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不完全な真実・シーズン9

ウマを育てたり娘を育てたりしていました。

■クアドリガ宝物名鑑
実在しないゲームの攻略本という体裁で物語を語れないか、というのは以前から何度か挑戦しては挫折しておりまして。あと、実在するゲーム(『イストワール』なんですが)のアイテム解説を元に、博物誌的なネタを書きたいなというのも挫折しておりまして。それと、ゲームにフロム脳働かせて楽しむ系の遊びは嫌いじゃないな、というのが三神合体した結果が、この「クアドリガ宝物名鑑」です。イメージは『ファイアーエムブレム』なんですが。

■死人占い師の華麗なる犯罪
ザック・ゼニスは「アンデッド・ホミサイド」と今回名付けた「不死者が死ぬミステリ」のシリーズで二度登場しており、そのシリーズのスピンアウトという設定。死人占い師というのは勿論『指輪物語』におけるネクロマンサーの訳なのだが、死霊術師、死霊魔術師という定訳も嫌いじゃないですが、「死人占い師」という言葉にはそうした定訳には無い、土臭いファンタジーの匂いがあるじゃないですか。あと、本筋のキャラが物語的に「詰まる」と外伝で人気キャラ主人公のが始まる感じ、ちょっと現代的(今の漫画業界のお約束)っぽいよなあ、と思ったり。

■アノニマス・シックス 黒のアマルガム外伝
大枠は『エージェント・オブ・シールド』。アノニマス・シックスという名前は、AOSを『ダブルクロス』でやろう、って思いついた時に付けたタイトルで、まあそれは挫折した(今まさにこのカクヨムの私のダッシュボードにある)のですが、書けないものは嘘感想文にしてしまえ、とボルヘスおじさんも言っている。「黒のアマルガム」自体はどちらかというとアメコミでもダブルクロスでもなく、『武装錬金』と『戦記絶唱シンフォギア』を混ぜこぜにした感じですが。

■ガラテアの作り方
ちょうど『FGO』遊んでて、アキバイベがあった時期に、じゃあいいやと差し込んだネタ。いや、元々、伊集院さんのラジオで産湯を使った人間なので「芳賀ゆい」とか「おべんとつけてどこ行くの」とかが好きで、つまり「共同幻想としての理想の女性」というのは漠然とテーマとして持っていて、それは当然ピグマリオン伝説とはシナジーしてるわけです。本当はさらっと触れた「コーチとヒロイン」ものの方も掘りたいんですよね。『エースをねらえ!』で止めたけど、本当はそこからアイマスなりウマ娘なりに接続して、さらに白人酋長ものへと流れて、さらにガルパンへ、というような流れもあるので。そっち行くと、もうガラテアから離れちゃうんですけど。というか白人酋長ものについても、一度書かないとなあ、と思っている。

■老ウィリアムのあてなき旅路
元々のアイデアは拙い古典的西部劇が、外部状況によって変にバズる、という話をしようとしていた。物語自身が物語内容と物語言説に分かれるように、テクストに付随するハイパーテクストがあるように、作品には作品を取り巻く状況というメタ情報がある。ボルヘスおじさんリスペクトの本企画は、当然そういうのが大好きなので、そういうことを書こうとしていたが、ちょっとそっちを掘るほどの社会的見地が無かったので、話が短めになってしまった。無念。ちなみに元々は普通にガンアクション小説の予定だったのがアイルランド移民の少女との『レオン』ものになってるのは、多分『片喰と黄金』の影響。アイルランド移民がゴールドラッシュにありつこうとアメリカ大陸横断の旅に出る話で『片喰(アイルランド)と黄金(ゴールドラッシュ)』って、本当にいいタイトルよね。最初、異世界転生ファンタジー系だと思って避けてたの勿体なかった。あと「老ウィリアム」は、ビリー・ザ・キッドが実は生きていた、みたいなネタ、というイメージ。感想文にはビタ一出てこない設定だけど。

■世界柳生大戦
ネットでの「悪ふざけの作法」はインターネット殺人事件さんを見て学んだ。そういうわけで、伝奇小説界のフリー素材・柳生をネタにしたトンチキ伝奇時代劇である。基本的には、まあだから出オチなんですけど、○○柳生、ってネタが本質的にエスニックジョークである、という事に気付いた時に、こういう外部情報を追加することはできるよなあ、と思ったわけです。

■挫ける、立ち上がる、そして走り出す
前ふたつが広義には「歴史小説ネタ」だったので、そこから近過去時代劇としてのスポーツ文芸を掘ろうとして、それこそ『ウマ娘』は美少女でコーティングしたそういう話だなとなり、じゃあバズった直後に出た「次のウマ娘は何か?」の話で出てきたのが「プロレス」が「野球」ということで、プロレスは前にネタにしてるので、野球でやってみよう、とまあ考えてみたわけです。あと、没にしたネタに「野村冒険者事務所」という、野村克也さんが死後転生してパーティ追放された冒険者を「野村再生工場」する話、というネタがあって、その辺が融合した結果、こんな感じになった。あと、野球のディテールもいいけど、やっぱキャラだよね、って思ったのは『ドラフトキング』の影響もあるかも。あの漫画、全部面白いけど、やっぱ傑出してるのは郷原くんのキャラだもの。

■世界一古い仕事を始めました
起点は『今日からヒットマン』。といっても、別にあの作品自体は普通に腕利きの殺し屋であることを求められるので、そういう意味のモデルではない。というかトーキチ、二丁ほどじゃないにしても序盤を除けば普通に強いしね。ただ、殺し屋の組織の名前が「コンビニ」ってのはクールだよな、っていう。そういう「業務的にやってます」感と、あと「殺し屋」はプロっぽいけど「殺人」自体はうっかりでも起きちゃうような事だよな、とか、だからプロってのは殺し続けることができる部分で、じゃあそれをアウトソーシングする? いやむしろ殺すのをアウトソーシングして、後処理のプロが、みたいに色々考えを捻っていた。作中に出してないが、「殺し屋の天敵は医者でも警察でもない。殺人鬼だ。こっちは仕事で殺すが、あいつらは趣味で殺すからだ」みたいな価値観とか、まあモジュールになりそうなアイデアは漠然とあるのだが、形になってないので、こうしてシルエットにしてお出ししているわけです。あと、感想文の文体をめっちゃライトにした。基本、キャラを描き分けるほどの文体制御はしていないが、たまにはこのぐらいのキャラで書こう、と。

■アルゴスの宝石
魔眼大戦、というアイデアがあって。いわゆる「魔眼」という奴は、まあフィクションには本当にいっぱい登場していて、そのバリエーションも本当に多くて。なので、『笑ゥせぇるすまん』みたいな、魔眼売りが破滅を招く、みたいのを考えてたわけです。でも、その線で普通にファンタジーを追求してくと、フレーバー変えただけだな感があり、さりとて魔眼大戦の方に進んでも『空の境界』の出来損ないでは、とか、あともっと酷いのは『甲賀忍法帖』も魔眼大戦なんですよね、本質的には。まあ、なので、メタフィクションに走りました。つまり、元々メタ認知を持つがそれを忘れて没頭している読者の眼を、メタ認知情報を得て、自分の感情を投影する「魔眼」にする、という。や、魔眼って基本的に「見えないものが見える(超情報)」か「視ると同時に何かを投影する(エネルギーの投射)」かなんですよ。

■1923年9月1日、晴れ
いっそ、感想文で関東大震災についてまったく言及しない、というのも一手だったかなあと思いつつ。ネタ自体は、単純に関東大震災ってこの時代やるなら定番だよなあ、というのがあって、「大正時代を舞台にした作品で、大正十二年であることを急に言ったり、今までの舞台を離れて東京に出かけたり、秋晴れの空が描かれたら警戒せよ」みたいなジョークが好きで。そんな、あまりに象徴的なものを、しかし象徴的なまま、外側に置いておく、みたいなアイデアが漠然と。それは多分、体験した近年の震災のほうを、震災を描かずに書けないか、みたいな思い付きとか、それこそ今のコロナの状況を、何も触れずにそれを書けないか、とかの「抑制された描き方への憧憬」みたいなのが。

あと、このシリーズは100本で完結を予定していて。100本書いた後にもし思いついた場合、加筆とか差し替えとか、そういう方向性で書いたりする形になります。

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