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物語が始まらない『あと一人乗れますよ・2』

最近変な夢を見る。
家の前に霊柩車が停まり、私にこう言うのだ。

「あと一人乗れますよ」

寝覚めが悪いことこの上ない。
検索サイトゴーゴルで調べてみると、そういう会談があるらしかった。
乗ってしまうとあの世へ連れていかれるらしい。
馬鹿馬鹿しい。
そう思いつつも無下にできない自分がいてそれも不快だ。

商業施設のエレベーターホールでのことだった。
休日という事もあり、開いたエレベーターの中はいっぱいだ。

「もう一人乗れますよ」

聞き覚えのある声だった。
夢で何度も聞いたあの声。

「駄目!!」

扉が閉まる直前。
乗っていた少女の手を力任せに引っ張っていた。
尻餅をついた少女を残し、エレベーターは階下へと吸い込まれていき・・・・・・。

ここからは後で聞いた話だ。
あの日、ホールには悲鳴と金属が潰れる音が鳴り響いた。
が、なにも起こらなかった。正確に言えば、なにも起こっていなかった。

問題のエレベーターは封鎖され、点検が行われたものの異常はない。
階下にもなにも落ちていないし、死体なんて勿論無い。
集団幻覚かと騒がせたものの、それも数日もすれば情報の渦へと消えてしまった。

そして私の隣には、あの時の少女がいる。

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