• 異世界ファンタジー

『私は世界を救えない』 #35「哀れな人形使い」の話

※本編35章までのネタバレあり
※自分で自分の作品語りするのを見たくない方はブラウザバック推奨

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https://kakuyomu.jp/works/1177354055503800437


マリオくん回+第三部メンツ再登場祭りの回です。なぜ「最果ての街」を舞台にしたかというと、ファースさんたちともう1回遊びたかったのもありますが、帝都で凄惨な連続殺人事件起こしたくないっていうのと、物語の進行上マリオくんの代わりに敵にトドメを刺す役が必要だったからです(要は作者の都合)。

これまでのマリオくんといえば無感情サイコ笑顔殺人マシーン、目的を達成するのに最適な手段(殺人含む)をとる徹底した合理主義者。ただし、自分から目的を設定することはできないという完全に命令に従うだけの「操り人形」でした。

このままでは一生命令で人を殺す機械として使い潰されるしかない道から救い出してくれたのが、クラリスちゃんです。そのやり方は実はかなり荒療治で、「友達」として仲良くなることでいざ殺す段になったときに「やっぱり殺したくない」という感情を芽生えさせる、というものです。これが効きすぎてマリオくんは無感情サイコ以下略になってしまいましたが、古巣の仲間たちを皆殺しにして殺し屋の世界を脱し、勇者になります。

クラリスちゃんが狙ってそうしたのかは今となっては不明ですが、マリオくんに大きな影響を与えることで、彼の中で自分は生き続けたいと願っていたのは確かです。その願いが叶うと確信した彼女の死に際は、幸せなものだったでしょう。

今回の敵であるジミーくんも同様に、マリオくんに殺してもらうことを期待していたのだと思います。人を殺さずにはいられなくなってしまった彼は、自分がこの世界で生きていくことはできないと悟っており、かつての親友に引導を渡してもらいたかったのでしょう。ぶっちゃけジミーくんは強すぎて作者的に困ってたので、初めから本気でマリオくんを殺しに来てたらたぶん負けてたと思います。

この2人はマリオくんに殺されて救われた形になったのですが、救われないのはマリオくん本人です。彼は元々は殺しを忌避する性格で、いったん感情を封印することで殺人への抵抗をなくしていましたが、怪我が原因で封印が解けてしまいます。ただ、そのお陰で自分の意志が芽生えて「操り人形」から人間に復帰します。

そんなマリオくん本人の気持ちを考えてあげられたのがヘルミーナちゃんとエステルちゃんですね。ヘルミーナちゃんはクラリスちゃんと同じく、殺してもらうことで自分の存在を刻み付けたいと願っていたのですが、エステルちゃんの命もあってマリオくんに見逃されました。それからヘルミーナちゃんは周りにも目を向けるようになり、今では立派なマリオくんのカウンセラーに。

エステルちゃんは言わずもがな、マリオくんが優しい人だと一貫して信じ続けていました。だからマリオくんも友達の人形を作るという大事な儀式に彼女を呼んだのだし、彼女の前だからこそ隠していた本音をようやく吐露できたわけです。


さて、次回はロゼール様の回です。彼女の過去といえば100年前に仕えていた貴族のご夫婦ですが、その屋敷を再び訪れることになります。そして、ロゼール様の過去を知る人物も現れて……? 物理よりも精神面でのバトルが熱くなりそうな仁義なき女の戦い、お楽しみに。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

2件のコメント

  • お疲れ様でした。
    マリオくんというキャラクターをより一層好きになれる章でした。
  • 毎日最新話追ってくださってありがとうございました!!
    今後ともマリオくんに温かい支援をいただければと思います(選挙?)
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