• 詩・童話・その他

おっぱいブルー

妹が小学校四年生のときの話である。私達の学校では「かがやけ発表会」というイベントがあり、それに使う展示をグループごとに作っていた。
妹の班では、広告を使ったちぎり絵を作成していた。大半の時間は色の仕分けに費やした。スーパーのチラシのバナナの部分を黄に、不動産のチラシのマンションの部分を黒に、ちぎって黙々と分けていく。
そんな地道な作業の中で事件が起こった。事件といっても、静かな、とても静かな事件である。
皆が無造作に持ってきたチラシの中に、パチンコの海物語の広告があったのである。小四の多感な児童にとって、お姉さんのビキニ姿はあまりに過激だった。気まずくなる一同。誰もそのチラシに触れることすらできなかった。
そこに他のグループであるだいちゃんが通りかかった。だいちゃんはクラス一のお調子者であった。
だいちゃんは皆にとって禁忌であった例の広告を手にとり、マリンちゃんじゃない方の女の子(と言えばどのキャラクターか伝わるだろうか)の水着の胸のあたりをくり抜いた。そして言った。
「はい、おっぱいブルー」
気まずさは嘘のように打ち砕かれ、爆笑が巻き起こった。だいちゃんの童心が、妹のチームを救ったのである。
私はこの話が大好きで、酔うと妹にこの話をさせていた。いつでもこの話に触れたいのでエッセイを書いてほしいと懇願すると「詳細を話すからあなたが書いて」と言われたので、今回書いた。
だが、いつか妹にも臨場感たっぷりの「おっぱいブルー」を書いてほしいものである。

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