人工子宮が普及した今、母になる自信を持つのは難しいみたいだ。 ガラスの向こうに我が子を見る。平らなお腹は実感を与えてくれない。新しい生活はまだ、少し遠く感じた。

　なんでわたしたちはモノを作るのだろう。表現することを捨てられないのだろう。 　傷ついて苦しんで、なお惹かれてやまない芸術という深淵。とらわれてしまった人たちはどのような生をた…

　地上は毒に侵され、人間が住めなくなって久しい。 　かつて栄えた文明の芸術と学問を守るべくそのシェルターは築かれた。素質と血筋、才能を管理され自由のない暮らし。けれど疑問を抱く…

致死性発光症という病が蔓延した世界。患者は末期になると光の粒と化し、骨も残さず散る。身近な人が、あるいは自分がその状況にあるならば何を思ってどう動くのだろう。 ひとつの世界で紡…

美術大学構内にある食堂が舞台の短編集。美味しそうなごはんが書きたいのです。一話1000〜2000字程度です。 完結しました！ 支えてくださったみなさま、本当にありがとうございま…

それは夜になると時折、街を襲う。異層嵐、どこか違う世界から立ち現れて、人や物をさらっていく何か。 正体が見えないゆえに現実感のなかった災いは、彼女にとってみればもっと切実な戦いだ…

嫌いなのになぜか見てしまう。横暴なのにきれいで、怖いものなしみたいな同級生。これは、私が教室の片隅から眺めていた、岸本瑠千愛（きしもとるちあ）についての話。