提案。
親指と人差し指と中指に色違いのシールを貼って、三角鉛筆のそれぞれの辺にも指のシールに対応した三色のシールを貼り、同じ色に指を置くことで、正しい持ち方を再現する。
丸鉛筆しかないけど、なんとかなるだろ、とマスキングテープで工作。
いちおうなんとなく理解してくれたらしい。すぐ戻っちゃうけど。
しかし遅いな兄貴は。そこへ、バンとドアが開いてずんずんとやって来た上の子がお節介気味に、
「もうできてるよ」
?何が。
「お寿司できてるよ」
折り紙じゃなくて?
「もう僕食べた」
おいー、
折り紙探してたんじゃなくて、寿司食ってたんかーい!
「おめー折り紙取って来るって行ったじゃないかよう」
あっと思ったのか、てれっと笑っている。
いやいや、ぜんぜん可笑しくねーし、面白くねーし。
食べる分のお寿司残ってるかしら、もう!
「あいつ言ったこと忘れてひどいんだよ」
子どもたちの両親に言うも、
「折り紙なんて一言も言ってなかったし、普通に食べてたよ」
マジか。信用ならねぇな。
もう食べ終わったヤツは再び訴える。
「折り紙どこー」
食ってっから、今。ふと部屋の外の廊下で見かけたのを思い出す。
「上かも」
「ないって言ってたじゃん」
え、どうしてそういうことはよく覚えてるんですか?
「部屋じゃなくて、廊…」もー。
箸を置いて上に戻る。暇人なのか付き合いがいいのか追ってくる甥っ子に、見つけた折り紙を渡してコンプリート。
食後にひたすら折り紙を折らされたのは、また別の話。