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不完全な真空・シーズン3

■夜に落ちる
TRPGで「異界/境界」と「夜」っていうテーマで、ドラマ重視の話できないかなあ、と思ったのがアイデアの起点。それと、稲垣足穂作品の、ハチャメチャな感じは好きなのでそういうテイストも欲しいな、という感じからイメージした作品で。

■デッドコピー・ジャーニー
かの有名な『千の顔を持つ英雄』で、色んな神話や伝説が同じ原型を持っている、という話があるわけだけれども、それを同じ話にしようという話になるのは「引用の暴力性」というテーマに興味があるから。一字一句同じように引用したとしても引用という行為自体が暴力的な(=一方的で不可逆な)性質を持つ(そして、それこそが編集という行為の本質でもある)、という話。ボルヘスとかは、その性質に自覚的に、かつワザと引用という暴力を駆使していた、文学的暴漢だと思う。暴漢であって悪漢じゃないってのがポイントなんだけど。

■オシリスかく語り
当初は自分を吸血鬼だと言い張っているオッサンの(自称)自伝として書こうとか、むしろ本当に吸血鬼の人が書いた時点をレビュアーが疑いなくそうだという前提で紹介している(という形で、レビュアーのいる世界の異常性を間接的に書く)などと考えていたが、そういうメタ形式をうまく書ける気がしなくて、「人間ならざる者の視点で描いた非人類史」という形態に。この形式本当に好きでして。

■新語法辞典
ニュースピークは巻末の「諸原理」の時点でオチてるので、実際に辞典を出すというのは正直に言えば蛇足なのだ。が、であれば実際に出さずに、出たという体にして扱うことが最適だろう、という形になる。いっそ、真理省による広報的レビューにするというアイデアもあったが、如何せん力量が足りず。

■ネルガル計画のすべて
当初は火星有人探査が実際にあった体でノンフィクションとして書き、レビュアーの世界を火星有人探査が実際に行われた世界として書く(未来っぽい造語とかを交えつつ)と思っていたのだが、実際には架空プロジェクトを実在の体で書きつつ、火星探査そのものは行われていない、という形式になった。宇宙開発→軍事計画→超能力研究→ニューエイジ、という連想ゲームは気に入っている。

■稲生征四郎の日常スケッチ
エッセー本の話が書きたかった。『のはなし』が枕元にあったので。で、『のはなし』は天才DJが書いた超傑作エッセイだからいいんですけど、それだと「いいよね」「いい」しか書けないので、色々と設定をひねくり回したというお話し。当初は「あるあるネタの漫才で人気になっただけあって、共感を引き出す情景の切り取り方がうまいよね」的な方向性だった。

■リチャード・キンブルの憂鬱
東山北斗は、今シーズンに2作登場する、このレビュー世界(全レビューが同一世界設定とは限らないのだが)の人気作家という設定。今時点だと、複数出てきたのは芥火静虎と東山ぐらい、か。ネタストック分含めて。名前的には当代の人気娯楽作家といえば東野圭吾さん=東ではじまる苗字、ぐらいの連想だけど、作風は全然違うイメージ。アイデアは、朗読形態という部分に全振り。実際、朗読形態でしか出版されていない小説は、オーディオドラマとどう違うのか、それは小説なのか、みたいなことは、母が視覚障碍者なので、よく考えることがある。あれが読書ならば、彼女がテレビの前で『刑事コロンボ』を「聞く」行為とそれはどう違うんだ、とか。

■龕灯返し
同じ作品でリンクさせる人気作家さんというのは、当代だと海堂尊さんとか辻村深月さんとかいて。だけど真っ先にこのアイデアが出てきたのは、「『FGO』ではじめて開示された設定で、『メルブラ』で言ってたことの意味がようやくわかるってどういうことだきのこ!」みたいな、奈須きのこさんの作品にある、世界観の(世界設定の、ではない)一貫性+作中人物の主観であるがゆえの不透明性/定義の不明瞭さ=受容のひっくり返しを、意図的に仕掛けた本、というところで。なんだろう。宇宙世紀でアナハイムを舞台にした無難なお仕事ものなんだけどガンダムの設定がひっくり返ってる、みたいな、いやでも宇宙世紀はパラレルが大前提だからなあ。作中世界の一貫性があればこそ、こういうひっくり返しは機能するわけで。。。

■誰が不死者を殺したか
特殊設定ミステリは好きだし、オルタナヒストリーもののスチームパンクも好きだし、ということでこの設定。タイトル自体は『ビーストバインド・トリニティ』の死霊課PCキャンペーンで、吸血鬼の長老が密室で殺されているのを捜査するシナリオからの流用。書評パートには書けなかったが、吸血鬼探偵のザナドゥは、ヘカテー(かのギリシャ神話の月と冥府と魔術を司る女神その人。零落した女神なのだ)に「殺してもらう権利」を使うために頑張る、みたいな設定があったりする/した。

■アレクサンドロスのモザイク
群盲象を撫でる、が着想元。なので、「モザイク」というタイトルに。犯人像が読者によってモザイクのようにバラバラになる、という形式のために読書メーターみたいな感想サイトの体裁を取り、そのついで的に作品内容も断片的にしか読み取れない形式になる、という。実際の内容は、漠然と「犬が出てくる泣かせ要素のある話」「読者への挑戦状があるが謎解きは解けないというよりは何かしらの叙述トリックの類によって誤らせるタイプのもの(詰将棋の「新たなる殺意」ってすげー奴を見た時の衝撃が多分もうひとつの着想元)」「謎解きのヒントにはマケドニア王国史と数学が関係するが、数学はそれほど高等なものではない」ぐらい。

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