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校歌

極めて個人的で、かつ普遍的なものが書きたいと思う。
ミキという兄弟のお笑い芸人がいる。彼らがいつかのネタ番組でやっていた漫才が印象的だった。
校歌のネタだ。二人は兄弟だから通ってきた学校も同じである。小学校の校歌を思い出そうという話になって弟が歌う。兄は懐かしいメロディに心を踊らせるが終盤で気づく「それ中学校の校歌や!」真剣にツッコんでいるが、視聴者はもちろん二人の母校の校歌なんて知らないし、なにが正しいのかなんて分からない。でも、なんか、泣けるほど笑える。懐かしさすら覚える。
母校の校歌を思い出そうとすると確かにあやふやだ。私の場合は高校と中学校のメロディーが混ざったり、二番の歌詞しか思い出せなかったりする。ミキの校歌のネタには、皆の知らないことで二人が異様に盛り上がっているシュールさだけでなく、誰もが記憶の端っこに持っている母校の校歌というものに対する愛しさがあったと思う。
その人にとっての思い出や本当があって、それを完全に他人と共有することはできない。しかし、具体的に書くことで、説得力を持たせることはできる。リアリティのある表現さえあれば、極めて個人的な記憶も、普遍性を帯びて人々に伝わり得る。赤の他人の前で母校の校歌をまるまる歌い切るようなことを、物を書いていく中でできたら素敵だと思う。

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