「会議を始める。本日の議題は一人称。主の一人称は統一されるべきであり、それは俺であるべきだ」
“オレ”はねめつけるように参加者の顔を見た。文句あんのか、と言わんばかりの表情だ。
「いいですか?」
手を挙げたのは“ジブン”。
「自分としては、特に誰を使用するかについては気にしていません。複数の一人称を利用してもいいのではないでしょうか。ただ、社会人であり、女性である主が人前で『俺』を使用するのはいかがなものかと思います」
「じゃあ、やっぱり私でしょ。社会人はみんな『私』になるものよ。ということは男女とも共通して品位がある一人称ということでしょう?私をメインに利用したらいいんじゃないかしら」
“ワタシ”が長い足を組み替え“オレ”に微笑みかけた。
少し、むっとしたように“オレ”は主を振り向く。
「でも主は違和感があるんだろ?」
「うん」
「なら無しだ」
主の回答に“オレ”は勝ち誇った表情で“ワタシ”の意見を一蹴した。
言い返そうとした“ワタシ”を元気な声が遮った。
「違和感の無さで言ったらみーでしょ!」
「一番無しだ!」
“オレ”が負けじと大声で却下を下す。
頬を膨らます“メイ”に“オレ”は畳みかけるように続けた。
「社会人にもなって、自分を下の名前で呼ぶな。子どもか?そもそもお前が引かないからこうなっているんだろうが。大多数の人間は思春期に、いや、思春期前に卒業するんだよ!」
「えー」
反論されて“メイ”は不満顔だ。
がるがる威嚇している“オレ”に“ワタシ”が言葉の冷水を浴びせる。
「それを言うなら『俺』もどうなの?一般的には社会人は使わないものよ。男性でも、改まった場では『僕』か『私』にいいかえる人が多いんじゃないかしら?」
「え、僕?」
(´・ω・)後編は6/20更新予定です(・ω・`)