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どこへ行くのだろう③

突然ですが、表意文字のもつ力ってすごいですね。何がすごいかって、字を見るだけで、情景が浮かぶことすらあるからです。その典型としてはやはり、漢詩でしょうかね。個人的には王維が一番好きですが、みなさんはどうでしょうか。

表意文字も漢詩も全く関係ないですが、浅茅が宿の続きに参りましょう。前回は、商売のために京へ大博打を仕掛けに行った勝四郎を、妻の宮木が健気に待ち続けながら、約束の秋が来ても帰ってこないことへの恨み節で終わっていましたね。今回は勝四郎側の視点からになります。

勝四郎は雀部さんとともに京都へ行き、首尾よく絹を全て売ることができました。なんと言ってもその頃、都はなかなか景気が良かったのです。
それで勝四郎、すぐに東(あずま)に帰る用意をしましたが、折悪く、例の上杉となんとかの争いが始まってしまい、勝四郎の故郷は戦乱の地になっていると、世間では盛んに言われていた。
目前のことですら偽りが多い世間の噂であるのに、まして遠い国(東)のこととなれば心も落ち着かず、八月には都を発った。

おかしい・・・おかしいのですよ。浮気しなかったのはよかった、商売もうまくいった、しかも八月に都を発っていて・・・しかし秋に帰って来ていない。それってつまり・・・?
とにかく先へ進みましょう。

都を出発し、木曽の真坂を1日かかって超えたところで、盗賊たちが道を塞ぎ、荷物を全て奪われてしまった上 、人の話すのを聞けば、ここから東の方へは、所々に新しい関所ができていて、旅人の行き来さえ許さないそう。
それでは、便りを送る手段もない。家も戦火で焼けてしまっただろう。 妻もこの世にないだろう。そうなれば故郷とはいえ鬼の住む場所である
と思って、そこから都へ引き返す。

途中まで走れメロス風だったのに・・・これって、途中で、親友どうせ死んでるだろうと思って家に引き返すのと同じですよ勝四郎さん・・・

そんな、薄情者(宮木の状態を知っているからそう言えるのはありますが)勝四郎でしたが、近江国に入ったあたりで突然気分が悪くなり、熱病にかかってしまった。
近江の国武佐という所に、児玉喜兵衛といって、お金持ちの人がいた。ここは雀部の妻の出身地だったため、勝四郎はそこで医者に診てもらうことができ、投薬などに専念させてもらった。やや気分が落ち着くと感謝の意を示したけれども、まだ歩くこともうまくいかないため、この年は思いがけず、近江国武佐の地で春を迎えることになってしまった。
しかしこの里でもいつの間にか友人ができたり、勝四郎の短所でもあった素直な性格も持て囃され、児玉を始めとし、皆が 彼を信頼して交際した。 そのあと都へ行き雀部を訪ね、また近江へ帰り児玉の所へ身を寄せ、いつの間にか7年の月日が夢のように過ぎ去っていた。

待ち続ける宮木のことを思うと酷い話ですが、当時手紙すら出せないとなると、伝達手段は他にありませんから、当然のように音信不通になってしまいます。その上戦の真っ只中と言われて仕舞えば、もう家も妻もないだろうと思っても、不思議はないのです。

今日はこの辺にしておきましょう。次回、勝四郎がついにある決断を下します・・・
そうでなければ話続きませんが(笑)

注意!
一応念を押しておきます。
「完全な素人」です、誤りなどなどは大目にみてください、そして信用しないでください。

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