SNSやインスタはやはり必須アイテムなのでしょうか。時代錯誤とか言われそうですけれども、まだ、写真をアップしたりすること、ひいては身バレすることが怖いことだという認識のままでいます。そうすると、SNSはともかく、インスタはハードルが高いのです。
世界の裏側の人に顔を知られるなんて、まあどうでもいいんですけどね・・・隣に住んでいる人だとか、電車に乗り合わせる人・・・もしかしたら変態かもしれない人に自分のインスタが見られていたら。ゾッとしなくもない話です。
こんな古頭は置いておきまして、浅茅が宿の続きに参りたいと思います。
前回、貧しくなりだした家を盛り返すため、主人公勝四郎が商人雀部を頼り、田畑売って売り物にする絹を買ったところでした。
さて、その勝四郎の妻、宮木と言う人は人の目を引く絶世の美女。それだけなら勝四郎は能天気なまま旅立ったかもしれませんが、彼女は聡明な人でした。
今の時代で言うなら、全財産を小豆の株に投資するようなものですかね。それを、賢明な妻が止めないはずはありません。ないのですが、勝四郎の一本気な性格の前には、宮木の言葉は意味がなかったようです。
宮木は今後の生計の心配をしつつも、健気に旅支度を整えてやりながら、その夜は別れを惜しみ語り合います。
「頼るべきあてもない私は、どうしたらよいのか困り果てるばかり。辛い限りでございますから、朝夕私のことをお忘れにならないで、どうか、早くお帰りになってください。一命さえあればよいとは思うものの、明日の確証など何もないこの世の中なのですから、あなたのお強い男心でも哀れと思ってください。 」
すると勝四郎、
「知らない国に長居などしない。この年の秋には帰ってくるから、気を強くしてお待ちなさい。」
だめですよ!そんな約束をしたら!と、菊花の約を読んだ後の読者は思ったかもしれません。勝四郎、生きてちゃんと帰ってくるのでしょうか。都で浮気というオチはたまに見かけますが・・・読者はただ祈るしかありません。
そんな想いもよそに、勝四郎は夜が明けると東(あずま)を出立、京へ向かっていきました。
言い忘れていましたが、この作品、どうも室町時代が舞台のようです。ここら辺から突然、 歴史ラッシュが来ます。誰ですか、明治維新になって、日本に「歴史 history 」は存在しないとか言った人!!小説にまで落とし込まれているにもかかわらず、学問体系がないからといって歴史はないと言ってしまうほど、当時は西洋に劣等感が強かったんでしょうね。
さあ、ちょっと嫌ですが続けましょう。 割と大事です。宮木を取り巻く環境がガラリと変わることを説明する文章なので・・・それだけわかれば大丈夫ですよね?そういうことにしましょう。
要は、 足利成氏と関東管領上杉憲忠の仲が険悪になり、それをきっかけにして関東が酷い状況・・・めいめい勝手なことをしでかすような状況になってしまいます。その余波は市井の人々にも及び、老いた人々は山へ逃げ隠れ、若い人は軍に召集され、今日はここへ敵が来る、明日は敵が寄せ来ると、女子供はあちらこちらへ逃げ惑う。そして、勝四郎の妻、宮木も、どこかへ逃げようと思ったけれども、 今年の秋を待てと言った夫の言葉を信じつつ、不安な思いを抱え日を数えて暮らしていた。
健気です・・・なんとも健気です!そんな彼女には幸せになってほしい・・・しか それが叶わないのが雨月物語という作品集。結局秋になっても、勝四郎からは なんの便りもなく、宮木は、世間一般の人のように、なんとも頼りにならない人の心だと、夫を恨み、我が身を悲しみ、すっかり気落ちしてしまい、和歌
身のうさは 人しも告げじ あふ坂の
夕づけ鳥よ 秋も暮れぬと
待っている私の悲しみは、誰も夫に告げてはくれない。せめて「あふ(逢う)」という名を持つ夕つけ鳥だけでも、 どうか、約束の秋は暮れてしまったと、告げてください。
ゴシチゴシチシチの中に込める思いはきっと、恨みの手紙を何百枚書くより自分の心を代弁してくれたのでしょう。 そうでないなら、いくら雅だからといって、重要な求愛、帝への述懐、また恨みつらみを和歌に詠もうとはしなかったはず。しかし・・・それを考えると、お勉強するのはなんだか、居心地悪い気はしますね。なんといっても、人の色恋を盗み聞きしているようなものですから(笑)
さて、絶世の美女宮木です、世の中が乱世に突入すると人の心というものは荒むもので、たまにぶらぶらと現れる人は宮木の美貌を見ると、色々と騙して 誘惑したりします。まあ、宮木は相手にもしません、それどころか、戸を立て切り、決して男たちと会うこともありません。しかしそうこうしているうちに、たった一人の下女も去り、 少しの蓄えも尽き、その年は暮れていく。年が変わっても、 未だ平和は来ない。その上、なんやかんやあって戦いが長期化してしまい、いつ終わるかもわからない状態になった。強盗たちはあちこちに砦を作り、火を放って財宝を略奪した。関東に安全な場所はなく、ひどい世の中の、無駄な消費である。
この最後の文、なんでしょう(笑)原文、 浅ましき世の費なりけり。なんですが、まあ確かに戦争なんて武器商人と一部の人以外には完全無欠に無益なわけですが、この一文必要だったんでしょうか。謎ですね。
さて、今日はこの辺で。次は勝四郎の方へと話がうつります。このままだと、奥さんを放ったらかしにした最低な男のまま終わってしまいますからね(笑)